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医療コラム

内視鏡治療に関するブログ記事一覧

2025.09.15

右上腹部に突然の激しい痛みを感じたことはありませんか?その痛みは、もしかすると胆嚢炎(たんのうえん)のサインかもしれません。胆嚢炎は、胆汁を蓄える「胆嚢」に炎症が起こる病気で、放置すると命にかかわる重篤な状態に進行することもあります。特に胆石をお持ちの方や、脂っこい食事の後に腹部の不快感を覚える方は注意が必要です。

今回は、胆嚢炎の症状から原因、検査・診断方法、治療法を分かりやすく解説します。また胆嚢炎を予防する生活習慣も紹介しますので、健康管理に役立てましょう。

1.胆嚢炎とは?

胆嚢炎は、肝臓で作られる消化液の胆汁を一時的に蓄える胆嚢に炎症が起こる病気です。胆嚢炎は、急性胆嚢炎と慢性胆嚢炎の2つに分けられます。

急性胆嚢炎は、急激な炎症が起こり、右腹部の強い痛みに加え、発熱・吐き気などをともなう状態です。進行すると胆嚢が壊死したり破裂したりして、腹膜炎や敗血症など命に関わる状態となり、緊急手術が必要になる場合もあります。一方、慢性胆嚢炎は、緩やかな炎症がくり返し起こることで胆嚢の壁が厚くなり、機能が低下した状態をいいます。

2.胆嚢炎が起こる原因

胆嚢炎の主な原因は、胆汁をためる胆嚢にできる胆石です。胆石が胆嚢の出口に詰まることで胆汁が排出されず、胆嚢の壁が腫れて炎症を引き起こします。まれに胆石がなくても、胆嚢の血流が悪くなることや細菌感染・胆嚢のねじれ・外傷などが原因で胆嚢炎が起こることもあるため注意が必要です。

胆嚢炎は、胆石の生じやすい女性や50~60歳代の中年で発症しやすい傾向があります。

3.胆嚢炎の主な症状

胆嚢炎の症状は、腹部の違和感から始まることが多く、進行すると日常生活に支障をきたすほど深刻になることがあります。特徴的な症状を知っておくことで、早期発見・早期治療につながり、重症化を防ぐことが可能です。代表的な5つの症状について詳しく解説しましょう。

3.1.右上腹部の痛み

胆嚢炎の典型的な症状は、右上腹部やみぞおちの激しい痛みです。はじめのうちは上腹部の不快感や鈍い痛みが現れ、炎症の進行とともに右の肋骨の下あたりに強い痛みが生じ、次第に激痛へと変わります。

痛みの症状は、胆石が胆嚢の出口に詰まって胆汁が溜まり、胆嚢が膨れ上がることで炎症が起こるために生じます。特に脂っこい食事を摂った後に、痛みが誘発されます。また、胆嚢のある右上腹部を圧迫しながら深呼吸をすると痛みのために息ができなくなる「マーフィー徴候」は、急性胆嚢炎に特徴的な症状です。

3.2.発熱・寒気

細菌感染を起こし胆嚢炎が悪化すると、発熱や寒気が現れます。体内で炎症反応が活発になり、血液検査では白血球数やCRP値の上昇といった異常が認められます。寒気をともなう38℃以上の高熱・激しい腹痛・黄疸がみられる場合は、重症化している可能性があるため、早急な入院治療が必要です。

3.3.吐き気・嘔吐

右上腹部の痛みに加えて、吐き気や嘔吐も頻繁にみられます。特に、脂っぽい食事の後に胆嚢が収縮しようとすることで痛みが生じ、それが引き金となって吐き気や嘔吐を引き起こすケースもあります。消化液である胆汁の排出が滞ることで、消化機能にも影響が出やすいため、食後に吐き気を感じやすくなることもあるのです。

3.4.黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)

急性胆嚢炎が悪化して、総胆管まで炎症が広がったり、敗血症を引き起こして胆嚢機能不全に陥ったりすると、黄疸を引き起こすことがあります。黄疸は、胆汁の流れが滞ることで胆汁色素であるビリルビンが血液中に増加するために、皮膚や白目の部分が黄色くなる症状です。腹痛や発熱に加えて黄疸が見られる場合は胆管炎を併発している可能性があり、重症化すると命に関わる危険性があるため、早急な医療機関の受診が重要です。

3.5.食欲不振・倦怠感

胆嚢炎では、右上腹部の痛みや発熱、吐き気などの症状が続くことで、食欲不振や倦怠感が生じることがあります。胆管炎やミリッツィ症候群などを合併しているケースでも、肝機能障害により食欲不振や倦怠感がみられることもあります。また高齢者では、食欲不振や倦怠感が胆嚢炎の唯一の症状として現れることがあり、ほかの病気でもみられる症状であるため注意が必要です。

4.胆石のある方は注意が必要

胆石は、急性胆嚢炎の原因の約9割を占めるとされています。胆石があっても無症状のまま経過することが多いですが、定期的に検査を受けて異常がみられないか確認しましょう。

右上腹部痛やみぞおちの痛み、発熱といった症状が現れた場合は、有症状胆石となるため、早めの受診が必要です。放置すると急性胆嚢炎を発症するリスクが高まり、場合によっては胆嚢の穿孔(せんこう)※穴が開くことや腹膜炎などの重篤な合併症につながり、命に関わる可能性もあります。そのため、右上腹部の痛みや発熱などの症状が現れたら早急に医師と相談し、適切な治療を検討することが非常に重要です。

5.胆嚢炎の検査と診断方法

胆嚢炎の診断は、右上腹部痛や発熱症状だけでなく、腹部超音波検査(エコー)・血液検査・CT検査の3つを組み合わせておこないます。

腹部超音波検査は、体の負担が少なく実施できて、胆嚢炎の状態を高い精度で判別できる検査です。胆嚢の腫れや壁の厚み、胆石の有無を確認します。

血液検査では、炎症反応や肝機能を確認します。炎症反応は白血球数やCRP(C反応性蛋白)値が上昇しているかを確認し、肝機能は肝臓・胆道系の酵素に異常がないかを確認するのです。

CT検査は、腹部超音波検査で確定診断が出来ない場合や合併症が疑われる場合におこないます。胆嚢の炎症の広がり、胆嚢の穿孔、胆管炎などの合併症の有無を詳しく調べることが可能です。

6.胆嚢炎の治療法

胆嚢炎の治療法は、症状の重さや患者さんの全身状態によって異なります。

初期治療として、絶食と点滴、抗生物質や鎮痛剤などの投与により炎症や感染を抑えます。

軽症から中等度の胆嚢炎で胆石がある場合は、再発を防ぐために、早期に胆嚢を取り除く手術をおこなうのが一般的です。手術は、主に腹腔鏡下胆嚢摘出術をおこないますが、腹腔内の状況に応じて開腹手術になることもあります。

重症化して膿瘍や穿孔・腹膜炎などの合併症をともなう場合は、緊急手術がおこなわれることもあり、急性胆嚢炎の治療に精通した医師による集中的な管理が必要です。また、手術リスクの高い患者さんには、溜まった胆汁を排出させる胆嚢ドレナージ術をおこなうことがあります。胆嚢炎の治療後は、再発予防のために脂肪分の多い食事を控えるなど、生活習慣の改善も大切です。

7.胆嚢炎を予防する生活習慣

胆嚢炎の多くは胆石が原因で起こるため、日頃の生活習慣を見直し、胆石を発症しないようにすることが予防につながります。

食生活では、脂肪分やコレステロールの摂りすぎに注意し、野菜・果物・食物繊維を積極的に摂りましょう。不規則な食事や過度な断食は避け、規則正しい食事を心がけることが大切です。

【食生活の改善の実践例】

  • ・揚げ物を食べる回数を減らし、蒸し料理を増やす
  • ・毎食必ず野菜を1品追加し、食物繊維を積極的に摂る
  • ・朝食を抜かないようにする

肥満は胆石のリスクを高めるため、適正体重を維持しましょう。

【体重管理の実践例】

  • ・毎朝同じ時間に体重測定し、手帳に記録する
  • ・食事は就寝3時間前までに済ませ、深夜の飲食を控える
  • ・腹八分目を心がける

定期的にウォーキングなどの適度な運動をおこなうと代謝改善につながり、胆石のリスク因子となるコレステロール値の異常や肥満を改善します。

【適度な運動の実践例】

  • ・1日10分間のラジオ体操やストレッチをおこなう
  • ・週3回、1回30分のウォーキングを実施する
  • ・運動の時間が取れないときは、エスカレーターを使わず階段を利用して、体を動かす時間を増やす

過度な飲酒や喫煙も胆石のリスク因子となり得るため、見直すことをおすすめします。

【飲酒・喫煙習慣の見直しの実践例】

  • ・休肝日を週2日設定する
  • ・ノンアルコールビールに置き換えて飲酒量を減らす
  • ・禁煙外来を受診し、医師と相談しながら禁煙する

8.胆嚢炎にならないために、胆石の症状がある方は早めの受診を!

胆嚢炎は、胆嚢に炎症が起こる病気で、その原因の約9割は胆石によるものです。右上腹部の激しい痛みや発熱、吐き気などの症状が特徴的で、放置すると胆嚢の穿孔や腹膜炎、敗血症といった重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

診断には腹部超音波検査や血液検査、CT検査を組み合わせておこない、治療は症状の程度に応じて薬物療法から胆嚢摘出術まで複数の選択肢があります。胆嚢炎の予防は、脂肪分を控えた食事・適正体重の維持・適度な運動など生活習慣の改善をおこない、胆石が形成されないようにすることが大切です。

また、胆石のある方は、自覚症状がなくても定期的な検査を受け、右上腹部の痛みや発熱などの症状が現れたら、胆嚢炎の発症を防ぐためにも早めに医療機関を受診しましょう。

2025.09.12

胆石症は、胆のうや胆管に石ができる病気で、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。無症状のまま経過することも多い一方で、ひとたび症状が現れると激しい痛みや発熱を引き起こし、時には手術が必要になることもあります。

今回は、胆石がどのようにしてできるのか、どんな症状が現れるのか、診断から治療までの流れを詳しく解説します。さらに、日々の食生活で気をつけるべきポイントなど、胆石症を予防するための実践的な方法もご紹介しましょう。

1.胆石症とは?

胆石症とは、肝臓で作られる消化液「胆汁」の通り道である胆管や、胆汁を一時的に蓄え濃縮する袋状の臓器「胆のう」の中に、胆汁の成分が固まって石(結石)ができる病気です。結石ができる場所によって、胆のうの中にできる胆のう結石、肝臓と十二指腸をつなぐ管である総胆管にできる総胆管結石、肝臓の中の胆管にできる肝内結石に分類され、胆石症はこれらの総称になります。胆石があっても症状を感じないことが多いですが、胆石が胆管を詰まらせたり、胆汁の流れが悪化して細菌感染を起こしたりすると、腹痛や発熱、黄疸が生じることもあります。

2.胆石の種類

胆石とは、肝臓で脂肪の消化を助ける「胆汁」の成分が固まり、石状になったものです。主にコレステロールやビリルビンなどが固まってできます。胆石は、できる場所によって主に以下の3種類に分けられます。

  • ・胆のう結石:胆のうの中にできるもので、胆石の中で最も多い
  • ・総胆管結石:胆汁が流れる総胆管に生じるもので、多くは胆のうでできた胆石が移動したもの
  • ・肝内結石:肝臓の中にある胆管にできたもの

3.胆石ができる原因

胆石は、肝臓で作られる胆汁成分のバランスが崩れたり、胆汁の流れが滞ったりすることで生じます。主な原因とメカニズムは以下の通りです。

  • ・コレステロールの多い食事や肥満

胆汁中に含まれるコレステロールが増えすぎて、溶けきれずに結晶化して石ができやすくなる

  • ・急激なダイエット

胆のうの収縮能が低下し、胆汁が滞ることで胆石形成につながる

  • ・女性ホルモン(妊娠や経口避妊薬など)

ホルモンの影響で胆汁成分や胆のうの動きに変化が生じ、胆石ができやすくなる

  • ・加齢

中年以降に多く見られ、年齢を重ねることも胆石ができるリスクを高める

  • ・遺伝的要因

溶血性貧血など遺伝性の疾患や胆石ができやすい体質が、家族内で受け継がれることがある

  • ・糖尿病・肝疾患・胆汁うっ滞などの病的要因

これらの疾患は胆汁の成分や胆のうの収縮能に影響を与えるため、胆石ができやすくなる

4.胆石症の主な症状

胆石が見つかっても無症状で経過することが多くみられます。有症状となった場合に、よくみられる症状は以下の4つです。

4.1.痛み

胆石症の症状で最も頻度が高いのが痛みです。主に右上腹部やみぞおちに激しい痛みをともなうことが多く、背中や肩に響くような痛みになることもあります。特に脂質の多い食事の後やストレスによって引き起こされるのが特徴です。この痛みは「胆石発作」と呼ばれ、一度起こすと繰り返す傾向があります。

4.2.吐き気・嘔吐

胆石による腹痛発作には、吐き気や嘔吐をともなうことがしばしばあります。胆石が胆管内で刺激を与えたり、胆汁の出口を塞いだりすることによって生じるためです。特に激しい痛みが起こる際に、吐き気や嘔吐といった症状が出やすくなります。

4.3.発熱・悪寒

胆石が原因で胆のうや胆管に細菌感染が起こると、「急性胆のう炎」や「急性胆管炎」を発症し、発熱や悪寒をともないます。特に、黄疸と発熱が同時に現れる場合は、「重症急性胆管炎」など命に関わる状態に進行している可能性があり、速やかな医療機関の受診が必要です。炎症が重症化すると胆のうや胆管に膿が溜まり、敗血症やショック状態を引き起こすこともあります。

4.4.黄疸

胆石が肝臓で作られた胆汁の通り道である胆管を塞いでしまうと、胆汁の流れが悪くなり、血液中のビリルビンという色素成分が体内に溜まります。これにより、皮膚や目の白目の部分が黄色くなる「黄疸」という症状が現れ、かゆみをともなうこともあります。特に、総胆管結石や肝内結石において黄疸が見られることが多いです。総胆管結石から胆管炎を併発した際にも黄疸が現れやすくなります。

5.胆石症と診断されるまでの検査

胆石症の診断には、いくつかの検査を組み合わせておこないます。

最初におこなうのは、身体への負担が少ない腹部超音波検査(エコー)です。この検査では、胆のう内の石の有無や大きさ、胆のうの壁の状態などを直接確認できます。胆のう結石はほぼ腹部超音波検査で見つかるといわれています。

血液検査は、腹部超音波検査では分かりにくい炎症の有無や肝機能の状態を調べるためにおこないます。検査で調べる項目と分かることは以下のとおりです。

  • ・白血球数・CRP:胆のうや胆管の炎症を確認
  • ・ビリルビン:胆汁の詰まりや黄疸の有無を確認
  • ・肝酵素:肝臓のダメージの有無を確認

CT検査やMRI検査は、腹部超音波検査で確認が難しい場合や、より詳しい情報を得たい場合におこないます。検査で調べる点と分かることは以下のとおりです。

  • ・胆石の位置・大きさ:石の大きさや個数を確認
  • ・胆管の状態:胆石の詰まりや胆汁の流れの異常を確認
  • ・周囲臓器への影響:炎症の広がりや合併症の有無を確認

6.胆石症の治療方法

胆石症の治療は、自覚症状の有無によって、保存療法と胆のう摘出術に分けられます。それぞれの治療方法の特徴について解説しましょう。

6.1.保存療法(食事指導・経過観察)

胆石を持っていても、無症状であることが多く、このような場合は原則として治療をおこなう必要はありません。無症状の胆石は、経過観察が選択されます。ただし、胆石の形成や発作を避けるために、脂肪分の多い食事を控え、規則正しい食生活を心がけることが重要です。急激なダイエットも胆石形成のリスクを高めるため避けましょう。

6.2.胆のう摘出術(腹腔鏡手術中心)

腹痛や発熱などの症状がある胆石症の場合、胆のう摘出術が最も根本的な治療法として推奨されます。腹腔鏡下手術は、お腹に数ヵ所の小さな穴を開け、専用のカメラと細い手術器具を使って胆のうを摘出する方法です。この方法の大きなメリットは、術後の痛みが少なく、回復が早いため、入院期間も短く(通常3~5日程度)済むことです。現在ではほとんどの胆のう結石症が腹腔鏡下手術の対象となりますが、過去の腹部手術による強い癒着がある場合など、状況によっては開腹手術に切り替えることもあります。胆のうを摘出しても、肝臓や胆管がその機能の一部を補うため、日常生活に大きな支障はありません。

7.胆石ができやすい方の特徴

胆石はさまざまな要因で形成され、特に以下の方はできやすい傾向があります。

  • ・脂質の多い食事をよくとる人

胆汁中に含まれるコレステロールが増え、結晶化しやすいため

  • ・肥満または急激なダイエットをした人

肥満や急な体重減少が胆石形成リスクを高めるため

  • ・40歳以上の中高年

胆石症の発症は、中年以降に多いとされるため

  • ・女性(特に妊娠・出産経験のある方)

女性は結石ができやすく、妊娠もリスク因子となるため

  • ・糖尿病のある方

胆石形成に関与が指摘されるため

  • ・家族に胆石の人がいる

遺伝や似た食生活が影響するため

8.胆石症の予防には食事がカギ

胆石の発生リスクを下げるためには、日々の食生活が非常に重要です。以下の点を心がけましょう。

  • ・脂っこい食事(揚げ物・肉の脂身など)を控える

脂肪分の多い食事は胆汁中に含まれるコレステロールを増やし、結晶化する原因となるため

【実践例】

・揚げ物はできるだけ控えて、衣を薄くする

・肉は脂身を取り除き、鶏むね肉や赤身肉を選ぶ

・調理法は「焼く」「蒸す」「茹でる」を基本にする

  • ・コレステロールの多い食品(卵黄・レバーなど)は適量に

コレステロールを摂り過ぎると胆石形成リスクを高めるため、また卵は胆のうを収縮させて腹痛発作を引き起こす可能性があるため

【実践例】

・卵・レバー・魚卵などの摂取はできるだけ控える

・肉類中心の食事から大豆製品や魚類を取り入れた食事を摂る

・マヨネーズを使わず酢と植物油のドレッシングに置き換える

  • ・食物繊維を多く含む野菜・果物・海藻・豆類を積極的にとる

これらの食品に含まれる水溶性食物繊維には悪玉コレステロールを減らす作用があるため

【実践例】

・毎食必ず野菜料理を1品以上、1日350gを目標にする

・ひじきの煮物やもずく酢など海藻類を副菜として取り入れる

・おやつはナッツ類(無塩)小皿に1皿程度を食べる

  • ・水分をしっかり摂取して胆汁を流れやすくする

脱水は胆石発生のリスクとなるため、十分な水分摂取で胆汁が濃縮されにくく、流れが良くなるのを助ける

【実践例】

・起床時、食事前、入浴前後にコップ1杯の水を飲む

・1日1.5L~2Lを目標に、こまめに少量ずつ摂取する

・カフェイン飲料は控えて、麦茶やルイボスティーなどを飲む

  • ・食事を抜かず、1日3食を規則正しくとる

不規則な食事は胆のうの正常な働きを妨げ、胆汁の詰まりを招きやすくなるため

【実践例】

・食事は、朝7~8時、昼12~13時、夕18~19時を目安にする

・特に朝食抜きは避ける

・週末も平日と同じ時間帯での食事を心がける

  • ・急激なダイエットや断食を避ける

長期間の絶食や急激な体重減少は胆のうの収縮能を低下させ、胆汁が滞りやすくなるため

【実践例】

・減量は1ヵ月あたり現体重の1%程度のゆるやかなペースでおこなう

・極端な糖質制限や単品ダイエットは避ける

・タンパク質、脂質、糖質をバランスよく摂取する

  • ・適正体重を保つよう心がける

肥満は胆汁の組成に影響を与えて、胆石ができやすくなるため

【実践例】

・毎日体重を測定し、記録をつける習慣を作る

・夕食は就寝2~3時間前までに済ませる

・腹八分目を意識し、よく噛んでゆっくり食べる

上記の食事対策は胆石症の予防に効果的とされていますが、食事のみで完全に予防できるわけではありません。個人の体質や糖尿病・肝疾患などの基礎疾患がある場合には、食生活に気をつけていても胆石が形成されることがあります。

9.胆石症は予防と早期発見が大切!

胆石症は無症状のことも多い一方で、激しい腹痛や発熱といった重篤な症状を引き起こすこともある病気です。コレステロールの多い食事や肥満、急激なダイエットなどが主な原因となり、腹部超音波検査をはじめとした各種検査で診断されます。脂質の多い食事を控え、食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂取し、適正体重を維持することが予防につながります。

胆石症の治療においては、症状の有無が重要な判断基準となりますが、胆石の個数や大きさ、またその経時的な変化も治療時期の決定に重要な因子となるため、患者様一人ひとりの状況に対応いたします。健康診断で胆石を指摘された方やお腹の症状でお悩みの方は、西宮敬愛会低侵襲治療部門COKUへご相談ください。

2024.06.15

内視鏡検査というと苦しくつらいイメージがあり、不安な方が多いようです。一方、最近検査を受けた方からは、「寝ている間に終わった」という声もあり、苦しくない内視鏡検査も広く普及しています。では、実際に内視鏡検査はどのようにおこなわれるのでしょうか。ここでは、食道や胃、十二指腸を調べる上部消化管内視鏡検査と、大腸を調べる大腸内視鏡検査について、検査方法や受ける時の注意点などくわしく解説します。

1. 内視鏡検査とは

内視鏡検査とは、内視鏡と呼ばれる小型カメラやレンズを搭載した管を、口や鼻、肛門から挿入し、普段は直接見ることができない消化管の内側の粘膜を、モニター画面を通して見る検査です。医師はリアルタイムに観察すると同時に、病変の疑いのある部位の組織を採取したり、ポリープ切除などの治療をしたりすることもできる検査です。

2.内視鏡検査の目的

内視鏡検査の目的のひとつは、がんの早期発見や予防のために、がんが疑われる病巣を発見し、検査と同時に良性か悪性かを見極めるための組織を採取し、迅速な確定診断で治療方針を決定することです。もうひとつは、何らかの症状がある時に、その原因をつきとめることです。

3.内視鏡検査の種類

内視鏡検査には、食道、胃、十二指腸を調べる「上部消化管内視鏡検査」と、大腸を調べる「大腸内視鏡検査」があります。それぞれ詳しく説明します。

3.1.上部消化管内視鏡検査

上部消化管内視鏡検査は、いわゆる「胃カメラ」といわれる検査です。食道や胃のあたりに何らかの症状がある時や、胃がん健診で受ける検査です。胃カメラは、食道がん、胃がん、十二指腸がん、逆流性食道炎、胃炎、胃潰瘍、ポリープなどの病気を発見するために有用な検査です。胃カメラには、内視鏡を口から挿入する「経口内視鏡検査」と鼻から挿入する「経鼻内視鏡検査」があります。当院では、病気を発見するための胃カメラでは鼻からでも挿入可能な5.8mm径の細径内視鏡を使用し、ポリープ切除などの治療を行う場合は経口で挿入する9.8mmの処置専用の内視鏡を使用します。

3.2.大腸内視鏡検査

大腸内視鏡検査は、いわゆる「大腸カメラ」といわれる検査です。便潜血検査で陽性になった時や、血便のある時、下痢や便秘を繰り返している、腹痛が続いているなど、何らかの症状がある時に、その原因を調べる目的でおこないます。

大腸カメラは、大腸がん、大腸ポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病など)、大腸憩室炎、感染性腸炎、過敏性腸症候群など、大腸の病気を発見するために有用な検査です。

大腸カメラは、内視鏡を肛門から最も奥の盲腸まで挿入し、少しずつ引き抜いて大腸全体と小腸の一部(回腸末端部)の粘膜を観察します。内視鏡から水を噴霧して洗い流したり、二酸化炭素を注入したりして、腸の粘膜をすみずみまで鮮明な画像で観察できるため、炎症や病変の有無などを正確に把握することができます。

また、観察すると同時に、ポリープやがんと疑われる病変部を発見した場合には、採取して生検すると、迅速な診断につなげることができます。

4.内視鏡検査で発見できる疾患

■ がん(食道がん、胃がん、大腸がんなど)
がんは、ほとんど自覚症状がないことが多いため、早期発見には内視鏡検査が有用です。内視鏡検査により採取した組織を生検し、がん細胞があれば、がんと確定診断されます。がん細胞の悪性度、進行度、他臓器への転移の有無などは、精密検査が必要です。リンパ節や他の臓器に転移がなく、がんが粘膜内にとどまっている場合は、内視鏡を使った切除が可能です。

■ 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
みぞおちが痛かったり吐き気、食欲不振を引き起こします。酷いときは出血して吐血されたり、便が黒くなったりします。胃カメラで診断します。胃潰瘍については組織を調べて癌ではないことを確認します。

■ ヘリコバクター・ピロリ胃炎
ヘリコバクター・ピロリ菌により、胃に炎症が続く状態で、内視鏡検査で現在の感染か過去の感染か、未感染かなどが判断されます。

■ 逆流性食道炎
胸やけ、酸っぱいものや苦いものがあがってくるなどの症状がある方に対して内視鏡検査を行った場合に、食道の粘膜にただれを認める場合があります。粘膜に変化がない逆流性食道炎もありますが、胃カメラを行うことで重症度や逆流性食道炎の原因となる病気の有無もわかりますし、同様の症状がある他の病気との鑑別もできます。薬で治療できるため、正確な診断のために内視鏡検査は有用です。

■ 潰瘍性大腸炎、クローン病
潰瘍性大腸炎やクローン病は、血便をともなう下痢(血便はない場合もある)や腹痛を繰り返す病気です。内視鏡検査で炎症や潰瘍の重症度やひろがりを確認し、感染性腸炎など他の病気でないかを除外し、組織検査も参考にして診断されます。原因不明の炎症性腸疾患のひとつの難病で、炎症を抑える薬で症状をコントロールするため、内視鏡による診断は有用です。

5. 内視鏡検査を受けるメリット

内視鏡検査には次のようなメリットがあります。

5.1.症状の原因をあきらかにすることができる

何らかの症状がある時に、内視鏡検査をすると、その原因を明らかにできるメリットがあります。原因がわかれば適切な治療につなげられるだけでなく、検査前に抱いていた不安も解消されるため、精神的なメリットも大きいです。

5.2.病気を早期発見できる

内視鏡検査では、粘膜を観察することで、何も症状がなくても、病気を早期発見できることが最大のメリットといえます。例えば、胃がんの危険因子であるピロリ菌の感染が分かれば除菌することで、将来的ながんの予防が期待できます。飲酒が多く、食道粘膜に変化が見られる方も、食道がんのリスクが高いと判断されます。

5.3.検査中に治療への移行もできる

大腸内視鏡検査では、検査中に発見した小さいがんやポリープを、その場で切除する治療に移行できるのは、患者さまの負担が減るため、メリットのひとつです(患者様の状況によっては出来ないことがあります)。また、原因や部位、出血の状態によりますが、消化管出血に対して、出血部を高周波で焼いたり、クリップで止めたりする方法で一時的に止血することもできます。

6.内視鏡検査を受ける際の注意点

では次に、実際に内視鏡検査を受ける際の基本的な注意点を紹介します。医療機関によって異なるので、事前の説明をしっかり聞き、指示に従ってください。不安なことや疑問がある場合には、事前に確認するようにしましょう。

6.1.検査前の注意点

翌日の検査の時間によって、禁食となる時間は異なることがあります。また、常用薬については医師に相談するようにしましょう。

 上部消化管内視鏡検査大腸内視鏡検査
経口経鼻
食事・服薬など・前日の夕食は消化の良い物を軽めに・午後9時以降、飲食は禁止・飲水は、検査1時間前まで可 ・食物繊維を避け、消化の良いものを・大腸内視鏡検査食を利用してもよい・飲水は制限なく摂取可・就寝前に下剤を服用
生活早めの就寝を心がけること
※安全を期すために、検査前日に採血などの検査が必要な場合もあります。

6.2.検査当日の注意点

検査には、着替えやすい服装で向かいます。検査中の顔色を観察するために、化粧は控え口紅も取るようにしましょう。タバコは禁止です。時計、メガネなどは検査の前に外しておきましょう。

 上部消化管内視鏡検査大腸内視鏡検査
経口経鼻
食事・服薬など・食事、水以外の飲み物、薬は禁止(ただし検査時間によって異なる)・義歯ははずす・検査が終了するまで食事は禁止・水分は制限なく摂取可・指定された時間(家または検査医療機関)に、腸内洗浄液を服用・色の薄い水様便になるまで複数回排便する
生活・検査着に着替える場合があります・検査前に、専用のパンツにはきかえます

6.3.検査後の注意点

検査後や帰宅後に、気分が悪い時や変調のある時(吐き気、腹痛、タール便(黒い便)など)は、すぐに医師に連絡するようにしましょう。

 上部消化管内視鏡検査大腸内視鏡検査
経口経鼻
安静時間 鎮静剤を使用していれば、30分~1時間程度(鎮静剤の使用)すぐに帰宅できる場合もあります
自動車・バイクなどの運転鎮静剤や、胃腸の動きを弱めるお薬を使用した方は禁止です。
食事の開始概ね1時間後、喉の麻酔が切れてから可能 水を飲んで気分が悪くならなければ食事が可能(30分~1時間後を目安)
食事の注意・当日は消化の良い物から・刺激物については当日お控えください。・ポリープ切除などの治療をお受けの場合は1週間は飲酒をお控えください。
生活 組織採取をおこなった場合、検査当日の激しい運動は避け、排便があれば出血がないか色を確認してください。
その他の注意 ・鼻血が出ることがある・鼻は強くかまないこと・オナラは我慢せずに出す・便に少量の血が混じる場合がある


7.内視鏡検査の費用

内視鏡検査の費用は、医療機関によって異なりますが、症状がある場合や、健康診断・人間ドックで内視鏡検査をすすめられた場合には、健康保険が適応されます。

ここでは、2024年5月現在の当院、西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUの費用を、検査の種類別に紹介します。ただし、いずれも術前検査・追加検査がある場合や、使用薬剤の違いにより、費用が変わることがあります。

胃内視鏡検査(観察のみまたは病理組織検査を含む)

 1割負担2割負担3割負担
胃内視鏡(観察のみ)約2,000円約4,000円約6,000円
胃内視鏡と病理組織検査約3,000円約6,000円約9,000円


大腸内視鏡検査(観察のみまたは病理組織検査を含む)

 1割負担2割負担3割負担
大腸内視鏡(観察のみ)約2,500円約5,000円約7,500円
大腸内視鏡と病理組織検査約3,000円約6,000円約10,000円

8.まとめ

内視鏡検査には、食道・胃・十二指腸を観察する上部消化管内視鏡検査と、大腸を観察する大腸内視鏡検査があります。いずれも、先端に小型カメラやレンズを搭載した内視鏡を口や鼻、肛門から挿入して、モニター画面を通して消化管の粘膜を観察し、診断する目的でおこなう検査です。また、検査中に組織を採取したり、ポリープ切除などの治療をおこなったりすることもでき、消化管の病気の発見には有用な検査です。

胃の内視鏡検査は、苦痛の多い検査というイメージがある方も多くいますが、内視鏡検査の機器は、ここ20年あまりで飛躍的に進歩し、内視鏡の太さも細くなり、鎮静剤の使用など患者さまの負担が少ない検査方法も普及しています。

特に、西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、患者さまの負担を、可能な限り小さくする内視鏡検査を目指しています。内視鏡検査の経験が豊富な専門医が担当するため、精神的にも安心して検査を受けていただくことができます。また、肉体的にも鎮静剤や細い内視鏡を使用するため苦しくなく、最先端の内視鏡システムを導入することで、高い診断レベルを確保しています。

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