胆のう疾患 – 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門「COKU」

予約・お問い合わせ
お問い合わせ電話番号
0798-64-0059
0798-64-0059
医療関係者の皆様へのご案内はこちら

胆のう疾患

胆石や胆囊ポリープが対象疾患です
胆のう疾患
胆のうはこのような臓器です
About Gall Bladder

胆のうのことを知っていますか?

体内の胆のうの役割について:
肝臓では、脂肪を消化・吸収するために必要な胆汁という消化液が合成され、胆管(胆汁の通り道)を通り十二指腸に流れていきます。その途中に胆のうがあります。胆のうは胆汁を貯留・濃縮して効率よく消化管へ流すためにある袋状の臓器です。胆のうには以下のような病気があり、症状があるものもあります。
こんな症状がある人は要注意:

✓ 過去にみぞおち(心窩部)に激しい痛みがあった

✓ 健診などで胆のうに石やポリープを指摘された

胆のうには次のような
病気があります
Diseaser

胆のうにおきる病気とは?

胆のう結石症 (胆石)

さまざまな原因(感染、生活環境、体質など)により、胆汁中の成分が析出して胆石が形成されます。胆のう結石症とは、それが胆のう内にできることです。疼痛発作などの症状がある場合は手術適応となります。無症候性胆石症は原則的には経過観察です。ただし、胆のう壁肥厚例では癌との鑑別の必要があり、将来的に急性胆嚢炎のリスクもあるため、相談のうえで手術適応を考慮します。

胆のうポリープ

胆のうポリープは胆のう内にできる隆起性変化の総称です。最も多いのは胆汁に含まれるコレステロールが胆のう壁に沈着して隆起するコレステロールポリープですが、他の種類のポリープや大きなものは癌を疑う必要があります。
胆道癌診療ガイドラインでは「胆のうポリープが10mm以上で、かつ画像上増大傾向を認める場合、または大きさにかかわらず広基性の場合、胆のう癌の頻度が高く胆囊摘出術が推奨される」とされています。

胆のう腺筋腫症 (アデノミオマトーシス)

胆のう壁のびまん性あるいは限局性の肥厚を特徴とする病変で、胆のうの粘膜上皮が胆のう壁の筋層にまで陥入したRokitansky-Ashoff洞(RAS)と呼ばれるものが増生したものです。無症状の場合には積極的な治療は必要ありませんが、胆のう結石や胆のう炎を伴い、腹痛などの症状を認める場合には手術適応となります。
また胆のう癌との鑑別が困難な場合に手術を行うこともあります。
負担の少ない手術です
Procedure

短期の入院で手術が可能です

手術から入院までの流れについて:

手術は全身麻酔下に行います。当院では臍部の約2cmの傷と、細径鉗子を使用した心窩部(みぞおち)の数mmの傷で行う腹腔鏡手術(Reduced port surgery)を行っています。体格や手術の既往に応じては、5mmのポートを追加することもあります。手術は胆のう管と胆のう動脈を確認した後に、これらを切離して胆のうを肝臓から剥がして臍部の傷から摘出します。摘出後に、傷を縫い閉じて手術は終了です。傷は溶ける糸で縫いますので、抜糸の必要はありません。
多く行われている手術ですが、周囲には重要な脈管などが多く存在し、専門的な知識が必要です。
当院では、基本的に一泊入院で行っています。
翌朝に採血を実施して、肝・胆道系酵素の上昇などがないことを確認してから退院していただきます。
傷の大きさと部位
腹腔鏡下胆のうの摘出術のイメージ図(全体図)
手術のイメージ図(胆のう)

患者さまへのご案内:

「胆のう疾患」に関する最新記事:

術後の吐き気PONV
2024.02.08
胆のう疾患

今回は、全身麻酔による手術後の吐き気について考えてみたいと思います。

術後に吐き気がしたり吐いてしまったりすることを、医学用語では「術後悪心・嘔吐(PONV:Post-Operative Nausea and Vomiting)」といいます。発生頻度は一般的に約30%の割合で発症し、辛い思いをされる患者さんもいらっしゃるため避けたい麻酔合併症の一つです。

1.どのような患者さんにリスクがある?

2020年に米国PONVガイドラインが発表されました。

「Fourth Consensus Guidelines for the Management of Postoperative Nausea and Vomiting」(Gan TJ, et. Anesth Analg 131: 411-448, 2020)

解析されたPONVのリスク因子として、最も関連されている項目は「女性」とされ、男性に比べて女性は約2.6倍も頻度が高いとされています。続いて、「術式」でガイドラインでは、腹腔鏡手術、婦人科手術、胆のう摘出術が取り上げられています。ほかに、「吸入麻酔薬」「PONV既往や乗り物酔い」「非喫煙者」「長時間手術」「50歳未満」となります。

ガイドラインにはPONVの発生率を評価するスコアとして、「Apfel simplified score」が使われます。女性・非喫煙者・PONV既往や乗り物酔い・術後オピオイド使用の4つのリスク因子のうち、項目が1つ当てはまるごとに約20%ずつPONVの発生率が増加するというものです。問診でわかるものですので、術前診察でお聞きします。

術後の吐き気

なお、当院では胆石や胆のうポリープなどに対して腹腔鏡胆のう摘出術を行っていますが、胆石のできやすい方の特徴として、太っている(Fatty)、40から50歳代(Forty-Fifty)、女性(Female)、たくさんお産をされた方(Fertile)とされ、英語の頭文字をとって4Fと言われています。これは、PONVのリスク因子と重なる項目が多く、女性の胆のう手術の際には、特にPONVに留意する必要があると考えられます。

2.PONVの予防のためには

PONVの予防のためには、まずは予防薬剤の使用が挙げられます。

制吐作用を期待していくつか使用される薬剤があります。

まずは、ステロイドです。主にデキサメタゾンが使用されます。効果の発現までに、時間を要するために手術開始後早期に投与されます。単回使用ではステロイドの副作用として一般的な血糖や感染に関しての問題視は必要ないとされています。

次にドロペリドールです。手術の終了時に投与します。錐体外路症状や心電図でのQT延長に注意が必要とされています。

次に、メトクロプラミド(プリンペラン)です。病棟で嘔気のある方によく使用される薬です。副作用も大きなものがなく使いやすい薬ではあります。

海外では、PONVの予防・治療薬としてゴールデンスタンダードであったセロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬(オンダンセトロンとグラニセトロン)が2021年に日本でも「術後の消化器症状(悪心・嘔吐)」に使用することが許可されました。もともと日本でも5-HT3受容体拮抗薬は抗がん剤に対する制吐薬として長らく使用されてきました。

術後の制吐薬

抗がん剤に対する制吐薬は様々なものが使われ、5-HT3受容体拮抗薬(第一世代)であるオンダンセトロンやグラニセトロンなど、5-HT3受容体拮抗薬(第二世代)のパロノセトロン、NK1受容体拮抗薬であるアプレピタント、多受容体作用抗精神病薬であるオランザピンなどがあげられます。

米国PONVガイドラインではオンダンセトロンが最も一般的に使用・研究されている5-HT3受容体拮抗薬とされています。

5-HT3受容体拮抗薬の作用機序としては、延髄にあるCTZ(chemoreceptor trigger zone)や求心性迷走神経の5-HT3受容体に作用して、嘔吐を抑制すると考えられています。なお、投与タイミングですが、「患者背景や術式等を考慮し、術前から術後の適切なタイミングで投与してください」とされております。

3.日帰り手術とPONV

日帰り手術を行う上で、PONVは大きな障害となるため当院でもPONVを予防することは重要な課題と考えています。そのため、腹腔鏡手術ではオンダンセトロンの投与を麻酔科医師と相談し積極的に使用しています。また、腹腔鏡下胆のう摘出術では、前述のようにPONVのリスク因子の高い患者さんも多く、オンダンセトロンに加えて他の制吐薬の投与なども検討を行います。

当院では、術中麻酔は麻酔科の専門の先生方にお願いしています。薬剤の選択や麻酔方法の選択など、患者さんごとに適したものを相談しながら選択していきたいと思います。

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森

腹腔鏡手術後の肩の痛み
2024.02.02
胆のう疾患

手術にまつわるトピックを定期的にあげていきたいと思います。

今回は、腹腔鏡手術後に起こることのある肩の痛みについて考えてみたいと思います。

1.お腹の手術後に肩の痛み?

腹腔鏡手術 肩の痛み

腹腔鏡下胆のう摘出術や婦人科領域の腹腔鏡手術において、術後に肩が痛いということが起きることがあります。お腹にしか傷がないのに、肩が痛むというこの現象には様々な原因が考えられています。手術中にお腹を膨らませるために使用する二酸化炭素ガスを原因とするアシドーシスによって横隔膜や横隔神経が刺激されて痛みが生じるメカニズムや、気腹による腹膜や横隔膜の進展によるものが報告されています。治療介入が必要なことは少ないとされますが、手術部位とは関係ない部位の痛みのため不安に感じられる方もいらっしゃいます。

2.腹腔鏡に使うガスについて

この腹腔鏡手術で使う医療ガスについて考えてみたいと思います。まず、腹腔鏡手術を行うためには、ガスを送り込んでお腹を膨らませることが操作スペースの確保のために必要になります。腹腔内に送気するには、次のような条件がそろった気体である必要があります。

①引火性や爆発性がないこと

②無色透明であること

③患者さんおよび手術スタッフへの害がないこと

④吸収が早く体内から容易に排出されること

⑤安価であること

腹腔鏡手術 二酸化炭素

これらのことから、酸素はもちろん引火性がありますし、吸収がよくない気体だと空気塞栓(血管内の空気が肺に詰まること)のリスクがあります。腹腔鏡の手術では多くの気体を使用するので、コスト面も重要です。そのようなことから、これらの条件を満たす気体として、現在は腹腔鏡手術時に使用するガスは二酸化炭素が一般的になっています。消化器内視鏡で観察時に腸内を膨らます際にも二酸化炭素ガスを使用します。

3.腹腔鏡手術時の気腹圧について

腹腔鏡手術時に用いる気体は二酸化炭素を用いますが、実際に使用の際には気腹装置により腹腔内に送り込む圧の設定が必要となります。一般的には<12mmHgが低圧気腹、12-15mmHgで通常圧気腹、15mmHg以上で高圧気腹と考えられています。気腹圧が高いほどお腹の膨らみは大きくなり、操作スペースが広くなるのですが、その一方で皮下気腫(皮膚組織の間にガスが入り込むこと)や空気塞栓、圧による門脈血流の低下のリスクともされています。また、横隔膜の過伸展は前述のとおり肩の痛みの原因にもなっているかもしれません。

2020年にSurgical Endoscopy誌(Surg Endosc 34(7):2878-2890, 2020)より報告された「The impact of intra-abdominal pressure on perioperative outcomes in laparoscopic cholecystectomy: a systematic review and network meta-analysis of randomized controlled trials」では、22本の研究(2909名)においてシステマティックレビューが行われています。結果は、バイアスリスクがあるためさらに研究を要するとの注釈がありますが、低圧気腹群で標準圧気腹群より肩痛を含む術後疼痛や入院期間が減少したという報告があります。

また2022年にSurgical Endoscopy誌(Surg Endosc 36(10):7092-7113, 2022)で発表された「Low-pressure versus standard-pressure pneumoperitoneum in laparoscopic cholecystectomy: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials」では、待機的腹腔鏡下胆のう摘出術において異なる気腹圧で比較した44のランダム化試験のシステマティックレビューとメタアナリシスが行われ、入院期間や合併症には差がなかったが、術後の疼痛と鎮痛薬の消費量では低圧気腹において有意に低かったと報告されています。肩痛に関しては、このうち12の研究で解析され低圧気腹群で肩痛の発生率が有意に低かったとされています(1032人、RR 0.48, 95%CI 0.39 to 0.60)。

私の感覚ですが、腹腔鏡手術が始まった当初は各施設において12mmHg~15mmHgで気腹をしていた印象がありますが、最近は8-10mmHg程度で行っているところが多いような気がします。肝切除や視野の取りにくい患者さんの時にはスペースの確保や止血のために気腹圧を挙げることもあります。しかし、鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のう摘出術では操作スペースの確保が比較的容易なため、われわれの施設でもこれらの腹腔鏡手術は8-10mmHgで行っています。

4.腹腔鏡手術後の遺残ガスについて

低圧気腹が可能であればそちらを選択した方がよいという方針が確認できました。ほかに、肩痛の改善のために研究されている課題としては、手術後の遺残ガスについて複数の論文が報告されています。経験的にも腹腔鏡手術の数日後にCT検査が必要な方の所見をみると、多くの方で腹腔内にガスが遺残しています。横隔膜の下にガスのたまりが、横隔膜を伸展させて刺激になっている原因かもしれません。

この遺残ガスを減らす方法として、ドレーンといって腹腔内に管を入れたしする方法もあります。しかし、侵襲の少ない手術ではドレーンを留置をすることがありませんのでこの方法は現実的ではありません。ほかの方法を調べてみると、手術終了前の人工呼吸中に肺をしっかりと膨らませて横隔膜を押し下げてガスを追い出すという方法の論文が見られました。

2021年のWorld Journal of Surgery誌(World J Surg 45(12):3575-3583, 2021)「Pulmonary Recruitment Maneuver Reduces Shoulder Pain and Nausea After Laparoscopic Cholecystectomy: A Randomized Controlled Trial」では、147人の腹腔鏡下胆のう摘出術患者さんをPRM群(pulmonary recruitment maneuver)と通常群の比較が行われました。PRM群は手術終了時に、1分間高めの圧で換気を行い腹腔内の二酸化炭素を体外に追い出す方法です。PRM群で術後の肩痛と嘔気が軽減したという結果でした。2023年のSurgical Endoscopy誌(Surg Endosc 37(11):8473-8482, 2023)の「The influence of the pulmonary recruitment maneuver on post-laparoscopic shoulder pain in patients having a laparoscopic cholecystectomy: a randomized controlled trial」でも、ランダム化比較試験においてPRM群が従来群より肩痛を減らすという結果を報告しています。

5.当院での取り組み

術後の疼痛や嘔気に関して、多くの報告がされています。実際に論文を読んで吟味し、臨床に役立ちそうなことは麻酔科の先生たちともしっかり検討して、少しでも手術を楽に受けていただけるように知識もアップデートしていきます。

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森

「外科部門」
へ戻る
鼠径ヘルニアについて
脱腸とも呼ばれる
手術適応の疾患です
鼠径ヘルニアについて
虫垂炎について
薬による治療を
過去に受けた方へ
虫垂炎について
腹壁ヘルニアについて
おへそ付近の
膨らみに要注意
腹壁ヘルニアについて

お探しの情報は見つかりましたか