便秘と下痢を繰り返す症状に悩まされていませんか?「そのうち治るだろう」と放置してしまいがちですが、長引く場合は注意が必要です。長期にわたり便秘と下痢を繰り返すときは、生活習慣によるものから深刻な病気まで、さまざまな原因が隠れていることがあります。症状を放置することで、体に悪影響を及ぼすリスクもあるため、正しい知識を身につけることが大切です。
今回は、なぜ便秘と下痢を繰り返すのか、原因や病気について詳しく解説します。また、医療機関を受診すべきタイミングや、症状を予防・改善するための具体的な対処法も紹介するので、つらい症状から解放されましょう。
便秘と下痢を繰り返している状況を放置すると、以下のような健康問題が生じる可能性があります。
便秘と下痢を繰り返すことにより、体内の水分と電解質のバランスが乱れる
腸が正常に働かず、栄養素の吸収が妨げられる
腸が炎症を起こして出血するようになると、鉄分が失われることで発症する
症状が長引くことで、不安感や抑うつ状態に陥ることがある
症状が続くことで、トイレや食事に気を遣い、外出が制限されることがある
便秘と下痢を一時的に繰り返すときは、ストレスや食生活が引き金となることが多くみられます。長期にわたり繰り返すときは、腸の病気が隠れている可能性があります。便秘や下痢の症状のほかに、腹痛・血便・体重減少などの症状をともなうときは特に注意が必要です。
便秘と下痢を繰り返すときは、引き金となるものがさまざまあります。考えられる主な原因と病気を解説しましょう。
過敏性腸症候群(IBS)は、腸に炎症や病気がないにもかかわらず、直近3ヵ月以上にわたり、便秘と下痢の症状を繰り返す病気です。便秘と下痢を繰り返す症状のほかに、腹痛・お腹の張りをともなうことがあります。過敏性腸症候群(IBS)は、便の状態により下痢型・便秘型・混合型・分類不能型に分けられます。
大腸がんは、大腸(結腸・直腸・肛門)に生じるがんで、日本人はS状結腸と直腸に発生しやすいことが報告されています。早期のうちは無症状で経過することが多いですが、がん組織が大きくなってくると、腸の働きに影響を及ぼし、便秘と下痢を繰り返すことがあります
。症状が進行してくると、便秘と下痢を繰り返す症状のほかに、血便や粘液便が出る・便が細くなる・残便感があるなどの症状も現れます。
特に40歳以上で便秘と下痢を繰り返す症状がある場合は、大腸がんの可能性を除外するために大腸内視鏡検査(大腸カメラ)による精密検査が必要です。大腸がんは、大腸内視鏡カメラ検査と生検で確定診断をおこないます。早期発見により完治が期待できるため、症状がある場合は迷わず医療機関を受診することが重要です。
便秘症は、本来体の外へ排出される便が十分な量かつ快適に排出できない状態を指します。
便秘で貯留した硬便が排泄されたのち、下痢が続き、改善すると再度便秘になるのを繰り返している方が見受けられます。また、治療のために刺激性下剤を服用すると、体質によっては薬の作用が強く現れて下痢を起こすことがあります。便秘症状で下剤を服用するたびに下痢を起こすため、症状を繰り返しているケースがあります。
便秘症が進行して重症化すると、直腸に非常に硬い便が詰まる状態の「便塞栓(べんそくせん)」を引き起こすことがあります。便塞栓があると、やわらかい便が便塞栓の間をすり抜けて排出されるようになるため、便秘と下痢を繰り返しているように見えることがあるのです。
病気以外に、ストレスや生活習慣の乱れがきっかけとなり、下痢と便秘を繰り返すことがあります。ストレスがかかると神経が緊張し、神経伝達物質のセロトニンが過剰に分泌されます。セロトニンの分泌により、腸の運動が過度になったり、腸がけいれんを起こして運動しにくくなったりして、便秘と下痢を繰り返すのです。
生活習慣が乱れると、自律神経(交感神経・副交感神経)のバランスが悪化します。自律神経は、腸の運動や食べ物の消化にかかわっており、交感神経の作用が過剰になると腸の動きが低下して便秘を起こし、副交感神経の作用が過剰になると腸のぜん動運動が促進しすぎて下痢を起こします。
便秘や下痢を繰り返していて、症状が長引く・ほかの症状もともなうなどがある場合は、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。どの診療科を受診するか迷った場合は、消化器科への受診をおすすめします。個人差はありますが、病院へ行く目安は以下のとおりです。
便秘と下痢を繰り返さないために、日頃のセルフケアも大切です。セルフケアでできることは、大きく分けると食事・生活習慣の見直しとストレスをためない工夫に分けられます。それぞれ具体的な方法について解説しましょう。
食事と生活習慣で取り組める具体例を3つのポイントに分けて紹介します。
食事は、消化・吸収など腸の働きに直接関係します。食事の内容や摂り方について見直して、腸に負担のかからない生活を心がけると良いです。食事は1日3食、規則正しく摂るようにします。一汁三菜のバランスの良い食事を摂るようにしましょう。胃腸で消化する際に、負担が軽くなるようによく噛んで食べると良いです。消化に時間がかかったり、胃腸を過度に動かしたりするような、お腹に負担のかかる以下の食材を控えましょう。
プロバイオティクスを含む食品を食事に取り入れると、腸内環境が整って便秘や下痢を起こしにくくなります。プロバイオティクスとは、十分な量を摂取すると健康に良い効果を与える微生物のことで、乳酸菌・ビフィズス菌・納豆菌・麹菌などがあります。
それぞれ多く含む食品は以下のとおりです。
乳酸菌を多く含む食品 | ヨーグルト、チーズ、ぬか漬け、キムチ、みそ、しょうゆ |
ビフィズス菌を多く含む食品 | ヨーグルト、みそ、漬物 |
納豆菌を多く含む食品 | 納豆 |
麹菌を多く含む食品 | みそ、しょうゆ、塩麹、漬物、かつお節、甘酒 |
生活習慣が乱れると、腸の働きをコントロールする役割を持つ自律神経や神経伝達物質の分泌が乱れてしまいます。生活習慣を改善することで、自律神経や神経伝達物質の分泌を整えて、腸が正常に働くようにしましょう。自律神経のバランスが乱れないように、起床・就寝時間はできるだけ一定になるように心がけます。脳や体を休めることも、自律神経が正しく働くことにつながるため、十分な睡眠時間をとりましょう。運動不足になると、腸のぜん動運動が不十分となり、便秘しがちになります。ウォーキングやストレッチなど、毎日手軽にできる運動を取り入れると良いでしょう。
ストレスがかかると、自律神経やホルモンのバランスが崩れることが分かっています。自律神経やホルモンは腸の働きに影響を及ぼすため、ストレスをためないことが大切です。ストレスの解消方法を3つ紹介しましょう。
ストレスは、仕事や人間関係など日常生活におけるさまざまなものが原因となります。そのため、毎日ちょっとした時間で気分転換をするように心がけましょう。手軽におこなえるリフレッシュ方法は以下のものがあります。
時間にゆとりがあるときは、以下のような趣味を楽しむことをおすすめします。仕事と休日で、生活にメリハリをつけると良いです。
家族・友人・同僚など、他者に話を聞いてもらうと、気持ちの整理がつきストレス解消になります。気心の知れた人と一緒に過ごすだけでも、心が休まるでしょう。また、ほかの人に悩みを相談すると、客観的な意見を聞くことができます。広い視野で物事を捉えられるようになり、ストレス耐性が上がるメリットもあります。
便秘と下痢を繰り返す原因は、過敏性腸症候群や大腸がん、便秘症などの病気から、ストレスや生活習慣の乱れまで多岐にわたります。症状が1ヵ月以上続く場合や血便・体重減少などをともなう場合は、深刻な病気が隠れている可能性があります。便秘と下痢を繰り返す症状を放置すると、脱水症状や栄養不良、貧血などを引き起こしたり、日常生活に大きな支障を来したりするリスクがあります。食事・生活習慣の見直しやストレス解消などのセルフケアとともに、消化器科専門医への相談が不可欠です。
西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、検査による苦痛をできるだけ抑える工夫を取り入れた内視鏡検査をおこなっています。消化器内視鏡専門医・指導医の資格を持った医師が検査・治療を担当し、土曜日の検査も可能です。便秘と下痢を繰り返す症状は放置せず、早めに専門医を受診して、健康で快適な生活を取り戻しましょう。