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胃がんに初期症状はある?主な症状や早期発見のポイントについて

2024.12.07

かつて胃がんは、日本人のがんによる死亡数の第1位でしたが、近年では診断技術が発達し、早期治療をおこなうことで完治も目指せるようになっています。しかし胃がんは初期症状がほとんどないため、本人が気づかないうちに発症し、進行してしまうことが多く、早期発見のためには胃がん検診が欠かせません。今回は、胃がんの症状について詳しく解説するとともに、国が推奨する胃がん検診の概要やメリット・デメリットについてもお伝えします。胃がんに対する正しい知識を踏まえて、胃がんの早期発見・早期治療につなげましょう。

1. 胃の構造や役割

胃は消化器系の一部であり、みぞおちのあたりにあります。袋状の構造をしていて、上部は食道、下部は十二指腸につながっています。食道とつながる入口の部位を「噴門(ふんもん)」、十二指腸につながる出口の部位を「幽門(ゆうもん)」といいます。

胃は消化器系の臓器のなかでも最もよく拡張し、食べ物をたくさん食べると最大容量は1,200~1,500mLほどになります。

胃の壁は、内側から「粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜」と呼ばれる4層から成り立っています。健康な胃の粘膜は、均一でみずみずしいピンク色をしているのが特徴です。

胃の主な役割は、食べ物の貯蔵と消化です。胃に食べ物が入ってくると、一旦胃の中に貯蔵し、蠕動運動(ぜんどううんどう)をしながら胃液と混ぜ合わせることで、食べ物を吸収しやすい形へと変化させ、幽門から十二指腸へと少しずつ送り出します。

2. 胃がんに特有の初期症状はない

胃がんは、胃の壁を覆う粘膜の表面から発生するがんです。がん細胞が、粘膜や粘膜下層などの表層部分にとどまっているものを早期胃がん、それよりもさらに深い固有筋膜以上に達しているものを進行胃がんといいます。胃がんになっても、初期症状はほとんどなく、自覚するのは困難です。ある程度がんが進行していても、無症状のケースもあります。

がんが進行し、自覚症状がある場合には、胃の痛みや不快感、違和感や胸やけ、食欲不振、嘔気でなどの症状が出たり、あるいはがんからの出血によって貧血や黒っぽい便(タール便)が出たりするケースもあります。しかしこれらの症状は、胃炎や胃潰瘍などの病気でも起こることがあり、胃がんに特有の症状というわけではありません。そのため、胃がんを特定するためには胃がん検診を受ける必要があります。

3. 胃がんの診断

胃がんの診断は、「胃内視鏡検査(胃カメラ)」による胃の中の観察と、実際に組織を採取して顕微鏡で観察する「病理組織検査」でおこないます。それぞれ詳しくみていきましょう。

3.1. 胃内視鏡検査(胃カメラ)などの実施

胃内視鏡検査(胃カメラ)は、胃の内側をカメラで直接観察して調べる検査です。口あるいは鼻から、細い内視鏡を胃まで挿入し、胃粘膜の色調や形状に異常がないか詳細に調べます。高画質のカラー画像で観察しますので、ほんのわずかな色調変化や組織の異常を検出することができ、ごく初期の胃がんの発見にも威力を発揮します。がんが疑われる部位が見つかった場合は、検査中に組織を採取(生検:せいけん)して、精密検査に出すことができます。胃がんは自覚症状がほとんどないため、胃カメラは、胃がんの診断において欠かすことできない重要な検査です。

その他、医師の判断で胸部・腹部CT検査やバリウム検査、超音波検査などの画像検査を併用することもあります。

3.2. 組織を顕微鏡で観察してがんを確認

生検で採取した組織を、顕微鏡を使って詳細に観察して、がん細胞があるか検査します。これを病理組織検査といいます。病理組織検査をおこなうことで、胃潰瘍や胃炎などのそのほかの病気との鑑別、がん細胞の有無がわかります。また、胃がんと診断された場合、この病理組織検査によってがんの種類や進行度などを調べることができます。

4. 胃がんを早期に発見するには

胃がんは早期に発見すれば、ほぼ完治が可能な病気です。胃がんを早期に発見し、治療につなげるための方法と注意点について解説します。

4.1. 定期的に検診を受ける

胃がんは、特有の初期症状がほとんどないため、知らないうちに発症して進行してしまうことがあります。胃がんを早期に発見するためには、定期的に胃がん検診を受けることがとても大切です。

胃がんは、40歳代から増えはじめ、50歳以上になると罹患率が本格的に増えはじめることから、厚生労働省は、50歳以上の人に対し、2年に1回定期的に胃がん検診を受けることを推奨しています。国が推奨する胃がんの定期検診は、問診および胃部X線検査、もしくは問診および胃内視鏡検査(胃カメラ)のいずれかです。自覚症状がなくても、検査対象年齢に達したら、定期的に胃がん検診を受けましょう。

4.2. 受診する際の注意点

がん検診には、利益と不利益があります。がん検診の利益とは、胃がんで死亡することを防ぐことを指します。対して不利益とは、偽陰性、偽陽性などを指します。胃がん検診を受ける際には、利益が不利益を上回るという科学的根拠が確立されたがん検診を選ぶことが大切です。国が推奨する胃がんの対象年齢や検査項目、受診間隔は、この科学的根拠に基づいて判断したものです。したがって、胃がん検診は、やみくもに受けるのではなく、推奨される年齢と間隔で受診することが大切です。

5. 胃がん検診のメリット

胃がん検診を受けるメリットは主に2つあります。1つ目は、胃がんを早期に発見し、早期治療を受けることで根治できる可能性が高くなるので、胃がんによる死亡を防ぐことができることです。

2つ目のメリットは、がんが初期のうちに早期治療をおこなうことで、治療による負担を軽減できることです。そのほか、異常がないかどうかの確認ができることで、胃がんに関する不安を払拭できることもメリットといえます。

6. 胃がん検診のデメリット

胃がん検診の主なデメリットは3つあります。1つ目は偽陰性または偽陽性の可能性があることです。偽陰性とは、実際にはがんがあるのに、精密検査が不要と判断されてしまうことをいいます。偽陰性によってがんの発見・治療開始が遅れることがあります。また、偽陽性とは、実際にはがんがないのに、がんの疑いがありと判断されることをいいます。偽陽性によって、不必要な精密検査を受けることになり、検査にともなう負担がかかります。

2つ目のデメリットは、過剰診断です。成長のスピードが極めて遅いタイプのがんなど、すぐに治療しなくても命に関わることのないがんに対して、治療を進めることになるため、患者さんに負担がかかります。

3つ目のデメリットは、偶発症です。ごく稀に、内視鏡による手技やバリウムの誤嚥(ごえん)、排出不全などによって、出血や穿孔(せんこう:消化管に穴が開くこと)、腸閉塞など予期せぬ合併症を発症するリスクが存在します。

このように、胃がん検診には少なからずデメリットも存在するため、推奨年齢よりも若い方が検診を受けた場合、メリットよりもデメリットが上回ることがあります。

7. 気になる症状がある方は消化器内科の受診を

国が定期的な胃がん検診の受診を推奨している50歳以上の方については、定期的に検診を受けることが非常に重要です。ただし、推奨年齢以下の方であっても、胃や胸の痛み、胸やけや吐気、便の色がおかしいなど、心配な症状がある時は胃がん検診を受けることをおすすめします。早めに消化器内科を受診して医師に相談しましょう。

8. まとめ

胃がんは初期の段階で発見し、早い時期に治療を開始することができれば完治を目指せる病気です。しかし胃がんは初期症状がほとんどないため、50歳になったら定期的に胃がん検診を受けて、早期発見・治療につなげることが大切です。胃がん検診は、推奨された年齢と間隔で受けるようにしましょう。

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