2024年4月1日より、COKUに内視鏡部門がオープンしました。
内視鏡にまつわるトピックも定期的にあげていきたいと思います。
今回は、大腸カメラ(大腸内視鏡検査)の前に服用する下剤についてお話します。
大腸カメラでは、肛門から細長いカメラを挿入して大腸の奥まで観察するのですが、事前に下剤を使用して大腸の中をきれいにしないと便できれいに腸がみえません。
大腸からの出血で緊急を要する場合など、下剤を服用せずに行う例もあり得ますが、十分な観察のためにはしっかりとした前処置(下剤による腸の洗浄)が必要になります。
前処置のための下剤の服用方法として、一般的には前日の夜と当日の朝にわけて服用を行います。
当院ではセンノシド(錠剤)、ピコスルファートナトリウム(液体)、マグコロールP(液体)の3種類を主に使用します。
それぞれに特徴があり、使い分けています。
1.センノシド:錠剤であるため飲みやすく、便秘の症状が強くないほとんどの方で効果は良好です。
2.ピコスルファートナトリウム:便秘症状の強い方、センノシドでは効果の乏しい方はピコスルファートを1本使用します。
3.マグコロールP:センノシドやピコスルファートは「刺激性下剤」に分類され、大腸粘膜を刺激することで腸蠕動を亢進させます。どちらも飲みやすい薬ではありますが、腸を刺激して動かすため、お腹が痛くなることがあります。マグコロールPは「浸透性下剤」といって、便からの水分吸収をしにくくする(便を水っぽいままにする)ことで効果を発揮します。
もともと便秘が強い方は、数日前から「酸化マグネシウム」や「リナクロチド」などで便通を整えてから、上記の下剤を服用します。
当院では、サルプレップ、ニフレック、ビジクリアを使用します。
1.サルプレップ
サルプレップは、1本480ml入りのペットボトルに入った液体の下剤です。薄めずに使用できます。120mlを10分程度で服用し、そのあとに240mlの水あるいはお茶を10-20分程度で服用します。これを1セットとし、便がきれいになるまで繰り返します。1本で検査可能な方もいらっしゃいますが、1本と1-2セット程度を要することが多い印象です。味はやや濃い塩味です。下剤自体の量が少なくて済むのが特長です。
2.ニフレック
ニフレックはバッグに入った粉末で、2リットルの水で溶解して200mlを15分ごとに服用してゆきます。昔からある下剤であり、重篤な腎障害がある方にも使用できる点が最大の特長です。レモン・スポーツドリンク風味です。間に水をはさまず(飲んでもかまいませんが)使用できるので、飲み方が複雑でないことも利点です。
3.ビジクリア
5錠ずつを15分おきに200mlの水で服用してゆきます。合計10セット、50錠服用して終了です。特長は何よりも下剤を味わわなくてよい点です。重篤な腎障害や、高血圧をお持ちの高齢者の方は禁忌となります。
まとめると次の表のようになります。
以前に使用して味や飲み方があわなかった場合には、違う下剤を試してみるなどもできます。経験のある方は、そのような情報もぜひお話しください。
※どうしても下剤が飲めない方
最後に、どの下剤でも嘔吐してしまう方がいらっしゃいます。そういう方の場合、胃カメラから十二指腸に下剤を注入する方法があります。
本来の使用方法ではないため優先されるべき方法ではありませんが、どの下剤も服用できないのなら一生大腸カメラはできないのかという話になりますので、医療者としてこういう方法も対応はするべきと考えます。胃カメラの際は鎮静剤を使用可能です。どの下剤でも嘔吐してしまう方は当院へご相談ください。
※大腸カメラの下剤を上手に飲むために
下剤に関しては、味の観点で冷やして飲まれることが多いですが、水分量が多いので寒く感じがちです。少し暖かい服装で服用されることをお勧めします。また、味が苦手な方は、直接コップで飲むよりストローで飲むこともよい工夫だと思います。
下剤服用後の来院までに距離があるなど不安な方は、病院で服用頂くこともできますのでご相談ください。
前日までの下剤を工夫して調節することで当日の下剤も効果的に行えることがあります。今までの便通の経験や、お飲みになったことがある下剤があればそれの使用感を教えて頂けると、よりよい工夫につながると思いますので、診察の際にはぜひお話ください。
大腸カメラに対する検査の不安や下剤の不安などをお持ちの方も多いと思いますが、大腸カメラは大腸がんの早期発見にはかかせない検査です。検査において最も重要なのは患者様とのコミュニケーションだと思いますので、不安やお悩みをしっかりと聞いて一緒に考えてご相談させていただきたいと思います。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉