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下痢の原因や症状が続く場合に疑われる疾患について

1. 下痢とは

下痢とは,便の中の水分が多くなり、液状またはそれに近い状態の便が出る状態をいいます。
なぜ、便の中の水分が多くなってしまうのか、それを理解するために、まずは私たちの正常な消化吸収のはたらきについてみていきましょう。

私たちの口から入った食物は、食道、胃、小腸、大腸、肛門からなる1本の消化管を通って処理されます。この過程で、食物はいくつかの消化液と混ざることによって、吸収しやすい養分へと分解され、小腸の粘膜を通して体内に吸収されます。

一方、この時に吸収されず残ったものは、大腸に送られ、そこで水分だけが吸収され、適度な硬さを持った便として排出されます。

このとき、腸の中を通る水分の量は、1日あたり、口から摂取する水分(約2リットル)+消化液(約7リットル)の合計9リットルにのぼります。その約99%(約8.9リットル)は大腸でしっかりと再吸収され、最終的に便の中に排出される水分はわずか100g程度といわれています。

通常、大腸はこれだけの水分を吸収し、便を適度な硬さに調整しており、なんらかの原因によってこの水分吸収のバランスが崩れると、下痢を発症します。

下痢を発症してから1~2 週間以内に治まるものを「急性下痢」、3 週間以上続くものを「慢性下痢」といいます。

2. 下痢の原因は3つに分けられる

下痢の原因は、主に細菌感染や食物アレルギーによるもの(分泌性下痢)、水分の吸収不良による下痢(浸透圧性下痢)、腸蠕動(ちょうぜんどう)が過剰に亢進することによる下痢(運動亢進性下痢)の3つに分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

2.1. 細菌感染や食物アレルギーによる下痢

“食中毒”や“食あたり”によって、腸粘膜がダメージを受け、腸管内の分泌液が過剰になることで起こるタイプの下痢です。これを「分泌性下痢」といいます。食中毒や食あたりのほか、食物アレルギーや内服薬の副作用として超粘膜が障害されて発症するケースもあります。

2.2. 水分の吸収不良による下痢

大腸での水分の吸収が妨げられることによって起こるタイプの下痢で、「浸透圧性下痢」といいます。腸管の中に、浸透圧(水分を取り込もうとする力)の高い物質があることで、そちらに水分が取り込まれ、便がゆるくなります。

一部の下剤(マグネシウム含有製剤など)や食品(難消化性糖質など)、大量のアルコール摂取の摂取で発生するケースなどがあります。

2.3. 腸蠕動が過剰に亢進することによる下痢

腸内の食べ物や便を肛門の方へ送り出す動き(腸蠕動運動)が過剰にはたらき、便が腸内を速く通過することで水分が十分に吸収できず、便がゆるくなるタイプの下痢です。これを「運動亢進性下痢」といいます。

過度なストレスや食べすぎ・飲みすぎ、身体の冷えなどによって、腸の運動をコントロールしている自律神経のバランスが崩れることによって起こります。

3. 下痢を引き起こす病気

下痢の原因になる病気はさまざまです。下痢を引き起こす代表的な病気について詳しく解説します。

3.1. 感染性胃腸炎

ウイルスや細菌、寄生虫などの病原菌への感染によって下痢の症状が起こります。感染経路は、汚染された食べ物を食べることによる感染(経口感染)と病原体が付いた食器や手などを介した感染(接触感染)があります。下痢だけでなく、吐き気や嘔吐、血便、悪寒、発熱などの症状をともなうこともあります。
感染性胃腸炎の原因となる代表的な病原体は、以下のようなものがあります。


■ ウイルス…ノロウイルス、ロタウイルス、腸管アデノウイルスなど
■ 細菌…腸炎ビブリオ、病原性大腸菌、サルモネラ、カンピロバクターなど
■ 寄生虫…クリプトスポリジウム、アメーバ、ランブル鞭毛虫(べんもうちゅう)など

3.2. 虚血性大腸炎

大腸に栄養を送る動脈の血流が妨げられることで、大腸の粘膜に血液が行き届かなくなり、粘膜がダメージを受け、水のような下痢、激しい腹痛、血便などの症状を生じる病気です。ダメージを受けた粘膜部位には、ただれや潰瘍(かいよう)などができ、そこから分泌液や血液などの滲出液(しんしゅつえき)がたくさん出ることで水っぽい便になったり、血が混じった便になりします。

虚血性大腸炎の原因は、動脈硬化などの血管の病気によるものや便秘や浣腸のし過ぎなど腸管へのダメージがきっかけになるもののほか、ストレスや生活習慣の乱れの要素が絡み合って発症すると考えられています。

3.3. 潰瘍性大腸炎

何らかの原因によって、大腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍ができる病気です。炎症部位から分泌液や滲出液がたくさん出ることで、下痢を引き起こします。発症の詳しい原因はわかっていませんが、免疫機能の異常やストレスなどの要因が関わっているのではないかと考えられています。根本的な治療法についても解明されていないため、厚生労働省の指定難病になっています。

3.4. 大腸がん

大腸にできる悪性腫瘍です。大腸がんの初期はほとんどが無症状ですが、病気が進行し腫瘍が大きくなると腸管が圧迫され、腹痛や排便習慣の変化(便秘や下痢)、血便などの症状があらわれます。腫瘍によって腸管が狭くなるので、便自体が細くなったり、狭い所でも通過できる下痢便が頻繁に出たりするなどの症状がみられることもあります。

3.5. 過敏性腸症候群

腸に炎症や潰瘍などの見た目の異常がないにもかかわらず、腹痛や下痢、便秘、下腹部の不快感などの慢性的な消化器症状が続く病気です。

下痢の症状が出る人の場合は、人前に出るなどのストレスや緊張により、腸の蠕動運動が過剰になるケースがよくみられます。消化器症状の原因を明らかにするために、大腸カメラ検査を行い、何の異常も見つからなかった場合には、過敏性腸症候群の可能性を疑います。

発症の原因はわかっていませんが、ストレスや生活習慣による自律神経の乱れや腸内細菌のバランスの乱れなども関与しているのではないかと考えられています。

3.6. 慢性膵炎

慢性膵炎(まんせいすいえん)とは、膵臓に慢性的な炎症が起き、膵臓が破壊されていく病気です。膵臓は、私たちの消化吸収プロセスにおいて、脂肪やたんぱく質を分解するための消化酵素を出す重要な役割を担っている臓器ですが、慢性膵炎が進行すると消化酵素が出なくなり、消化不良による下痢が起きます。慢性膵炎による下痢には、未消化の脂肪やたんぱく質が混じっているため、薄黄色クリーム状で水に浮きやすく、悪臭がするといった特徴があります。

4. 下痢の症状があらわれた際の対処法

下痢の症状があらわれるというのは、腸の中に何かしらの異常が起きているサインです。

便や変化を注意深く観察しながら、無理をせず過ごすようにしましょう。下痢の症状があらわれた際の対処法についてみていきましょう。

4.1.このようなときはすぐに受診を

下痢の中には、1~2日で自然に治るものもある一方で、すぐに受診が必要なものもあります。

以下のような場合は、無理をせず医療機関を受診しましょう。


■ 経験したことのような激しい下痢
■ 激しい腹痛がある
■ 強い吐き気や嘔吐、悪寒、発熱などをともなっている
■ 便に血が混じっているまたは黒い便(タール便)が出る
■ 状態が悪化している
■ 口が異常に渇く、尿量が減るなど、脱水症状がある
■ 一緒に食事をした人も同じ症状を発症した
■ 1週間以上下痢が続いている など

受診の際は、次の内容を医師に伝えることで正確な診断に役立ちます。


■ いつから下痢がはじまったか
■ 下痢の回数
■ 下痢以外の症状
■ 思い当たる原因(外食や生ものを食べたなど)
■ 家庭や学校など周囲に同じような症状の人がいるか
■ 便の形状、におい など


下痢便の色や形状が特徴的(赤い、黒い、白いなど)な場合は、スマートフォンなどで便の写真を撮って記録しておくと診断に役立ちます。

4.2. 胃腸に負担のかからない食事をする

下痢症状が軽く、様子を見る場合は、次のような消化の良い炭水化物を中心に、なるべくやわらかく調理して、少しずつ食べるようにしましょう。


■ 消化の良いもの
  ■ おかゆ
  ■ 重湯
  ■ よく煮込んだうどん
  ■ 卵がゆなど

消化機能が回復するまでは、極力胃腸に負担のかかる次のような食べ物は避けるようにします。


■ 胃腸に負担をかけるもの
  ■ 脂質の多い肉や魚
  ■ 重湯
  ■ 食物繊維が多い、玄米、生野菜、海藻

■ 胃腸を刺激してしまうもの
  ■ 香辛料
  ■ 重湯
  ■ 濃い味付けのもの
  ■ 酸味のあるフルーツ類
  ■ アルコール
  ■ コーヒー

4.3. 水分・電解質を摂取する

下痢が続くと、身体から大量の水分とともに、電解質 (ナトリウム、カリウムなどの体組成成分)も失うため、脱水症状や電解質異常という状態に陥り、のどが激しく渇いて血圧低下やふらつきなどの症状が出ます。下痢症状のあるときは、失われた水分と電解質を同時に摂取して、これらの症状を予防することが大切です。電解質は、野菜や魚介類、肉類などにも豊富に含まれていますが、下痢の時は、電解質の入ったスポーツ飲料やイオン飲料、経口補水液などを飲むことで、胃腸に負担をかけずに効率よく補給することができます。

4.4. 食あたりには下痢止め薬を使用しない

市販の下痢止め薬は、細菌感染やウイルス感染、食物アレルギーによる下痢症状には使用してはいけません。

下痢止め薬で下痢を止めてしまうと、有害な病原体を身体の外に排出しようとするはたらきを妨げ、かえって状態を悪化させてしまう恐れがあります。感染性胃腸炎や食品アレルギーが疑われる場合には、自己判断での下痢止めの使用は避け、医師の診断や治療を受けましょう。

5. 下痢の原因を調べる検査

緊急性のある下痢症状があるときや、下痢が続いているときには、病院で検査をおこない、原因を調べます。ここでは下痢の原因を調べる検査について詳しく解説します。

5.1. 血液検査・便潜血検査

血液検査や便潜血検査はさまざまな病気による身体への影響を調べることができます。まず腕から血液を採取し、細菌・ウイルス感染やがんなどによる炎症所見がないかどうか調べます。同時に、便潜血検査といって、便の中に血液が混じっていないかを調べます。便潜血検査が陽性の場合は、小腸や大腸などからの出血の可能性があるため、さらなる精密検査で原因を特定することになります。

5.2. 腹部エコー検査

超音波を使って身体の外から臓器の様子を観察する検査です。慢性的に下痢症状が続いている場合などは、腹部エコー検査をおこない、肝臓、胆のう、膵臓、腎臓などの臓器に腫れや炎症、ポリープなどの異常がないかを調べます。腹部エコー検査では、皮膚にジェルを塗り、探触子(プロープ)をあてることで、臓器ごとに観察していきます。検査時間は10~20分程度で痛みはまったくありません。

5.3. 大腸カメラ検査

肛門からカメラを挿入し、直腸から盲腸までの大腸全体を詳細に観察する検査です。粘膜のわずかな炎症や、潰瘍、狭窄(狭くなっている)、ポリープなど、下痢につながるような所見がないかをカメラでリアルタイムに観察します。大腸カメラ検査は、下痢の原因を見つけるだけでなく、下部消化器のあらゆる病気の早期発見に有効です。たとえば、がん化するリスクのあるポリープをその場で切除したり、がんが疑われる部位を採取し、精密検査へ回して正確な診断につなげたりすることができます。

西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、富士フィルム社製のELUXEO 8000システムを導入し、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医の資格を持つ医師が正確かつ迅速に大腸カメラ検査を実施します。検査時には鎮静剤を併用し、うとうとと眠ったまま検査を受けられるので、大腸カメラ検査に不安のある方でも安心して受けることができます。また、カメラ挿入時は、腸内に残りにくい炭酸ガスを使用し、検査後の「お腹の張り」「痛み」「違和感」などの苦痛も最小限に抑えています。

6. 下痢の治療方法

下痢の治療方法は原因によって異なります。

まず、感染性胃腸炎では、ほとんどの場合が対処療法で軽快することから、経口補水液の補給で脱水症状を防いだり、すでに脱水が見られる場合は点滴治療をおこなったりします。吐き気や発熱がひどい場合は、吐き気止めや解熱剤を使用することもあります。

過敏性腸症候群に関しては、対人ストレスなど原因がはっきりしているときは、できるだけストレスを軽減するなどして発症機会を減らす努力をします。原因が分からない場合や症状が強い場合には、医師の判断で腸の運動を整える薬や整腸剤(プロバイオティクス)などによる薬対処療法で回復を待ちます。

虚血性大腸炎の場合は、症状が強い場合は入院して絶食、点滴で改善を待てばよくなるケースが多いです。慢性膵炎については消化酵素を内服薬で補う治療を行います。アルコール性の慢性膵炎であれば禁酒が必須です。下痢の原因が大腸癌であった場合は腫瘍の外科切除やステント挿入などの専門的な治療が必要です。潰瘍性大腸炎に関しては完治できる内科的治療は確立されていませんが、腸の炎症を抑える薬物などを使って症状をコントロールすることになります。

いずれのケースにおいても、下痢症状があるときには、水分・電解質補給を心がける、胃腸に負担のかからない食事内容にするなどして、回復を促しましょう。

7. まとめ

一口に下痢といっても、症状の出方や原因はさまざまです。下痢の中には、よくある感染性胃腸炎のように1~2日で良くなるものもあれば、背後に大きな病気が隠れているものもあります。下痢の原因を突き止め、適切な治療を受けるためにも、下痢症状が続いているときや、下痢のほかに気になる症状をともなうときは、専門医に相談しましょう。

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