ホスピタルズ・ファイルに、主任部長の大塚と消化器外科部長の三賀森、消化器内科部長の嶋吉が取材していただいた記事が掲載されていますのでお知らせさせていただきます。
当院の低侵襲治療部門の紹介や、鼠径ヘルニア(脱腸)のトピックス、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)のトピックスも患者様にわかりやすくインタビューしていただきお答えしています。
よろしければぜひご一読ください。
東改札口を出て徒歩6-7分程度です。ほとんどの経路が屋根付きのペデストリアンデッキ(高架の歩道、途中動く歩道もあり)になっています。
この改札を出て、右手方向に進むとガーデンズゲートがあります。これを通り抜けて阪急西宮ガーデンズ方面へ進みます。途中に三菱UFJ銀行のATMコーナーが左手にあります。
ガーデンズゲート入口を通り抜けます。
外の屋根付き回廊の動く歩道を越えて歩いていきます。(撮影時は早朝のためロープが張られています)
「NISHINOMIYA GARDENS PLUS」の入口を左へ曲がると、橋の向こう側に、阪急西宮ガーデンズの入り口が見えます。
緑色の文字で「西宮敬愛会病院」の看板がみえます。
写真は駅から遠い側(南側)の入り口です。こちらから入り、直進すると正面玄関があります。
・お車でお越しの方
西宮カーデンズの南西角の高松町南交差点を南に進むとすぐに左手に西宮敬愛会病院の建物が見えてきます。駐車スペースが複数ございますので、空いているところに車を止めてください。
※当日に日帰りで手術を受けられる方、鎮静の内視鏡検査を受けられる方は、どなたかに送迎を依頼なさるか、公共交通機関のご利用をお願いいたします。
内視鏡検査では、自ら運転の乗用車・自転車などで来院されますと、当日は鎮静剤を使用することができません。
来院方法や場所が分かりにくい方は、お電話(0798-64-0059)でお問い合わせください。
今回は、当院で受診日当日の胃カメラをお受け頂く流れについて、写真付きで説明します。
具体的なイメージをもって安心していただけるように詳細な説明にしています。
COKUでは、電話予約に加え、Webでの24時間予約に対応しています。
お持ちのスマートフォンやパソコンから、予約ページに進むことができます。
夕食は夜21時までに済ませてください。その他、運動や入浴などに関する活動制限はありません。
当院までの詳細な経路はブログの別のページにアップしていますので、上記リンクよりお進み下さい。
健康保険証(マイナンバーカード)と、高齢者受給書(お持ちの方)、紹介状(お持ちの方)をご提出ください。
初診時の受付票と、問診票をお渡しします。待合室で記入し、書きおわりましたら受付へ提出して下さい。
パスワードは待合の机の上の各所に記載しています。
症状について、問診票を確認しながらお話を伺い、検査が可能かなどを判断します。必要に応じて胃カメラ以外に腹部エコーや採血、CTなどをお勧めする場合があります。
何かご不安な点などございましたら、診察時にぜひお聞かせください。
検査の流れなどをお話し、準備を進めます。
着替えは必須ではありませんが、内視鏡中に使用する薬剤で服が汚れないように、着替えをお勧めしています。
胃の中の粘液と泡をとるためのお薬を服用していただきます。
バナナの匂いがする白っぽい水薬で小さなコップ一杯です。
鼻から内視鏡を入れる経鼻カメラの方は、鼻の粘膜を広げるための点鼻薬を鼻に投与します。
点滴は金属製の翼状針ではなく、プラスチックでできたソフトな留置針を使うので、留置後の違和感やチクチクが抑えられます。過去に採血や点滴で気分不良があった方は、ベッドで寝た状態で点滴をおこないます。
当院では写真のようなサイズの麻酔薬の入った小さな氷をのどに含んでいただきます。
軽く上を向いてなるべくのどの奥に置いておくと、舌がしびれにくく苦みなどの不快感が少ないです。
患者様の誤認防止のため、お名前を確認いたします。
濃い目の麻酔薬となっており、胃カメラが喉を通過する際のオエっとなる感覚を改善させるために追加する場合があります。
酸素モニターは指に装着するタイプです。
鼻の麻酔については、ゼリーの麻酔やスプレーの麻酔で鼻の粘膜をしびれさせた後、麻酔ゼリーを塗ったスティックで鼻を鳴らしてゆきます。当院では富士フイルム社製のスライドタイプの鼻麻酔スティックを使用しておりますので、従来のスティックに比べて鼻の疼痛を軽減してスムーズに鼻の麻酔を行うことができます。
検査中は常にモニターが装着され、経過を確認・記録し、異常があればすぐに対応できるような体制を整えています。
リカバリー室でも血圧と血中酸素量のモニターの確認を続けて行います。30分から1時間程度の休憩後、目が覚めた段階で着替えをします。
検査画像をみながら、治療が必要な病変がないかなど詳細に説明させていただきます。
以上、胃カメラの基本的な流れをご説明いたしました。
診察時にご不安な点などあれば、お気軽にご質問ください。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉
鼠径ヘルニアの手術を実際に受けられる患者様の基本的な流れをご紹介します。具体的なイメージを持っていただき、手術のながれがわからないという不安を少しでも払拭していただければと思い作成いたしました。
初診のご予約はWEB予約またはお電話(0798-64-0059)で承ります。予約が取れましたら、当日は、健康保険証(マイナンバーカード)、お薬手帳を持参してください。
太ももの付け根に膨らみなどの症状がある方、鼠径ヘルニアかどうかわからないが診察のみを希望の方もぜひご相談してください。
受付でお名前や住所などを確認し、問診票を記載していただきます。その後に診察室にお呼びします。診察室では、医師より病歴の確認などを行い、診察を行います。女性の方の診察には必ず女性スタッフが立ち会います。
当院では、臨床所見での診察に加えて、腹臥位で腹圧をかけた状態でCT検査を行うことで補助的に鼠径ヘルニアの診断を行います。鼠径ヘルニアの診断がついた場合には、手術の説明を行います。
臨床所見・CT検査などから鼠径ヘルニアの状態や患者様の既往歴や手術歴などの背景を踏まえて、手術の方法をご提案いたします。手術の具体的な方法や合併症についても説明の文章を用いて説明いたします。
術前検査では、採血検査・呼吸機能検査・心電図検査・胸部レントゲン撮影を行います。過去に大きなご病気をお持ちの方は、病院間で診療情報のやり取りを行いながら安全に手術が行えるかどうかの判断を行います。術前検査は外科医・麻酔科医・看護師で術前カンファレンスを行い共有しています。アレルギー薬剤の確認、術後の嘔気対策などに役立てています。
術前検査で問題がない方は手術日を決めます。日帰りか一泊入院かもご希望に沿って相談いたします。
術前のオリエンテーションでは看護師よりパンフレットを用いて、手術当日の持ち物や注意事項の確認を行います。また口の空き具合や歯の状態などを確認します。手術当日のながれでイメージしにくいところがあればお気軽にご相談ください。
※大きな既往歴などの問題がない方は次回は手術当日になります。別日の検査や術前検査で確認することがある場合は別日に外来にお越しいただく場合があります。
術前の説明でお伝えしている絶飲食のお時間や内服薬をご確認ください。説明時にお伝えしている来院時間にお越しください。来院後に必要な書類等の確認や、体調確認、手術部位確認を医師・看護師より行います。その後にお部屋にうつり、お着替えを行います。
※付き添いの方は、患者様のお帰りの時間まで受付でお待ちいただけます。西宮ガーデンズなど近くに外出していただいてもかまいません。一泊入院の場合は、手術終了後にリカバリー室でご面会いただきます。
手術の準備ができましたら看護師がお部屋にお迎えにまいります。手術室に入りましたら、手術台に腰を掛けていただき、お名前、手術部位、アレルギーやグラグラする歯がないかなど最終確認を医師・看護師とともに行います。その後、手術台に仰向けになり心電図などのモニターをつけます。
麻酔科医師より腕から点滴をとります。その後、酸素マスクをお顔に近づけて、点滴から麻酔薬の投与を行います。麻酔が十分に効いたのちに人工呼吸のチューブをいれて、手術中は人工呼吸管理を行います。麻酔の導入の後に、手術体位を整えて手術部位を消毒します。※短時間の手術のため、尿道カテーテルの留置は行いません。
消毒後に清潔な覆布で手術野を作ります。術前の確認を外科医・麻酔科医・看護師で行い手術を行います。手術はおおよそ1時間程度です。手術終了時には、使用したガーゼや針などのカウントを行ってから閉創を行います。また局所麻酔や制吐薬の投与など必要な処置を行います。
手術終了後に麻酔を覚まして人工呼吸の管を抜きます。受け答えができることを確認して、ストレッチャーに移りリカバリー室に移動します。
リカバリー室では約30分程度、心拍や血圧、酸素濃度などをモニターしながら観察を行います。十分に覚醒して血圧などが落ち着いていればリクライニングチェアに看護師付き添いで歩いて移動します。その後、トイレ歩行や飲水・軽食の摂取を行い状態が落ち着いていることを確認します。術後2時間程度で退院基準を満たせば点滴を抜針し、お部屋にうつりお着替えをします。
※一泊入院の方は、この後病棟のお部屋にうつります。
診察室で体調や傷口の最終確認を行います。帰ってからの注意事項や内服薬の説明を行います。次回診察の予約をお取りして清算を行い退院となります。緊急時の連絡先を退院時にお渡しいたします。ご不安な点があればご連絡ください。
医師より体調確認のお電話をいたします。体調や傷口で気になることがありましたらお伝えください。
基本的な日常生活の制限はありませんが、ジムでの筋トレなど積極的な運動は約2週間程度お控えください。
手術後約1週間で初回の外来にきていただきます。傷口の確認や痛みの程度の確認など行います。必要があればお薬の処方を行います。
手術後約1か月目の外来にきていただきます。とくに問題がなければその後の外来は電話での確認などにするかなどご相談させていただきます。
※基本的な手術を受けられる方のながれを紹介しました。お仕事など日程の都合などにもご相談させていただきますので、受診の際にお気軽にお話ください。
手術をお考えの際に、執刀医がどのような専門医資格を持っているかを確認されることもあるかと思います。
今回は、鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のう手術に関わる、外科・消化器外科領域における専門医制度について解説したいと思います。
専門医の資格というのは多くあるのですが、消化器外科領域では細分化された領域が多いため、3階建ての専門医構造になっています。
多くの医師は、卒後2年間の初期研修医を終了後に自分の専門科を決定していきます。消化器外科や心臓血管外科、呼吸器外科などの外科系にすすむことを決めた人は、まずは「外科専門医」を目指します。これが1階部分にあたります。一昔前までは、自身で病院を決めて研修して外科専門医試験を受けていましたが、2018年より日本専門医機構による新専門医制度が開始され、専門研修プログラムを受けることで外科専門医の取得を目指すようになりました。外科の基本的な知識や手技を学んで試験に合格すれば、おおよそ卒後7年目で「外科専門医」が取得できます。
また「外科指導医」というものもあり、こちらは認定施設での十分な期間と複数の論文発表が必要となり、最短でも卒後17-8年は取得にかかります。
消化器外科医が次に目指す専門医資格は、「消化器外科専門医」です。ここが2階部分になります。サブスペシャリティとよばれて、外科専門医より一段階上の専門性の資格となります。消化器外科専門医試験の受験資格には、指定修練施設での規定年数の修練と、規定症例数の診療経験がまずは必要となります。また、消化器外科に関する論文発表が筆頭1編、共著2編以上(私たちの時代は筆頭が3編以上でした)と学会発表3件と学術活動の実績も必要となります。そのほか、学会参加や教育集会の参加などを満たすと、受験が可能となります。試験は、消化器外科領域全般にわたり、総論・上部消化管・下部消化管・肝胆膵脾の4領域に分けて出題され、100題の問題を回答し、70%以上で合格とされています。
消化器外科医として、まずはこの「消化器外科専門医」の取得を目指します。地域や大学によりキャリアの進み方に若干の違いがあると思いますが、消化器外科専門医取得後に病院のスタッフとして後輩の指導をはじめることが一般的でしょうか。つまり、消化器外科専門医の取得はレジデント(専修医)終了のようなイメージでもあります。そこからは上の3階部分の資格を目指します。
なお、消化器外科学会から「消化器外科指導医」という資格もあり、専門医取得後に十分な症例数や発表などの業績が認められれば取得できます。
消化器外科のキャリアで3階部分にあたる高次専門医として、「内視鏡外科技術認定医」「肝胆膵外科高度技能専門医」「食道外科専門医」などがあります。消化器外科専門医は経験症例や学会参加などの実績と試験が取得の要件ですが、3階部分の内視鏡外科技術認定医や肝胆膵外科高度技能専門医は、術者としての多くの経験症例に加え、実際の手術ビデオの審査が必要となります。両資格とも、執刀開始から終了までのフルビデオを編集なしで評価され、合格が決まります。つまり、これらの試験の特徴は、実際に手術の技術が評価されるということです。内視鏡技術認定医の合格率は2023年で各領域全体の平均は31%、肝胆膵高度技能専門は受験資格のハードルの高さもあり2011年~2022年で約500名程度の狭き門となっています。
当院で手術を行うわれわれも多くの資格をとるべく研鑽を積んできました。資格というと知識だけでとれるイメージがあるかもしれませんが、消化器外科領域において3階部分の高次専門医までとるためには、技術も必要となります。わたしも大塚Drも「外科専門医」「外科学会指導医」「消化器外科専門」「消化器外科指導医」を取得しており、大塚Drは「内視鏡外科技術認定医」わたしは「肝胆膵外科高度技能専門医」を取得しています。ほかにも、各分野で多くの資格を取得するべく努力を行ってきましたのでプロフィールをぜひご確認ください。
専門医資格の意義として、資格をとるためにさまざま工夫や反省を行ってきた経験が細かなところまでこだわった手術を行うことにつながるのではないかと思います。みなさんに安心して鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のうの手術をうけていただけるようにこれらの経験を活かしたいと思います。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森
日帰り手術とは、手術を受けた数時間後にはご自分で歩いて帰宅できる治療です。欧米では一般的な手術方法で、日本でもその安全性と利便性から積極的な導入が始まっています。その背景には、医療技術や機械の進歩により、患者様への負担の少ない術式の確立、安全性の高い麻酔方法などにより日帰りで受けられる手術が増えていることが挙げられます。
厳密には、日帰り手術は2週類あります。ひとつは入院施設のないクリニックでの日帰り手術で、保険診療上は外来手術になります。もうひとつは病院や有床診療所での日帰り手術で、保険診療上は入院治療になります。(※当院は病院施設のためこちらに該当します。)
短期滞在手術とは、1泊などの短期入院で治療するものをいいます。
日帰り手術を行うためには次のような条件を満たす必要があります。
1.手術時間が短く侵襲も比較的小さいこと
2.術後改めて何らかの治療を行う必要がないこと(ドレーン抜去など)
3.術後早期に経口摂取、トイレ、歩行などが可能なこと。
4.術後の創部の痛みは、体動時を中心に数日はあるものの、一般的な通常の内服の鎮痛薬で対処
でき、入院治療でも自宅療養でも対応に差がないこと
当院で行っている鼠径ヘルニア(脱腸)手術や内視鏡的治療(大腸ポリープや早期がん)は上記の条件を満たしています。
日帰り手術・短期滞在手術の一番のメリットは入院時間が大幅に短縮できることです。術前と同じ環境下で日常生活が継続できるため、早期の社会復帰が可能になります。仕事世代の方では、仕事や家庭の調整などの負担が減りますし、ご高齢の方では周術期の環境の変化が少なくなることで、術後のせん妄のリスク軽減になります。
一般的に総合病院で鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のう摘出術、内視鏡的ポリープ切除術などの治療をうけると少なくとも2泊3日~3泊4日の入院が必要となります。(DPCデータに基づく病院情報によると鼠径ヘルニア手術の平均在院日数は4.59日となっています)。多くの総合病院では、前日入院が必要です。病棟や手術室オリエンテーション、手術当日の絶食の管理などを行うためです。当院では、外来で十分にオリエンテーションを行い、手術当日の流れを一緒に確認するため当日入院を実現させていています。また当院のスタッフは外来も手術室も内視鏡室も担当しますので、一貫して患者様と関わっていくことができます。
現在多くは一般的な総合病院で治療が行われます。前述のように、長めの入院期間が必要であったり、外来の待ち時間が長かったりすることがあります。また総合病院ではがんの手術や緊急手術も多く行われるため、日帰り手術に向いている鼠径ヘルニアなどの良性疾患の手術枠が多く確保できず、手術待機時間も長くなる傾向があります。
一方で日帰り専門のクリニックは術後に入院を要する場合に対応が難しいため、手術を行う患者さんの条件を厳しくせざるを得なくなります。
当院では、入院も可能な日帰り手術ユニットを併設しているため日帰り手術・短期滞在手術において理想の形となっております。
病歴や術前検査を確認して一部の方には、入院での治療をおすすめすることがありますが、大きな問題のない方は患者さんのご希望に沿って日帰りと入院を選択いただけます。
手術後は手術室のすぐ横のリカバリー室で経過をみます。麻酔後の回復をAldrete score system(活動性、呼吸、循環、意識、酸素飽和度)を基本に観察します。問題がなければその後約2時間で、歩行、トイレ、飲水、軽食の摂取などを行います。退院基準(バイタルサイン、自立歩行、悪心嘔吐や疼痛の程度、創部の観察など)をみたせば、診察後に退院となります。退院時には必要な処方を行い、薬や退院後の生活について説明します。翌日に医師が電話をし、体調や傷の状態の確認を行います。
日帰り手術が比較的普及してきたことには、負担の少ない術式の確立、安全性の高い麻酔方法が大きく関わっています。当院では麻酔科医師とも連携し、術後の鎮痛対策、悪心嘔吐対策の知識をアップデートしながら手術を行っています。また、適切な術式を選択することで切開創の縮小や手術時間の短縮が行えるように日々努めています。スタッフも日本短期滞在外科手術研究会での勉強などケアの面でもブラッシュアップを行っています。
<当院で日帰り手術・短期滞在手術を受けられた方の例>
事例①:あるご高齢の患者様が日帰り手術を希望されました。過去に長期の入院が必要となり、体力が落ちたことにとても不安を抱いていたそうです。術前検査や帰宅後の環境に問題がないことを確認して日帰り手術を行いました。手術2時間後にしっかりとした足取りで帰宅され、術後数日目の外来では経過も順調でとても満足されていました。
事例②:またある若い患者様は、術後に家に帰ると家事などをしなくてはいけないためゆっくりしたいと一泊されました。術後は問題なくお部屋で休まれており、「久しぶりにゆっくりできました」とお話しされていました。
事例③:お仕事のお忙しい患者様は、土曜日しか来院できないため土曜日の術前検査、日帰り手術、術後外来とすべて土曜日で行うことができました。多忙な仕事の中で通院回数が少なくすんだことをよろこばれていました。
さまざまな背景をお持ちの患者様がいらっしゃると思います。当院では幅広い選択肢を提示できるように丁寧に説明をさせていただきたいと思います。
当院では様々な情報を定期的にお伝えしていきます。
今回は、鼠径ヘルニア手術の種類など術式について解説したいと思います。
鼠径ヘルニア(脱腸)の手術は大きく分けて腹腔鏡手術(laparoscopic surgery)と鼠径部切開法(open inguinal hernia repair)の2つがあり、どちらがよりよいかという議論が多くなされています。本邦の診療ガイドライン(鼠径部ヘルニア診療ガイドライン2015)では、「手技に十分習熟した外科医が実施する場合には、鼠径ヘルニアに対して腹腔鏡下ヘルニア修復術は推奨できる」とされています。両者の再発率は同等でありますが、腹腔鏡手術は手術時間が長いものの、術後疼痛、神経損傷、慢性疼痛は軽度で回復が早いとされています。
また、Hernia誌(Hernia 23(3): 461-472, 2019)の論文報告では、片側の鼠径ヘルニア手術において腹腔鏡下手術(TAPP:タップ、TEP:テップ)と鼠径部切開法(Lichtenstein法)の再発に関して複数の研究結果の統合と分析が行われています。12のランダム化比較試験を対象として、腹腔鏡下手術群(2040名)と鼠径部切開法群(1926名)の比較が行われました。結果、再発率には有意差がありませんでしたが、副次解析において、腹腔鏡下手術群は急性及び慢性疼痛の割合が少なかったとされています。
では、腹腔鏡手術においてTEP法とTAPP法の結果の違いはあるのでしょうか?この両者の術式の比較に関しても、多くの検討がされています。
TAPPはTrans-Abdominal Pre-Peritoneal repair(経腹的腹膜外修復法)といいます。おなかの中から鼠径ヘルニアの穴を確認し、その周りの腹膜を切開・剥離し、鼠径ヘルニアの穴をメッシュで閉鎖し、腹膜を閉鎖する方法です。
一方、TEPはTotally Extra-Peritoneal repair(完全腹膜外修復法)といいます。おなかの中に入らずに、おなかの壁の中で、筋膜と腹膜の間を剥がして鼠径ヘルニアの穴まで到達し、メッシュで穴を閉鎖する方法です。
TEP法とTAPP法の比較については多くの論文が報告されていますが、2021年のHernia誌(Hernia 25(5): 1147-1157, 2021)では15の研究結果を集めて、TAPP(702名)、TEP(657名)を評価しています。再発率や慢性疼痛に関しては両群ともに同等であり、術後早期の疼痛、手術時間、創部の合併症、仕事や日常への復帰、費用についても有意差がなかったとされています。結語に、「これ以上比較をしても両術式に差は出ないのではないか」とも書かれています。
欧米ではTEP法が主流となっていますが、本邦では腹腔鏡手術の約8割がTAPP法で行われています。その理由として、本邦では鼠径ヘルニアの腹腔鏡手術がTAPP法で開始されたことや、鼠径ヘルニア手術を主に担当する消化器外科医が腹腔内からのアプローチに慣れていることなどが考えられます。TEP法のメリットは腹腔内に入らないため、腹腔内臓器合併症のリスクが低いことや腹膜縫合が不要なことが考えられますが、腹壁の中をアプローチしていくことから解剖学的な把握や視野の取りにくさによる手技の難しさが課題とされています。
ここまでをまとめると、「TEP法、TAPP法と鼠径部切開法のいずれも再発率に差はない。腹腔鏡手術は疼痛が軽度であるが、手術時間は鼠径部切開法が短い」となります。
TEP法とTAPP法両方の術式を十分に経験してきた私たちの意見では、ベストな術式は患者さんの体格や鼠径ヘルニアの状態によって異なります。
両側の鼠径ヘルニアでは、片側と同じ傷で手術ができるため腹腔鏡手術が適していると考えます。腹腔鏡手術のなかでも内鼠径ヘルニアは、頭側からの操作でヘルニア嚢を引き抜きやすいためTEP法がとても適しています。しかし大きな外鼠径ヘルニアで年季が入っていて精索周囲の瘢痕化が強い場合は、TEP法よりTAPP法の方が良好な視野がえられ、精管や精索の分離操作が安定して行えます。一方で、前立腺手術を受けた方は、腹腔鏡手術で操作する部位にすでに操作が加わってしまっているため、鼠径部切開法が適しています。合併症などで全身麻酔が困難な方は、局所麻酔が可能な鼠径部切開法が選択されます。
当院では、腹腔鏡手術を主として行っていますが鼠径部切開法も患者さんの病態に応じてご提案させていただいております。われわれはTEP法もTAPP法も鼠径部切開法も経験を積んできており、以下のフローチャートのように適応を考えております。またTEP法は一つの傷で行う単孔式TEP法(SILS-TEP)を行っております。術式に関しては、患者さんの状態やご希望もふまえて検討いたしますのでぜひご相談ください。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森
内視鏡検査(胃カメラや大腸カメラ)において、現在は鎮静剤を使用するのが一般的な時代になってきました。鎮静剤は、簡単に表現すると意識をウトウトさせる薬剤のことです。
胃カメラの時は喉に麻酔薬を含んでしびれさせることで不快感を軽減します(咽頭麻酔と呼びます)が、それでも胃カメラが当たる刺激でオエっとなる反射が起こることがあります。大腸カメラにおいても、どんなに丁寧に検査手技を行っても、腸の走行の違いや過去の病気の影響(癒着)で、お腹の張りや痛みが出てしまう場合があります。
それらの症状をコントロールするために鎮静剤が用いられます。
鎮静剤を用いることの一番のメリットは、何より検査を楽に受けることができる点です。
当院ではなるべく患者様の希望に沿って鎮静剤を使用します。また、必要があれば鎮痛剤も併用します。使用する薬剤は、注射薬です。
また、鎮痛薬のメリットとして、患者様が楽に検査を受けられることに加えて、内視鏡医が手技に集中できるという利点もあります。観察や処置は、無駄なくスムーズにするのはよいことですが、急ぐとよくありません。鎮静剤の使用は、患者様の体動の減少などにより質の良い検査・処置につながります。
一方で、鎮静剤を用いることで注意すべきこともあります。一つは、検査終了後にしばらく休憩が必要となる点です。個人差はありますが、おおむね30分間程度、長い方は1時間程度眠気が残るケースがあります。そのため、当日は自転車を含めた車両の運転はできません。また、検査後は仕事に影響する可能性があり、個人差はありますが、少なくとも重大な決定を伴うような仕事前の検査は控えたほうがよいでしょう。歩行に杖などを使用されているご高齢の方は、使用後の転倒に注意を払う必要があります。
もう一つは、過鎮静による血圧や酸素の低下の可能性です。標準的な量を注射しても、反応には個人差があります。また、ご高齢の方は薬の効き方が強いケースがありますので注意が必要です。また、人によっては「脱抑制」といって、意識状態が低下することで逆に興奮して内視鏡を引っこ抜いたり攻撃的になったりする方がいます。その場合は、鎮静剤の種類を変える、あるいは投与量を調整して鎮痛剤を併用するなどし対応しています。
消化器内視鏡学会のホームページ上にも、鎮静剤を使用するメリット・デメリットについて公式な見解が示されています。患者様向けですのでよろしければご参照下さい。
「全身麻酔」は、わかりやすく表現すると、頭部やお腹を切って手術をするときに用いるような、高度な麻酔です。当院の外科の手術も全身麻酔で行われています。
一方で内視鏡検査で行う「鎮静」では、息が止まらない範囲の量の薬を使用することになります。
全身麻酔と内視鏡での鎮静剤は、患者様からすると違いがわかりにくかもしれませんね。実際、「鎮静剤を使用して胃カメラを受けたい」という意図で、「胃カメラを全身麻酔でやってもらえますか」と、聞かれることがあります。
全身麻酔にせよ通常の内視鏡時の鎮静にせよ意識がなくなれば、感じ方は一緒なのですが、全身麻酔で薬の量が増えればその分全身の状態をしっかり評価する必要があります。安全に鎮静を行うために、当院ではしっかりとモニタリング(呼吸状態や血圧の評価)を行いながら、適切な量の鎮静剤の使用を行います。
通常の胃カメラや大腸カメラでは数分から十数分と短時間なため、鎮静状態になっている間に終了します。しかし、当院で行う大きなポリープや早期がんの内視鏡治療の際には、処置に時間がかかることもあります。処置用のカメラは観察用のカメラより口径が少し太くなるため、咽頭反射の強い方などでは、長時間の処置がとてもつらく感じることがあります。内視鏡処置(胃・食道の内視鏡的粘膜下層剥離術など)の際には、当院では通常の鎮静で行うことも全身麻酔で行うことも可能です。全身麻酔を行う際には、手術室で麻酔科専門医が担当して行います。
実際には、内視鏡処置は鎮静剤のみでも処置は可能で、多くの施設で鎮静剤のみで行われていることが多いです。短時間であれば鎮静剤のメリット・デメリットを鑑みて、通常の鎮静剤のみで行うことを基本的にはお勧めしたいと思いますが、長時間かかるケースや、処置は短時間で終わりそうでも通常の鎮静剤ではいつもすぐに意識がもどってしまう方など、全身麻酔のほうがよいケースもあります。大腸のポリープ切除や内視鏡的粘膜下層剥離術では、体位を変える必要があることと、口から内視鏡が入っているよりは刺激が少ない点から、メリット・デメリットを考えると鎮静の方がおすすめされます。ぜひ受診時にご相談ください。
ず一致するとは限らないため、使い始める際は十分に慎重を期す必要があると考えています)
当院では患者様により楽に検査を受けて頂くため、なるべく患者様の希望に沿って鎮静剤の使用を行います。一方で、お仕事の都合などで鎮静剤を使用したくない方もいらっしゃると思いますので、そのような場合にも柔軟に対応いたします。しっかりと相談させていただきますので、ご不安やご要望があれば診察時におっしゃってください。
当院のホームページ内に「当院での鎮静剤の使用について」として記載しております。検査当日の注意事項なども載せておりますので、ぜひご一読ください。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉
西宮敬愛会病院 低新種治療部門 主任部長の大塚正久医師が、西宮のラジオ番組である「さくらFM」の取材をうけました。
「ドクター教えて」というコーナーで4月の木曜日に4週にわたり放送されます。わかりやすく説明しておりますので、興味のある方はぜひお聞きください。(公開された回のものは音声をつけています)
・4月4日 「鼠径ヘルニア(脱腸) ~こんな症状がある場合には鼠径ヘルニアかも~」
・4月11日 「消化器外科の腹腔鏡手術の進歩と歴史」
・4月18日 「鼠径ヘルニア(脱腸)に対する手術について」
・4月25日 「日本で増えつつある大腸がんについて」
2024年4月1日より、COKUに内視鏡部門がオープンしました。
内視鏡にまつわるトピックも定期的にあげていきたいと思います。
今回は、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の前に服用する下剤についてお話します。
大腸カメラでは、肛門から細長いカメラを挿入して大腸の奥まで観察するのですが、事前に下剤を使用して大腸の中をきれいにしないと便できれいに腸がみえません。
大腸からの出血で緊急を要する場合など、下剤を服用せずに行う例もあり得ますが、十分な観察のためにはしっかりとした前処置(下剤による腸の洗浄)が必要になります。
前処置のための下剤の服用方法として、一般的には前日の夜と当日の朝にわけて服用を行います。
当院ではセンノシド(錠剤)、ピコスルファートナトリウム(液体)、マグコロールP(液体)の3種類を主に使用します。
それぞれに特徴があり、使い分けています。
1.センノシド:錠剤であるため飲みやすく、便秘の症状が強くないほとんどの方で効果は良好です。
2.ピコスルファートナトリウム:便秘症状の強い方、センノシドでは効果の乏しい方はピコスルファートを1本使用します。
3.マグコロールP:センノシドやピコスルファートは「刺激性下剤」に分類され、大腸粘膜を刺激することで腸蠕動を亢進させます。どちらも飲みやすい薬ではありますが、腸を刺激して動かすため、お腹が痛くなることがあります。マグコロールPは「浸透性下剤」といって、便からの水分吸収をしにくくする(便を水っぽいままにする)ことで効果を発揮します。
もともと便秘が強い方は、数日前から「酸化マグネシウム」や「リナクロチド」などで便通を整えてから、上記の下剤を服用します。
当院では、サルプレップ、ニフレック、ビジクリアを使用します。
1.サルプレップ
サルプレップは、1本480ml入りのペットボトルに入った液体の下剤です。薄めずに使用できます。120mlを10分程度で服用し、そのあとに240mlの水あるいはお茶を10-20分程度で服用します。これを1セットとし、便がきれいになるまで繰り返します。1本で検査可能な方もいらっしゃいますが、1本と1-2セット程度を要することが多い印象です。味はやや濃い塩味です。下剤自体の量が少なくて済むのが特長です。
2.ニフレック
ニフレックはバッグに入った粉末で、2リットルの水で溶解して200mlを15分ごとに服用してゆきます。昔からある下剤であり、重篤な腎障害がある方にも使用できる点が最大の特長です。レモン・スポーツドリンク風味です。間に水をはさまず(飲んでもかまいませんが)使用できるので、飲み方が複雑でないことも利点です。
3.ビジクリア
5錠ずつを15分おきに200mlの水で服用してゆきます。合計10セット、50錠服用して終了です。特長は何よりも下剤を味わわなくてよい点です。重篤な腎障害や、高血圧をお持ちの高齢者の方は禁忌となります。
まとめると次の表のようになります。
以前に使用して味や飲み方があわなかった場合には、違う下剤を試してみるなどもできます。経験のある方は、そのような情報もぜひお話しください。
※どうしても下剤が飲めない方
最後に、どの下剤でも嘔吐してしまう方がいらっしゃいます。そういう方の場合、胃カメラから十二指腸に下剤を注入する方法があります。
本来の使用方法ではないため優先されるべき方法ではありませんが、どの下剤も服用できないのなら一生大腸カメラはできないのかという話になりますので、医療者としてこういう方法も対応はするべきと考えます。胃カメラの際は鎮静剤を使用可能です。どの下剤でも嘔吐してしまう方は当院へご相談ください。
※大腸カメラの下剤を上手に飲むために
下剤に関しては、味の観点で冷やして飲まれることが多いですが、水分量が多いので寒く感じがちです。少し暖かい服装で服用されることをお勧めします。また、味が苦手な方は、直接コップで飲むよりストローで飲むこともよい工夫だと思います。
下剤服用後の来院までに距離があるなど不安な方は、病院で服用頂くこともできますのでご相談ください。
前日までの下剤を工夫して調節することで当日の下剤も効果的に行えることがあります。今までの便通の経験や、お飲みになったことがある下剤があればそれの使用感を教えて頂けると、よりよい工夫につながると思いますので、診察の際にはぜひお話ください。
大腸カメラに対する検査の不安や下剤の不安などをお持ちの方も多いと思いますが、大腸カメラは大腸がんの早期発見にはかかせない検査です。検査において最も重要なのは患者様とのコミュニケーションだと思いますので、不安やお悩みをしっかりと聞いて一緒に考えてご相談させていただきたいと思います。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉