医療コラム
健康診断や人間ドックで胆のう結石を指摘され、驚いた経験はありませんか。胆のう結石は珍しい病気ではなく、多くの方が無症状のまま過ごしています。しかし、中には突然強い痛みを引き起こしたり、胆のう炎や胆管炎といった危険な病気を引き起こしたりする場合もあります。
この記事では、胆のう結石ができる原因や、結石の種類、どのような治療があるかについてわかりやすく解説します。健康診断で指摘された方はもちろん、予防について知りたい方にも役立つ内容になっています。胆のう結石ができて不安な方は、ぜひ最後までご覧ください。
胆のうとは、肝臓のすぐ横にある小さな袋状の臓器で、肝臓で作られた胆汁を一時的にためる働きがあります。胆のうに結石(コレステロールなどが結晶化したもの)ができる病気を胆のう結石といいます。
胆汁は脂肪の消化を助ける黄褐色の消化液です。肝内胆管を通り、胆のうに蓄えられ、肝外胆管を通り十二指腸に流れます。この胆汁の通り道をまとめて胆管といい、胆管のどこかに結石ができる病気を胆石症といいます。
胆石症は、結石がどこにできるかによって、以下のように呼び方が変わります。
胆のう結石は、さまざまな原因で発症するとされています。ここでは、代表的な原因を解説します。
食生活は、胆のう結石の発症に大きく関わります。特に、脂肪分やコレステロールの多い食事が続くと、胆汁の中のコレステロールが増え、結晶化してしまいます。食べ過ぎも結石の原因の一つです。
最近は食生活の欧米化で揚げ物や脂身の多い肉の摂取量が増え、コレステロール結石ができやすくなっていることが知られています。
さらに、急激な体重減少も、胆汁中のコレステロール濃度が高くなり、胆石を作りやすくなるので注意が必要です。
肥満や運動不足も、胆のう結石のリスクを高める要因とされています。体脂肪が増えると、コレステロール合成が増え、さらに胆のうの収縮機能が低下します。
運動不足の場合、胆のうの収縮機能が低下してしまい胆汁が胆のうの中で溜まったままになることにより、結石ができやすくなると考えられています。
年齢を重ねるほど胆のう結石が発症しやすくなることも知られています。加齢にともなって胆汁の成分が変化し、さらに胆のうの収縮能力が低下することが一因とされています。
また、家族に胆のう結石の方がいると、胆のう結石を発症しやすいことも知られています。
胆のう結石は、男性よりも女性にできやすいといわれてきました。これは、女性ホルモンであるエストロゲンがコレステロールの合成を促し、胆汁の成分に影響を与えるためと考えられています。
しかし、食事内容の変化により、近年では男性に多い傾向がみられています。
生活習慣や体質以外にも、さまざまな要因が関わって発症することがあります。
長時間の絶食、糖尿病、肝臓の病気などでは、胆汁の成分に影響が出やすく、胆のう結石ができやすくなるとされています。
また、ホルモン剤、フィブラート系脂質異常症治療薬などの一部の薬は、胆石を発症しやすくなります。
さらに、溶血性貧血などの一部の病気では、胆汁に含まれる色素成分が増えることで、色素胆石ができやすくなることが知られています。

胆のう結石には、以下の3種類があります。それぞれ、以下のような特徴があります。
最も多いタイプで、黄色~淡褐色の石で、コレステロールが主成分です。胆汁中のコレステロールの量が増えると、過剰なコレステロールが溶けきれず結晶を作り、胆石になります。
コレステロールが増えると作られるため、高カロリーや高脂肪の食生活を続けているとできやすくなるとされています。
色素石とは、胆汁に含まれるビリルビンという成分が固まってできる結石の総称です。黒色石と褐色石の2種類があり、石の成分や背景にある病気が異なります。
黒色石は、名前の通り黒っぽい色をした石です。赤血球が破壊される溶血性疾患や、肝硬変などの肝疾患があると胆汁中のビリルビンが増え、石が作られると考えられています。
褐色石は、胆道感染や胆管炎など、胆汁の通り道に炎症や感染症が起こるとできやすい石です。細菌が侵入すると、細菌の作用でビリルビンが分解され、カルシウムと結合して結石がつくられます。
混合石とは、その名のとおりコレステロール石と色素石の両方の成分を含む結石のことをいいます。コレステロールを主成分とし、周囲に色素成分があるなど、複数の成分が混ざり合っているのが特徴です。
胆のう結石は60~80%は無症状といわれており、健康診断などの腹部エコーで偶然見つかることも珍しくありません。胆石が胆のうの中にとどまっているだけでは症状が出ないためです。
胆石が胆のうの出口に引っかかってしまうと、さまざまな症状が現れます。典型的なのは、右の肋骨の下あたりやみぞおちの激しい痛みです。背中の痛みや吐き気をともなうこともあります。痛みは突然起こり、15~30分程度続きます。これを疝痛発作(せんつうほっさ)といいます。
食事をして胆のうが収縮することで起こるため、食後に起こりやすいとされています。およそ半数の方は1年以内に再発を繰り返すことが知られています。
また、胆のう結石が総胆管へ落下した場合、身体が黄色くなる、黄疸(おうだん)という症状が現れる場合もあります。
なお、細菌が感染すると急性胆のう炎を起こし、強い痛みだけでなく発熱する場合もあります。場合によっては胆のうが破れ、生命の危機を招くこともあるため、早急に治療が必要です。

胆のう結石が疑われる場合、まずおこなわれるのが腹部超音波検査(エコー)です。超音波検査は簡便で、身体への負担が少ない検査で、診断のための第一選択とされています。
腹部超音波検査で胆のうが見えにくい場合や、より詳しい情報を得たい場合、CTやMRI検査をおこないます。胆のうや胆管の状態、石の位置、合併症の有無などを詳しく調べることができます。
無症状の胆のう結石は、血液検査で異常を認めません。胆のう炎が疑われる場合は、血液検査で炎症の有無を確認します。
胆のう結石には、手術療法や薬物療法などがあります。治療方法や対処法を解説します。
胆のう結石に対して薬物療法でできることは限られます。
コレステロール石は内服薬で胆石溶解療法をおこなう場合がありますが、大きい結石には効果が薄く、小さくても治療には半年以上の長い期間が必要です。再発も多く、根本治療とはなりにくい特徴があります。
痛みがある場合は、非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などの痛み止めを使用して痛みを緩和します。
胆のう結石を認めても、無症状の場合は経過観察をおこないます。
しかし、痛みを繰り返す場合や、胆のう炎を起こしている場合は、手術により胆のうを摘出します。
もっとも一般的なのは、腹腔鏡手術です。お腹に数ヵ所の小さな穴を開け、細いカメラや器具を使って胆のうを取り除く方法です。傷が小さく、痛みが比較的少ないため、回復が早いというメリットがあります。ただし、癒着が疑われる場合など、なんらかの理由で腹腔鏡手術を避けたほうがいい場合は、開腹しての手術をおこなう場合もあります。
胆のうを摘出しても、、日常生活には大きな影響はありません。
生活習慣の改善は、胆石が新たに作られるリスクを下げる可能性はありますが、すでにできている胆石をなくすことはできないことに注意が必要です。
胆のう結石は、肥満、過食などが影響しているので、これらを避けるような生活習慣を心がけましょう。特に、脂肪やコレステロールの多い食事を取りすぎないようにしましょう。
急激なダイエットも胆石を作りやすくなるため、避けるように注意してください。
健康診断で胆のう結石を指摘されても、多くの場合は無症状で、すぐに治療が必要になるわけではありません。しかし、痛みがあるのであれば、治療が必要になる場合もあります。
また、胆石を作るリスクが高い生活をしている場合や、胆石の原因となるような病気がないかを確認しておくことも重要です。
西宮敬愛会低侵襲治療部門COKUでは、患者様一人ひとりのリスクや症状を丁寧に確認し、適切な治療を提案します。胆のう疾患に対しても腹腔鏡下胆のう摘出術を専門的に実施しており、日本肝胆膵(かんたんすい)外科学会高度技能医や日本内視鏡外科学会技術認定医の資格を持つ経験豊富な消化器外科医が執刀を担当します。小さな傷で術後の痛みを抑え、早期回復を目指す低侵襲治療を追求していますので、健康診断で胆のう結石を指摘されたら、ぜひご相談ください。