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医療コラム

鼠径ヘルニアに関するブログ記事一覧

2025.04.30

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターには、鼠径ヘルニアの治療や手術のため、尼崎市在住の方も多く受診されています。尼崎市から当院を受診しやすいポイントやアクセスについて詳しく解説します。

鼠径ヘルニア(脱腸)を発症すると、自然に治癒することはなく、根本的な治療には手術が必要です。放置すると症状が悪化し、重篤な状態になるおそれがあるため、気になる症状があれば、早めに医療機関へ相談することが大切です。西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、身体の負担をできる限り抑える低侵襲治療をおこなっており、病院のある西宮市以外に、尼崎市からも多くの患者さまが受診されています。この記事では尼崎市在住の方が鼠径ヘルニア手術を当院で受けていただく際のポイントや尼崎市からのアクセスなどについてご紹介いたします。

1. こんな症状はもしかして「鼠径ヘルニア」かも?

鼠径ヘルニアは、一般的に「脱腸」として知られています。足の付け根(鼠径部)の筋膜が弱くなることで、お腹の中にあるはずの腸などの臓器の一部が皮膚の下に脱出してしまう状態です。もし、次のような身体の変化や違和感に気づいたら、鼠径ヘルニアの可能性が考えられます。

  • 足の付け根の見た目の変化: 太ももの付け根あたりに、普段はない柔らかい膨らみが出現します。左右を見比べると、片側だけが膨らんでいるなど、形に違いが見られることもあります。
  • 膨らみの変化: 立ち上がったり、重い物を持ち上げるなど、お腹に力を入れたりすると膨らみが大きくなり、逆に横になったり、手で押したりすると、引っ込んだり目立たなくなります。
  • 違和感: 膨らみのある鼠径部や下腹部に、痛みや引っ張られるような違和感を覚えることがあります。お腹全体が張るような感覚をともなう場合もあります。
  • 男性特有の症状: 男性の場合、片側の陰嚢(いんのう)だけが腫れてくるケースも見られます。

2. 尼崎市から西宮敬愛会病院COKUに来られる患者さまはどれくらい?

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターには、当院のある西宮市内はもちろん、隣接する尼崎市からも多くの患者さまにご来院いただいております。なかでも、約4人に1人(約25%)は尼崎市在住の方です。また、近隣のクリニックからのご紹介も多く、専門的な診療や手術をご希望される患者さまに幅広く対応しています。

3. 尼崎市在住の方が当院を受診しやすいポイントとは?

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、尼崎市からお越しの患者さまにも安心して受診していただけるよう、サポート体制を整えております。初めての病院で不安なお気持ちに寄り添いながら、スムーズにご来院・ご相談いただけるよう努めております。ここでは、尼崎市在住の方が当院を受診しやすい理由やサポートのポイントをご紹介いたします。

3.1. 紹介状なしでの受診が可能

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、鼠径ヘルニアをはじめとする症状について、紹介状がなくても受診していただけます。「鼠径ヘルニアかわからないけれど、気になる症状がある」といった段階でもご相談可能です。また、専門的な検査や診断をご希望の方や、セカンドオピニオンにも対応しております。患者さま一人ひとりの状態やお悩みを丁寧に伺い、負担の少ない治療と、きめ細やかな医療の提供を心がけておりますので、どんな小さなことでも、まずはご相談ください。

3.2. 患者さまの負担に配慮した低侵襲治療

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、患者さまの身体的負担を軽減し、早期の社会復帰をサポートするため、低侵襲外科治療の実践に力を注いでいます。特に、鼠径ヘルニアなどの外科的良性疾患に対しては、腹腔鏡手術を中心とした治療をおこなっており、従来の開腹手術に比べて傷が小さく、回復も早いのが特徴です。

さらに当院では、腹部に1つの小さな孔を開けて手術器具を挿入する「単孔式腹腔鏡手術」も積極的に採用しています。より小さな創部で治療をおこなうことで、術後の痛みや傷跡を最小限に抑え、患者さまの生活への影響を軽減することを心がけています。

3.3. 検査と術式のこだわり

鼠径ヘルニアは、立っていると足の付け根がぽっこりと膨らみ、横になると自然に戻るのが特徴です。西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、こうした典型的な症状を見逃さないため、診察時には必ず立位で膨らみを確認し、手で押して戻るか、寝ることで戻るかを丁寧に観察しています。さらに、術前の正確な診断のために、必要に応じて腹臥位(ふくがい)のCT検査を実施しています。

診断は、外科医による鼠径部の読影に加えて、放射線科医が肝臓・胆のう・腎臓などの臓器も詳細に確認し、異常が疑われる場合は専門機関をご紹介しています。治療では、ヘルニアの種類や患者さまの全身状態・既往歴、ご希望を総合的に考慮し、適切な手術方法を選択しています。基本的には腹腔鏡手術(TEP法・TAPP法)を中心におこなっており、特にTEP法では傷口が目立ちにくい単孔式TEP法(SILS-TEP)も導入しています。ただし、全身麻酔が難しい方や、前立腺手術の既往がある方などには、鼠径部切開法をご提案する場合もあります。いずれの術式においても、消化器外科領域で豊富な経験と高度な専門資格を持つ医師が担当します。

3.4. 日帰りか短期入院か選択可能

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、鼠径ヘルニア(脱腸)の手術において、日帰りまたは短期入院による手術に対応しています。お仕事の都合やご家庭の事情などにより長期入院が難しい方にもご利用いただけるよう、日帰り手術を受けやすい体制を整備しており、日帰りの予定で、術後に入院への変更をご希望される場合にも、柔軟に対応しております。忙しい日常のなかでも無理なく治療を受けていただけるよう、患者さまのライフスタイルに合わせた選択肢を用意しています。

4. 尼崎市からのアクセス方法

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターには尼崎市の方も多く受診されています。ここでは、電車と車を利用しての当院へのアクセス方法をご紹介します。

4.1. 電車でのアクセス

≪最寄り駅≫

当院の最寄り駅は、西宮北口駅(阪急神戸線)・阪神国道駅(阪急今津線)・西宮駅(JR神戸線)の3駅です。

西宮北口駅:

西宮ガーデンズへ向かう東改札口を出て徒歩6~7分で到着します。途中の道は西宮ガーデンズの回廊で、多くが屋根のある道になっています。

阪神国道駅:

津門川に沿って11~12分ほど歩き、途中でJR神戸線の高架下をくぐります。阪神国道駅から阪急今津線で西宮北口へ移動するのも便利です。

西宮駅:

徒歩17分ほど歩きます。西宮駅から阪急バスを利用すると便利です。当院の目の前のバス停である「西宮営業所前」、もしくは「阪急西宮北口駅」で降車してください。

西宮市内線24系統 JR西宮駅→西宮営業所 約4分

西宮市内線16系統  JR西宮駅→阪急西宮北口駅 約7~8分

≪最寄り駅までのアクセス≫

・阪急神戸線をご利用の場合

武庫之荘駅や塚口駅から乗車し、西宮北口駅で降車します。

・JR神戸線をご利用の場合

尼崎駅や立花駅から乗車し、西宮駅で降車します。

・阪神電車をご利用の場合

今津駅から阪急今津線 今津駅に乗り換え、西宮北口駅、あるいは阪神国道駅で降車します。

4.2. 車でのアクセス

1.尼崎市内から国道2号線や43号線を西に進みます。

2.西宮市内に入ったら、北方向へ進み、西宮北口駅を目指します。

西宮カーデンズの南西角の高松南交差点を南に進むと、左手が当院になります。当院をご利用の方は、無料で駐車場をお使いいただけます。

5. 西宮敬愛会病院COKUに来られた尼崎市在住の方の声

西宮敬愛会病院COKUでは、患者さまに快適に来院していただけるよう、細やかな配慮を大切にしています。患者さまからは、さまざまなお声をいただいていますので、その一部をご紹介します。

  • キレイな病院です。丁寧に話を聞いてくださり、不安な気持ちにも寄り添って対応してくださいました。説明がしっかりしており、フォローが行き届いていると感じました。
    こちらの医療機関を選んでよかったと思っています。
  • 病院の受付の方がとても親切でした。
  • 先生をはじめ、スタッフの方々もとても丁寧、親切に対応していただきました。術前術後の説明もわかりやすかったです。施設も綺麗で清潔感がありました。
  • 紹介していただき、この病院でお世話になったのですが、丁寧なフォローがあり不安なく過ごせました。院内はキレイでスタッフの方々も親切で、退院後も気持ちよく通えています。

6. 鼠径ヘルニアにあるよくある質問

鼠径ヘルニアの手術を検討されている方のなかには、不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。ここでは、鼠径ヘルニア手術に関して、よく寄せられる質問をご紹介いたします。

・どのぐらいで日常生活に戻れますか?

 日常生活については、手術当日から普段通りにしていただいてかまいません。鼠径ヘルニアの手術後、手術部位の腫れや炎症が落ち着くまで約2週間かかりますので、術後2週間は腹部に負担がかかる激しい運動や長時間のスポーツは避けてください。2週間ほど経って、手術した部分の違和感がなくなれば、軽い運動から徐々に再開していただけます。

ただし、術後の回復具合には個人差があります。ご自身の判断で無理はなさらず、何か気になることやご不明な点がありましたら、診察の際に遠慮なくご質問ください。

・日帰りか入院か選べますか?
当院では日帰り手術と入院手術の両方に対応しております。術前検査で特に問題がない場合は、どちらかご希望の方法をお選びいただけます。ただし、持病のある方や術後の経過によっては、医師の判断により入院をおすすめすることがあります。日帰りをご希望された場合でも、術後の状態に応じて入院へ切り替えることも可能ですのでご安心ください。

また、手術当日はお車の運転ができませんので、お車で遠方からお越しの方には一泊の入院をおすすめしております。なお、当院では基本的に手術当日にご来院いただき手術をおこないます。そのため、朝の飲食・服薬の管理など、患者さまのご協力が必要となりますが、術前にご案内いたしますのでご安心ください。

・鼠径ヘルニアが再発することはありますか?

鼠径ヘルニア手術後、再発するケースは2〜3%とされていますが、重度の症例を除いた一般的なケースでは1%未満とも考えられています。ただし、鼠径ヘルニアを経験されている方は、重い荷物を扱う仕事をしている、慢性的に咳をしている、排便時にいきむことが多いなど、再発のリスク要因を抱えているため注意が必要です。

7. 鼠径ヘルニアかもと思ったらご相談ください!

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、鼠径ヘルニアや胆のう疾患などの外科的良性疾患に対し、腹腔鏡手術や内視鏡などを用いた低侵襲外科治療を専門的におこなっています。消化器外科領域において豊富な経験と知識を持つ医師が、先端の医療機器と高度な技術を駆使し、患者さまの負担をできる限り軽減する治療を目指しています。「足のつけ根に膨らみがある」「鼠径部につっぱり感がある」などの症状は、鼠径ヘルニアの可能性があります。鼠径ヘルニアは放置すると重症化するおそれがあるため、早期の受診と適切な治療が重要です。気になる症状がある場合は、いつでもご相談ください。

2025.04.20

鼠径ヘルニアの手術後にメッシュがずれる?鼠径ヘルニアの再発につながるメッシュのずれの原因と注意点、ずれないための対策について解説。鼠径ヘルニアの病院選び方のポイントもお伝えします。

鼠径ヘルニアという病気は、お腹の底を構成する組織である筋膜などが弱くなって一部に穴があき、そこから腸や脂肪が飛び出してしまうことで起こります。

一度鼠径ヘルニアになると、自然に治ることはなく、外科手術で筋膜にあいた穴をメッシュ(人工的な網のシート)で覆い、修復する治療が必要です。

鼠径ヘルニアで使用するメッシュは通常ずれてしまうことはありませんが、術後の過ごし方によっては、ずれてしまう可能性があります。今回は、鼠径ヘルニアの手術を受ける方のために、術後にメッシュがずれる原因とずれないための対策について解説します。

1.鼠径ヘルニアの手術ではメッシュを使用

現在、鼠径ヘルニアに対する治療法としては、鼠径部全体に合成繊維で作られたメッシュをあてがい、ヘルニアの穴とともに覆う方法が主流になっています。“メッシュ”とは、人工的な網目のシートのことです。

鼠径ヘルニアの手術の中には、「組織縫合法」といって、メッシュを使用せず、ヘルニアの穴の周辺の組織を縫い合わせて穴を閉じる方法もあります。しかし、メッシュを使う方法に比べ、術後の痛みが強いことや、再発リスクが高いことから、“メッシュを使用しない方が良い”と医師が判断した場合を除いて、現在ではあまりおこなわれていません。

衣類の穴を修繕する様子をイメージしてみてください。ある程度の大きさの穴があいてしまった場合、針と糸で周りの生地を寄せても、ひきつれたり、また穴があいたりしやすくなります。この問題を解消するために開発されたのが、穴の部分に新しいメッシュシートをパッチして、穴を修復する方法です。 81か国1014人の外科医を対象に、2023年に実施したアンケート調査では、98%の外科医がメッシュを使用した手術を実施しています。日本においても、95%以上でメッシュを使用した手術を選択しており、国内外共に、メッシュによる治療は広く普及しています。

2.鼠径ヘルニアの手術で使用するメッシュの種類

鼠径ヘルニアの手術で使用するメッシュは、主にメッシュの質量別に、Light weight mesh(軽量メッシュ:50g/m2以下)とHeavy weight mesh(標準メッシュ:70g/m2以上)の2つのタイプに大別されます。メッシュの形状や大きさは、各社メーカーによって異なり、平坦なシート型のメッシュや形状記憶型のメッシュなどのバリエーションがあります。

鼠径ヘルニアの術後の再発を抑えるためには、患者さんの状態にあったメッシュを選択することが非常に大切です。

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUでは、ひとりひとりの患者さんの状態や手術法に対応できるよう、さまざまなメッシュを用意しています。鼠径ヘルニアの手術にあたっては、最新の鼠径ヘルニアの国際ガイドラインの指針をもとに、最適なメッシュを選択します。

アプローチ方法メッシュの大分類(質量)
鼠径部切開法(Lichtenstein法)軽量メッシュ:50g/m2以下
(国際ガイドライン推奨)
腹腔鏡単孔式TEP法
(腹腔内からアプローチ)
標準メッシュ:70g/m2以上
(国際ガイドライン推奨)
TAPP法
(筋層と腹膜の間からアプローチ)

3.メッシュが破れることはある?

メッシュはポリプロピレンやポリエステルといった合成繊維でできており、これらの素材は生体適合性が高く、拒絶反応を起こしにくいため、数十年前から手術用の縫合糸などに活用されています。また、これらの素材は、体内で分解されることはなく、時間の経過とともに脆くなる心配もありません。また、メッシュの強度もしっかりしているため、手で破こうとしても簡単に破けるものではなく、術後の腹圧などでメッシュが破れることもありません。

4.手術後にメッシュがずれることはある?

鼠径ヘルニアの手術後に気を付けなくてはならないのは、メッシュがずれてしまうことです。鼠径ヘルニアの治療で使用されるメッシュは、体内に固定されて安定するまでには、手術後約1週間から1ヵ月かかります。そのため、術直後の過ごし方によっては、ごくまれにメッシュがずれてしまい、ヘルニアを再発してしまうことがあります。このような失敗を防ぐために、手術直後のメッシュの状態や、メッシュがずれる原因、メッシュがずれるリスクを減らすポイントについて知っておきましょう。

4.1 メッシュは簡単には、ずれない

メッシュを使ったヘルニア手術では、お腹の壁の中にメッシュを“留置する”イメージです。ただし、メッシュを留置するだけではなく、患者さん自身の身体が傷を治そうとする力を利用して、最終的にメッシュを固定します。

どういうことかというと、外科手術の後、私たちのからだは、傷を修復するためのしくみが活発になります。メッシュは、細かい網目状の構造をしているため、修復過程で、網目の隙間に肉芽(にくげ)が徐々に盛り上がって癒着が起こります。これにより、メッシュと繊維状の組織が一体化し、あたかも一枚の膜のようになることで、最終的に固定されます。術後にメッシュと自分の組織の癒着が順調に進み、固定された状態で安定すると、簡単に外れることはありません。

ただし、メッシュが固定されるまでは時間がかかるため、場合によっては“タッカー(ホッチキスのようなもの)”で軽く固定しておくこともあります。当院では、タッカーも吸収性の素材を使用し、患者さんへの負担を軽減しています。

また、コヴィディエン社のプログリップというメッシュは、組織と接する面に吸収性の“マイクログリップ”というマジックテープのようなザラザラした突起がついていて、一時的に固定することができます。

4.2 メッシュがずれる原因

術直後にメッシュがずれてしまう主な原因は、メッシュが完全に固定していない期間に、重い荷物を持ち上げる、腹筋運動をする、排便のために強くいきむ、などお腹に圧力がかかる動作をした場合です。

一方、手術から時間が経っていても、稀にメッシュがずれてしまうケースもあります。例えば、大きな体重変化がその原因のひとつです。メッシュは固定されていても、腹壁の筋肉の厚み自体が薄くなったり、脂肪が急激に増えたり減ったりすることで、メッシュの位置そのものが、ヘルニアの部分からずれてしまうことがあります。また慢性便秘や持続的な咳などによって、メッシュがずれることがあります。

4.3 メッシュがずれるリスクを減らすための対策

メッシュが固定されるまでは、約1週間から最長で1ヵ月程度かかることを考慮し、術直後はお腹に力がかかるような動作を避けることで、メッシュがずれるリスクを減らすことができます。西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUでは、通常術後2週間は長時間の運動や筋肉トレーニングをしないように指導しています。ただし、巨大なヘルニアの場合は少し長くお伝えしたり、逆に小さなヘルニアの場合は、症状が落ち着いた時点で、運動再開が可能とお伝えしたりすることもあります。患者さんによって、当然経過が異なりますので、運動再開時期については術後の外来で相談していきます。

その他、喘息やアレルギーなど、咳が連続する持病がある方や、慢性便秘の方は、治療をしっかりとおこない、咳や排便の際のいきみを回避することも大切です。また、メッシュが固定された後も体重管理に気を付け、極端に太ったりやせたりしないようにすることも大切です。

2025.04.10

鼠径ヘルニアという病名を聞いてピンとくる方は少ないかもしれませんが、「脱腸」という名前なら聞いたことのある方も多いと思います。この病気は、脚の付け根にポッコリとしたふくらみができるのが特徴ですが、それ以外のことはあまり知られていないのではないでしょうか。しかし、鼠径ヘルニアの手術数は虫垂炎(盲腸)や胆石よりも多く、特に男性では約3割~4割の方が一生のうち一度は鼠径ヘルニアになるといわれています。

この記事では鼠径ヘルニアの種類や症状を紹介するとともに、気になる症状がある方必見の検査や治療法についても初心者向けにポイントを絞って解説します。

1.鼠径ヘルニア(脱腸)とは?

太ももの付け根から腰骨に向かう、いわゆるビキニラインにあたる部分を鼠径部といいますが、このあたりにできるピンポン球のようなふくらみができるのが「鼠径ヘルニア」の特徴です。丸いふくらみの正体は皮膚の下に飛び出た腸などであり、俗に「脱腸」とも呼ばれます。中高年男性に多いのも大きな特徴で、実に男性の約3割~4割の方が生涯で一度は鼠径ヘルニアを経験するというデータがあるほどです。

鼠径ヘルニアは患部が股間のすぐ近くであることや、あまり痛みを感じないことなどから受診をためらう方が少なくありません。しかし、一度発症してしまうと自然に治ることのない病気であり、放っておくと内臓の壊死や腹膜炎などの合併症を引き起こして重症化する恐れがあります。

2.鼠径ヘルニアの種類

「ヘルニア」とは、臓器や体の組織などが本来あるべき場所から「脱出」している状態を指します。鼠径ヘルニアは腸などが皮膚の下に「脱出」して起こりますが、ヘルニアの位置によって3つのタイプに分類されます。

2.1. 外鼠径ヘルニア

外鼠径ヘルニアとは、からだの中心線から少し離れた、体の外側寄りの鼠径部にあらわれるヘルニアです。鼠外鼠径ヘルニアでは、鼠径管のなかを通って腸などが出てくるのが特徴で、鼠径ヘルニアでもっとも多くみられるタイプで男性の方が発症しやすい傾向があります。

2.2. 内鼠径ヘルニア

内鼠径ヘルニアは、外鼠径ヘルニアよりもからだの中心線に近い部分にあらわれます。鼠径管の中は通らずに、おなかの筋膜のほころびから腸などが飛び出てくるタイプです。主に中高年の男性に多くみられるのが特徴です。

2.3. 大腿ヘルニア

太ももの付け根にある「大腿管」という血管や神経が通る管を通って、鼠径部の下側から腸などの臓器が飛び出してしまうのが大腿ヘルニアです。出産経験のある、やせ型で中年期以降の女性はこの病気のリスクが高いといわれています。大腿管はもともと細いため、ヘルニアになると飛び出した腸などが締め付けられて血流障害をおこし、重症化する恐れが高くなります。

3. 鼠径ヘルニアの原因

鼠径ヘルニアの原因には先天性のものと後天的な要因によるものとがあります。先天性の鼠径ヘルニアは子どものうちに発症することが多く、性別や加齢が要因となる後天性の鼠径ヘルニアは中高年男性に発症しやすいといわれています。

子どもに多い先天的な鼠径ヘルニアは、母親の胎内にいるときに鼠径管などの管が袋状に変形してしまい、その中に内臓の一部が入り込むことで起こります。一方、中高年男性に多い後天的な鼠径ヘルニアは、もともと男性の鼠径管が弱いことに加え、加齢で筋肉や筋膜が衰えることで起こります。

鼠径ヘルニアの詳しい原因については以下の記事をご参照ください。

鼠径ヘルニアは遺伝する?遺伝の確率と発症の要因、予防方法について

4. 鼠径ヘルニアの症状

初期の鼠径ヘルニアでは、丸いふくらみのほかは無症状のことも少なくありませんが、以下のような症状があらわれる場合があります。

  • 軽い痛みや不快感
  • ふくらみ周辺の突っ張りや違和感
  • 便秘
  • 排尿障害

ヘルニアの丸いふくらみは、初期のころには横になったり手で押したりすると引っ込みますが、立っているときやおなかに力を入れたときに再びあらわれます。しかし、時間が経つにつれて手で押しても引っ込まなくなり、さらに悪化すると飛び出した腸の一部が筋肉に締め付けられて血流障害を起こす「嵌頓(かんとん)」という状態に至る恐れがあります。嵌頓は激しい痛みをともない、腹膜炎や腸の壊死などを引き起こして生命にかかわる場合もあります。

以下の記事で鼠径ヘルニアの症状について詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

鼠径ヘルニアはどんな痛みや症状が出る?

5. 鼠径ヘルニアの検査方法

鼠径ヘルニアが疑われる場合は、医師による「問診」、ふくらみの状態を目視で確認する「視診」、手で触れてふくらみの状態を調べる「触診」などの検査で診断します。ただし、視診や触診で症状が確認できない場合や、ほかの病気が疑われる場合には、超音波検査やCT検査などの画像診断をおこないます。

詳しい鼠径ヘルニアの検査や診断方法については以下の記事をご参照ください。

鼠径ヘルニア(脱腸)の検査・診断方法について解説

6. 鼠径ヘルニアの治療法は手術が原則

鼠径ヘルニアはおなかの筋肉や筋膜のほころび(ヘルニア門)から腸などが飛び出でてしまう病気であり、治療にはヘルニア門をふさぐ手術が必要です。現在は医療用のメッシュシートでヘルニア門をふさぐ手術が主流となっていますが、この手術には主に腹腔鏡(内視鏡)を用いる「腹腔鏡手術」と、ふくらみの部分を切開する「鼠径部切開法」の2種類があります。また、腹腔鏡手術には、おなかに複数の穴をあける通常の手術法と、1ヵ所だけ穴をあける最新の手術法があります。

鼠径ヘルニアの手術については以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

鼠径ヘルニアの治療方法と費用、術後の痛みなどについて

7. 鼠径ヘルニアは早めの治療が重要!

鼠径ヘルニアはおなかの筋膜が弱くなってほころびができてしまい、そこから腸などが飛び出てしまう病気です。一度できたほころびは自然に治ることはなく、手術でふさぐことが唯一の治療法です。放っておくとヘルニアが大きくなったり、嵌頓(かんとん)を起こして重症化したりすることもあるため、できるだけ早い段階で医療機関を受診することが重要です。

鼠径ヘルニアの手術には腹腔鏡手術と鼠径部切開法がありますが、鼠径部切開法は患部を切開するため、痛みや術後の回復に時間がかかるといったデメリットがあります。切開法に対して、腹腔鏡による手術は痛みが少なく術後の回復も早いため、日帰りでもおこなえることが大きなメリットです。

数多くの鼠径ヘルニア手術を手がけている西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUでは、からだの負担が少ない最新の腹腔鏡手術「SILS-TEP法」を取り入れています。通常の腹腔鏡手術では腹部に3ヵ所の穴をあける必要があるのに対して、SILS-TEP法ではおへそに小さな穴を1ヵ所あけるだけで手術をすることが可能です。

SILS-TEP法は他の手術法に比べてからだへの負担が少なく、ヘルニアの再発率も極めて低い手術法ですが、医師には高度な技術が求められます。

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUでは、高度な技術を習得した専門医が最新の腹腔鏡システムを使用して手術をおこなうことにより、患者さんに安心して治療を受けていただけます。また、患者さんのご要望に応じて、日帰りや短期入院も選択することも可能です。

鼠径ヘルニアは早めの治療がなにより重要です。鼠径部に異常を感じたら、1日も早く専門の医療機関を受診し、適切な治療を受けてください。

2025.03.10

鼠径ヘルニア(脱腸)は、初期には痛みを感じない場合があり、放置する方が少なくありません。しかし、鼠径ヘルニアが悪化すると重篤な病気を引き起こす可能性があるため、手術による根本的な治療が必要です。鼠径ヘルニアの手術を受けるためには、技術と実績を有する専門医が在籍する病院を選ぶことが推奨されます。西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターには、大阪方面からも患者さまが受診されています。この記事では、大阪在住の方が鼠径ヘルニアの治療や手術を当院で受けやすいポイントや大阪方面からのアクセスなどについてご紹介いたします。

1. 鼠径ヘルニアが疑われる症状

鼠径ヘルニアは一般的に「脱腸」と呼ばれる病気です。鼠径ヘルニアは足の付け根(鼠径部)の筋膜が弱くなり、本来ならお腹の中にあるはずの腸などの内臓や腹膜の一部が鼠径部の皮膚の下に脱出してしまう状態です。鼠径ヘルニアが疑われる症状には、次のようなものがあります。

  • 太ももの付け根にやわらかい膨らみが出て、左右の形が大きく違う。
  • 立ち上がったり、重い物を持ち上げたりすると膨らみが大きくなる。
  • 膨らみを手で押さえるとへこむ、横になると消える。
  • 鼠径部の痛みや不快感がある。
  • 陰嚢(いんのう)が片方だけ腫れてくる(男性の場合)。
  • お腹が張っている感じがする。
  • 下腹部に違和感や不快感、痛みがある。
  • 鼠径部の痛みや不快感がある。

 

2. 大阪から西宮敬愛会病院COKUに来られる患者さまの割合

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターへは当院のある西宮市や隣接する尼崎市の方が多くいらっしゃいますが、大阪以東の地域からも全体の2割ほどの患者さまが受診されています。大阪市のみならず豊中市、茨木市、門真市、堺市の方、また、奈良市や生駒市、大津市と奈良県や滋賀県の患者さまも来院されています。

 

3. 大阪在住の方が当院を受診しやすいポイント

初めての病院を受診するときは不安になるものです。特に遠方からの受診となれば、その不安は一層大きくなるかもしれません。西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、大阪にお住まいの患者さまが、できる限り安心して受診していただけるように、さまざまなサポート体制を整えています。ここでは、大阪在住の患者さまが当院を受診しやすいポイントについてご紹介します。

3.1. 紹介状がなくても受診できる

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、鼠径ヘルニアの診察や手術において、紹介状をお持ちでなくても受診していただけます。「気になる症状があるので、まずは確認してほしい」という場合やセカンドオピニオンにも対応しております。患者さま一人ひとりの状況を丁寧に把握し、きめ細やかな医療を提供できるよう努めております。

3.2. 患者さまの負担を抑えた低侵襲治療

患者さまの負担を最小限に抑え、早期の社会復帰をサポートするため、西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターは、可能な限り患者さまの身体の負担を軽減した低侵襲外科治療を追求しています。腹腔鏡手術では小さな傷口から手術器具を挿入するため、従来の開腹手術と比較して、傷跡が小さく、回復期間を短縮できます。また、腹部に一つの小さな孔を開けておこなう単孔式手術も積極的に採用しています。

3.3. 日帰りか短期入院かを選べる

鼠径ヘルニア(脱腸)の手術に関して、西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、患者さまのライフスタイルに合わせて日帰り手術または短期入院をお選びいただけます。お仕事などで多忙な方や、小さなお子さんがいらっしゃる方などは、日帰り手術を選ばれています。一方で、日帰り手術に不安を感じられる方や短期入院を希望される方もいらっしゃいます。日帰り手術を予定されていた場合でも、術後の状況によっては入院に切り替えることも可能ですので、ご遠慮なくご相談ください。

3.4. 検査と術式のこだわり

鼠径ヘルニアは、立位時に足の付け根が膨らみ、横になると引っ込むのが特徴のため、西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、診察時に必ず立位での膨らみを詳細に確認し、押すと戻るか、寝ると戻るかを注意深く観察いたします。術前の精密な診断には、腹臥位(ふくがい:うつ伏せ)でのCT検査を実施しています。高精度のCT画像により、外鼠径ヘルニアや内鼠径ヘルニアといったヘルニアの種類を正確に特定することができます。さらに、外科医による鼠径部の読影に加え、放射線科医が肝臓、胆のう、腎臓などの腹部臓器も詳細に確認し、何らかの疾患が疑われる場合には、適切な専門病院をご紹介いたします。

手術方法については、腹腔内に腹腔鏡を挿入しておこなう腹腔鏡手術(TAPP法・TEP法)を基本としています。TAPP法は、腹腔鏡で腹腔内から鼠径ヘルニアの穴を確認しながら鼠径ヘルニアの穴を閉鎖する方法です。TEP法は、腹腔内に入らずに、筋層と腹膜の間に腹腔鏡を挿入して、鼠径ヘルニアの穴まで到達して修復する方法で、当院では、切開(孔)が1つのみの単孔式TEP法(SILS-TEP)を中心におこなっていますが、鼠径ヘルニアの大きさやタイプによってはTAPP法でおこなうこともあります。また、全身麻酔が困難な場合や、前立腺手術の既往がある場合など、患者さまの状況によっては鼠径部を切開する鼠径部切開法をご提案することもあります。西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターでは、ヘルニアの種類や患者さまの全身状態、既往歴などを総合的に考慮したうえで、患者さまのご希望も伺いながら手術方法を選択します。その上で、消化器外科領域において豊富な経験と高度な資格を有する医師が手術に対応します。

 

4. 大阪からのアクセス方法

西宮敬愛会病院COKUには大阪からもアクセスしやすい場所に位置しており、大阪在住の方も受診されています。ここでは、電車と車を利用しての当院へのアクセスをご紹介します。

4.1. 電車でのアクセス

≪最寄り駅≫

当院の最寄り駅は、西宮北口駅(阪急神戸線)です。西宮ガーデンズへ向かう東改札口を出て徒歩6~7分で到着します。途中の道は西宮ガーデンズの回廊で、多くが屋根のある道になっています。

≪最寄り駅までのアクセス≫

大阪の中心駅である大阪駅(梅田駅)には、ほぼすべての路線が集中しています。大阪市内、東大阪市、八尾市、堺市など大阪駅より南や東にお住まいの方は、大阪駅(梅田駅)や東梅田駅に到着後、阪急神戸線に乗り換え、阪急梅田駅から西宮北口駅まで、特急で約12、急行では約15分、普通で約18分で到着します。

茨木市、摂津市、吹田市、豊中市など阪急京都線沿線にお住いの方は阪急神戸線の十三駅で乗り換え、特急では一駅で西宮北口駅にお越しいただけます。

阪急神戸線をご利用の場合、西宮北口駅は普通電車から特急電車までのすべての電車が停車します。

4.2. 車でのアクセス

≪高速道路を利用する場合≫

  1. 大阪中心部から阪神高速3号神戸線(西宮方面)に入ります。
  2. 西宮出口で降ります。
  3. 県道82号線などを利用して、当院を目指します。

≪一般道路を利用する場合≫

  1. 大阪中心部から国道2号線や43号線を西に進みます。
  2. 西宮市内に入り薬師町方面を目指します。


西宮カーデンズの南西角の高松南交差点を南に進むと、左手に当院が見えます。当院をご利用の方は、無料で駐車場をお使いいただけます。

 

5. 西宮敬愛会病院COKUに来られた大阪在住の方の声

西宮敬愛会病院COKUは、できる限り心地よく来院していただけるよう、さまざまな点に配慮しています。実際に当院をご利用いただいた方々からは、施設の雰囲気、予約の取りやすさ、そしてスタッフの対応などについて、多くのお声が寄せられています。ここでは、その一部をご紹介いたします。

  • 先生やスタッフの方々とても親切でした。病院内も綺麗で心地よく過ごすことができました。
  • 先生の説明が丁寧でわかりやすく、対応がとても親切でした。清潔で綺麗な施設で居心地が良かったです。
  • 病院は、新しく衛生的でスタッフの方々も親切でした。退院後も親身なサポートがあり、安心できました。
  • 紹介状も必要なく診療していただけるということで気軽に行くことができ、かつ完全予約制ということもあり混み合っていることもなく穏やかに過ごせました。とても丁寧で親切に対応していただきました。
  • スタッフの方々の温かいサポートに感謝しています。

 

6.鼠径ヘルニアの手術をする病院を選ぶポイント

鼠径ヘルニアの手術を受ける病院選びは、手術の結果や術後の生活の質を左右するため、実績や専門性、そしてアクセスなどを総合的に考慮して選ぶことが大切です。

特に重要なポイントとなるのは、実績と専門性です。鼠径ヘルニア手術の実績が豊富か、外科や消化器外科、麻酔科の専門医が在籍しているかなどを確認することをおすすめします。手術件数や手術方法の種類などの情報も参考にするとよいでしょう。またある程度、病院へのアクセスの良さも考慮するとよいかもしれません。

西宮敬愛会病院COKUは、消化器外科・内科領域において経験と資格を持つ医師が検査や手術を担当し、腹腔鏡手術や内視鏡治療をはじめとする先進的な治療を提供しています。電車のアクセスが良く、日帰り手術をご希望の方にも安心してご利用いただけるほか、遠方からお越しの方で日帰り手術に不安がある場合は短期入院も可能です。また、お車でお越しの場合でも、術後一泊していただくことで、翌日には運転してご帰宅いただけます。

 

7.鼠径ヘルニアかもと思ったら早めの受診が大切!

鼠径ヘルニアになっても初期に痛みを感じないと、受診をためらって放置することがあります。鼠径ヘルニアは自然に治ることはなく、通常は手術が必要です。重症化すると脱腸した腸が戻らなくなる陥頓(かんとん)を引き起こすリスクがあるため、早めの治療が重要です。病院を選ぶ際は、鼠径ヘルニア手術の実績を有する医師が在籍しており、先進的な治療環境を備えていることを確認しましょう。

西宮敬愛会病院 COKU 鼠径ヘルニアセンターは、鼠径ヘルニアや胆のう疾患など、外科的良性疾患に対し、腹腔鏡手術や内視鏡を用いて、身体の負担の少ない低侵襲外科治療をおこなっています。消化器外科領域において、多くの経験や知識を有する医師が、先端の医療機器や技術を駆使し、患者さまの負担軽減を第一に考えた治療を目指しています。「足のつけ根に違和感がある」など鼠径ヘルニアを疑う症状がある方はもちろん、セカンドオピニオンにも対応しています。気になる症状がある方は、いつでもご相談ください。

2025.02.28

太ももの付け根あたりにピンポン玉のようなふくらみができる鼠径(そけい)ヘルニア。脱腸とも呼ばれるこの病気は、一度発症すると自然治癒することはなく、治療するためには外科手術が必要です。

では、鼠径ヘルニアの症状に気付いた場合は、何科を受診すればよいのでしょうか。

今回は、鼠径ヘルニアを発症した時に受診すべき診療科や、受診すべきタイミングについて詳しく解説します。

1. そもそも鼠径ヘルニア(脱腸)とは

鼠径(そけい)ヘルニアとは、「鼠径部」と呼ばれる太ももの付け根の筋膜の一部に穴が開き、本来腹腔内にある小腸や大腸などの組織が外に飛び出してしまう病気です。別名、「脱腸」と呼ばれることもあります。

鼠径部の皮膚のすぐ下に腸の一部が飛び出してくるので、柔らかくぽっこりしたふくらみができます。ごく軽度の鼠径ヘルニアでは、痛みなどの症状がともなわないことも多く、ふくらみの部分を手で押したり、仰向けで横になったりすると、お腹の中に戻っていきます。しかし、排便やくしゃみ、重いものを持つなどの動作や長時間の立ち仕事などでお腹に圧力がかかると、再びふくらみがぽっこりと出てきます。

放置していると、だんだんふくらみが大きくなってきて、鼠径部のツッパリ感や違和感、痛みなどの症状が出たり、便の通りが悪くなることによって便秘になったりすることもあります。

一度鼠径ヘルニアになると、自然治癒することはなく、医療機関での治療が必要です。

2. 鼠径ヘルニア(脱腸)は何科を受診する?

鼠径ヘルニアは腸が飛び出してしまう病気で、根治するためには、鼠径部の筋膜に開いてしまった穴を塞ぐ外科手術が必要です。

一般外科、消化器外科を掲げている病院や総合病院、鼠径ヘルニア専門病院などの医療機関を受診しましょう。

医療機関では、鼠径ヘルニアの位置や大きさを医師が診断し、最善の手術方法を選択し、提案します。

鼠径ヘルニアの手術には、開腹しておこなうものや、腹腔鏡を使っておこなうものなどいくつかの方法があります。以前は、数日入院して手術を受けるのが一般的でしたが、近年では、医療機器や技術の進歩により、日帰りでの手術が可能なケースも増えてきています。

こどもの鼠径ヘルニアは小児科外科の領域になりますので、かかりつけの小児科や小児外科のある総合病院にご相談ください。

2.1.     医療機関の選び方のポイント

鼠径ヘルニアの治療のための病院選びでは、患者さんご自身の症状や生活状況に合った医療機関を選ぶことが大切です。

鼠径ヘルニアの治療は、一般外科または消化器外科を掲げた医療機関であれば受けることができますが、病院によって、病院形態や得意とする手技、日帰り手術への対応の可否など、違いがあり、それぞれに特色があります。

まず総合病院では、さまざまな合併症に対応できる体制が整っているため、心臓病や糖尿病などの重い持病がある患者さんの受け入れが可能という利点があります。しかし大勢の医師が所属し、毎日さまざまな病気の手術を受け入れているので、鼠径ヘルニアの手術に特化した病院と比較すると、手術経験が少ないケースもあります。また、日帰り手術に対応している施設が少なく、入院手術が中心になります。

一方、鼠径ヘルニア専門の日帰りクリニックは、鼠径ヘルニア手術の症例数が多く、内視鏡手術などの負担の少ない手術を得意としているため、日帰りを希望する患者さんや、軽症例の患者さんに適しています。ただし、術後は自宅で過ごすことになるため、術後の経過観察で不安を抱く方もおられます。また入院を必要とするような比較的大きい手術には対応できないのが大きなデメリットです。

そして当院をはじめとする消化器外科病院は、消化器領域の手術に特化しているため、症例数が豊富で、内視鏡手術から短期入院をともなう手術まで柔軟に対応することができます。当院では、入院設備も完備しているため、日帰り手術と入院手術の両方に対応しています。そのため例えば、「日帰り手術を予定していたけど、術後の状態次第でやっぱり入院したいかも」という場合でも対応可能です。

このように、鼠径ヘルニアの手術は、医療機関ごとに受け入れ態勢や選択できる治療が異なる傾向があります。できるだけ負担や不安が少なく、希望する治療が受けられるよう自分に合った医療機関を受診しましょう。

3. 鼠径ヘルニアの受診のタイミング


太ももの付け根あたりに「ピンポン玉のようなふくらみがある」「ふくらみが大きくなったり引っ込んだりする」「つっぱり感や痛みがある」などの症状に気付いたら、すぐに受診しましょう。

冒頭でもお伝えしたように、初期の鼠径ヘルニアは痛みもほとんどなく、手で押したり、仰向けになるとふくらみがおなかの中に戻ります。そのため、気になりながらも放置してしまう人が少なくありません。しかし、鼠径ヘルニアは自然治癒することはなく、完治するためには筋膜の穴を閉じる外科手術が必要です。この手術は、症状が軽いほど身体への負担が少なくなるため、早期発見・早期治療がとても重要です。

鼠径ヘルニアの治療をせずに放置していると、嵌頓(かんとん)という深刻な状態になることがあります。これは、ふくらみの部分が戻らなくなり、腸閉塞を起こすような命にかかわる状態です。嵌頓を起こすと、患部が熱を持って硬くなり、激しい痛みに襲われ、緊急手術が必要になります。できるだけ負担の少ない手術で完治できるよう、早めの受診をおすすめします。

4. まとめ

鼠径ヘルニア(脱腸)は、鼠径部の筋膜に穴が開き、腸が飛び出してしまう病気です。一度発症すると、自然治癒することはないため、外科手術で治療する必要があります。

鼠径ヘルニアの治療は、消化器外科や一般外科で受けることができます。これらの診療科を受診するにあたっては、総合病院、鼠径ヘルニア専門クリニック、消化器外科病院などの医療機関それぞれの特徴を理解し、患者さん自身が希望する治療が受けられる医療機関を選択することが大切です。近年では、軽症の鼠径ヘルニアであれば日帰りで手術できるケースも増えており、治療を開始するタイミングが早いほど、患者さんへの負担も少なく治療することができます。鼠径ヘルニアが疑われるような症状がある場合は放置せず、早めに受診し、早期に治療しましょう。

2025.02.20

40代以上の男性に発症することの多い鼠径(そけい)ヘルニア。鼠径ヘルニアは、ごく症状の軽いものであればすぐに手術をせずに経過観察をすることもありますが、悪化させないためには日常生活での制限や注意点も多く、手術でしか根治できない厄介な病気です。鼠径ヘルニアを未然に予防することはできるのでしょうか?

今回は、鼠径ヘルニアを予防するためにできることや、万が一鼠径ヘルニアを発症した場合の注意点などについて解説します。

1. 鼠径ヘルニアの特徴

鼠径(そけい)ヘルニアとは、「鼠径部」と呼ばれる太ももの付け根の筋膜の一部に穴が開き、本来腹腔内にある小腸や大腸などの組織が外に飛び出してしまう良性の病気です。40代以上の男性に比較的よくみられ、鼠径部にぽっこりとした柔らかいふくらみができます。通常、ふくらみを手で押すと、一時的にお腹の中に押し戻すことができますが、立ち仕事をしたり、お腹に入れたりするたびに、また同じところにふくらみができるという特徴があります。一度鼠径ヘルニアになると、自然にふさがることはなく、内服薬による治療もできないため、根治するには手術が必要です。ただし、鼠径ヘルニアの程度が軽い場合は、すぐに手術をせずに仕事などのスケジュールとあわせて治療時期を調整することも可能です。

 

2. 鼠径ヘルニアは予防できる?

残念ながら、鼠径ヘルニアを未然に防ぐ医学的な方法は確立されていません。

ただし、鼠径ヘルニアは、

  • 肥満の人
  • 便秘症の人
  • 前立腺肥大症の人
  • よく咳込む人
  • 立ち仕事が多い人
  • 重いものを持つことが多い人

などに起こりやすいといわれています。これらに共通するのは、おなかに力を入れる機会が多いということです。

また、喫煙習慣も鼠径ヘルニアの危険因子であるとの報告もあります。

鼠径ヘルニアは、加齢にともなっておなかの筋膜が弱くなり、おなかの圧力を支えきれなくなるなどの要因が重なって鼠径ヘルニアが起こると考えられています。

このことから、鼠径ヘルニアになりやすい要因を遠ざけることで、ある程度鼠径ヘルニアの発症リスクを減らせる可能性があります。

3. 鼠径ヘルニアを予防するためにできること

鼠径ヘルニアを予防するために、日常的に心がけたほうがよいことや習慣について具体的にみていきましょう。

3.1.     食生活を改善する

内臓脂肪が多く、肥満ぎみの人は、常にお腹に圧がかかった状態になるため、鼠径ヘルニアになりやすいといわれています。また、便秘ぎみの人も、排便時におなかに圧がかかるため鼠径ヘルニアのリスクが高まります。心当たりのある人は、普段の食習慣を見直し、肥満や便秘を解消しましょう。内臓脂肪や肥満を解消するためには、栄養バランスの取れた食事を規則正しくとることが大切です。具体的には、主食、主菜、副菜のそろった献立を基本に、野菜や果物、豆類、乳製品などを積極的に取り入れて、ビタミン、ミネラル、食物繊維が不足しないように注意しましょう。食物繊維や発酵食品を積極的に摂ると、便秘解消にも役立ちます。

食べ方にも工夫が必要です。内臓脂肪を減らすためには、食事は腹八分目にして、夜食や甘いものも控えるようにしてください。ゆっくりよく噛んで食べるように心がけると、満腹感が得られやすくなり、食べる量を無理なく減らすことができます。

3.2.     禁煙をする

喫煙習慣のある人は、たばこをやめましょう。喫煙していると、慢性的な炎症によって気道がせまくなり、呼吸のたびにお腹に余計な力が入るようになるので、鼠径ヘルニアの発症リスクが上がると考えられています。また喫煙は、鼠径ヘルニアの手術を受けた後の回復を妨げたり、術後肺炎などの感染症や心筋梗塞などの術後合併症の発症リスクを高めたりするという報告もあります。鼠径ヘルニアを未然に防ぐためにも、発症後のリスクを抑えるためにも禁煙することが大切です。

3.3.     運動量を調整する

生活の中に適度な運動習慣を取り入れましょう。運動が不足すると、肥満の原因になるだけでなく、腹壁の筋力が低下して、鼠径ヘルニアの発症や悪化につながる可能性があります。適度な運動をして、鼠径ヘルニアを引き起こす肥満や筋力低下を防ぎましょう。ただし、お腹に力を込めるような過度な筋力トレーニングをすると、腹圧が上がって、逆に鼠径ヘルニアを誘発してしまいます。過度な筋力トレーニングではなく、ウォーキングなどの有酸素運動をおこない、運動量を調整しましょう。健康をキープするための運動としては、うっすら汗をかくぐらいの強度で30分程度のウォーキングを週に3~4回を目安におこなうとよいでしょう。また日常生活では、家事や通勤、通学などでも積極的に身体を動かすように意識しましょう。

3.4.     腹圧がかかる動作を控える

腹圧がかかる動作を控えましょう。たとえば、長時間立ったままの姿勢でいる、重いものを持ち上げる、大きな咳やくしゃみをする、排便時に長時間いきむなどの動作は、お腹に力が入って鼠径ヘルニアのきっかけになります。立ちっぱなしにならないように休憩する、重いものを持つのを控えるなどして、身体への負担を減らしましょう。便秘ぎみの人は、食習慣を見直してお通じを良くするなどの工夫をし、排便時に腹圧がかかるのを防ぎましょう。咳やくしゃみを勢いよく出してしまう人は、できるだけ小さく出せるように心がけてください。ただし、日常生活で心がけていても、便秘や慢性的な咳やくしゃみが治まらない場合は、医療機関を受診し、しっかり治療することが大切です。

4.      鼠径ヘルニアが発症したら注意すべきこと

いくら気を付けていても、鼠径ヘルニアを発症してしまうリスクはあります。ここでは鼠径ヘルニアになった際に注意すべき点について紹介します。

4.1.     発症したら早期に医療機関を受診する

鼠径ヘルニアを発症したら、できるだけ早く医療機関を受診しましょう。

鼠径ヘルニアは、初期の段階ではただふくらみがあるだけですが、進行するとだんだんふくらみも大きくなり、痛みも出てくるようになります。放置していると、嵌頓(かんとん)といって、ふくらみの部分が戻らなくなり、腸閉塞を起こすような重篤な状態に陥ることもあり、こうなってしまうと緊急手術が必要になります。

4.2.     筋肉を鍛えても症状は改善されない

鼠径ヘルニアは、腸を包み支えている筋膜が弱って穴が開き、そこから腸が出てきてしまう病気であるため、症状を改善するためには、お腹の筋肉を鍛えればよいのではと思うかもしれません。しかし、鼠径ヘルニアを発症した後に筋力トレーニングを一生懸命おこなっても、筋膜を鍛えることはできず、そもそも一度筋膜に開いた穴を自力でもとに戻すこともできません。それどころか、無理に筋肉トレーニングをすると、力を入れた瞬間に腹圧がかかってしまい、かえって鼠径ヘルニアの症状を悪化させてしまいます。ヘルニアの症状を根本的に改善するためには、外科的な手術によって筋膜に開いてしまった穴をふさぐ意外に方法はありません。自己判断で症状を改善しようとせずに、できるだけ早く医師に相談するようにしましょう。

5. まとめ

鼠径ヘルニアを確実に予防する方法は確立されていないのが現状です。しかしながら、鼠径ヘルニアは40代以上の男性に多く、肥満や便秘症、前立腺肥大症の人、よく咳込む人、立ち仕事や重い荷物を持つ動作の多い人など、おなかに圧がかかる機会が多い人や喫煙習慣のある人に発症しやすいことがわかっています。したがって、鼠径ヘルニアになりやすい年齢になったら、生活習慣や普段の行動を見直し、鼠径ヘルニアの発症リスクを遠ざけるようにしましょう。ただしいくら気を付けていても、鼠径ヘルニアを発症してしまうことはあります。症状に気付いたときは、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。症状があるにも関わらず、おなかに圧のかかる生活を続けていたり、自己流の筋力トレーニングをしたりすると、鼠径ヘルニアの悪化につながります。鼠径ヘルニアは、放置していても自然治癒することはないため、早期のうちに適切な治療を受けましょう。

2025.02.10

俗に脱腸とも呼ばれる鼠径ヘルニアは、皮膚の下に腸などの内臓が飛び出してしまう病気で、便秘が原因のひとつともいわれています。なぜなら便秘は腸内の圧力を高め、排便時に腹圧がかかることで、鼠径ヘルニアのリスクを高める可能性があるからです。特に、慢性的な便秘は腹部の筋肉や組織に負担がかかり、鼠径ヘルニアが発生しやすくなるといわれています。このように、便秘と鼠径ヘルニアの関連性は非常に重要です。本記事では、鼠径ヘルニアと便秘の関係性や、鼠径ヘルニアの予防にもつながる便秘の効果的な対処方法について詳しく解説します。

1. そもそも鼠径ヘルニアとは

太ももの付け根のあたりを「鼠径部」といいますが、鼠径部の皮膚の下にある筋肉を包む膜である筋膜が弱くなって、おなかの中にある腹膜や腸の一部が袋状に飛び出してくることがあります。これが鼠径ヘルニアという病気で、俗に「脱腸」とも呼ばれます。ピンポン玉のようなふくらみが現れるのが特徴で、中高年男性に多くみられ、統計によると成人男性の3人に1人が生涯のうち一度は発症するといわれています。

多くの場合、鼠径ヘルニアは命にかかわるような重症化に至りませんが、患部の見栄えが悪いだけでなく、時として日常生活のさまたげにもなります。さらに、一度ヘルニアが起きてしまうと手術以外に治療の方法がないため、まず予防が重要だといえるでしょう。

2. 鼠径ヘルニアと便秘の関係

便秘は鼠径ヘルニアの発症や悪化に寄与する重要な要因です。便秘により排便時に過度の力を入れることで腹圧が上昇し、これが鼠径部に負担をかけます。特に慢性的な便秘は、既存の鼠径ヘルニアを悪化させるリスクを高めます。また、鼠径ヘルニアがあると排便が困難になり、便秘がさらに悪化する悪循環が生じることもあります。したがって、便秘の予防と改善は鼠径ヘルニアのリスク軽減に重要です。

3. 便秘の対処方法

鼠径ヘルニアのリスクを回避するだけでなく、健康で楽しい毎日を送るためにも、しっかりと便秘の対処法を実践しましょう。

3.1. 生活リズムを一定にする

大腸の働きは自律神経によって調節されていて、副交感神経が優位になることがスムーズな排便につながります。反対に交感神経が優位になると大腸は動きを止めて排便しにくくなります。不規則な生活リズムは自律神経のバランスを崩してしまい、便秘が起こる原因につながります。

生活リズムを一定にするための基本は、まず睡眠をしっかりとることです。就寝前のスマホや明るすぎる照明は交感神経を優位にして睡眠不足の原因となります。食事や入浴も寝る2時間前には済ませるように心がけましょう。

起床したらカーテンを開けて日の光を浴び、軽く体を動かしましょう。そして朝食をしっかりとることで体内時計がリセットされ、自律神経のバランスが整います。朝食は大腸を目覚めさせる刺激になるので、朝食後はトイレに行く習慣をつけましょう。毎日同じ時間にトイレに行くことが快適な排便習慣につながる第一歩です。

3.2. こまめにトイレに行く

トイレにこまめに行くことも、便秘の改善には重要な習慣です。したいときに我慢することが続くと、大腸に便がたまったことを脳に知らせる排便反射が弱くなってしまいます。せっかく大腸が脳へ排便のタイミングを知らせるシグナルを送っているのに、脳が反応しなくなってしまい、便秘を引き起こすきっかけになってしまいます。したいときには我慢せずこまめにトイレに行きましょう。

また、排泄は、副交感神経というリラックス状態のときに優位になる神経が関わっているため、まずはリラックスすることが大切です。そのためトイレにはリラックスできる環境を整えることも大切です。トイレのデザイン、照明や色調、換気や消臭などに気を配り、快適に過ごせるトイレにすることで、排便ストレスから解放されやすくなります。トイレが快適な空間ならこまめに行くことも苦ではなくなり、規則正しい排便習慣が身につきやすくなります。

3.3. しっかり水分を摂る

大腸の役割は小腸から送られてきた食べ物のカスや腸内細菌の死骸から水分を吸収して大便をつくることです。通常、排泄された便の成分は水分が70~80%、固形物が20~30%の割合となっていますが、便が大腸内にとどまっている時間が長いほど、便は水分を吸収されて固形物の割合が増えて硬くなります。

便が硬くなると排泄しづらくなるという悪循環におちいってしまいます。そのためしっかりと水分をとることは便秘の改善にとても重要で、便のやわらかさを維持するには、成人なら1日に1.5~2リットル以上の水分補給が目安となります。

3.4. 食生活を整える

便秘の改善には食生活を整えることがとても大切です。規則正しい食事のタイミングや栄養バランスのとれた食事内容はもちろんですが、おなかの調子を整えて大腸の働きを活発にする食物繊維や発酵食品を積極的にとりいれることが便秘の改善につながります。

食物繊維には野菜やイモ類、豆類などに多く含まれる不溶性食物繊維と、リンゴ、バナナなどのフルーツや海藻類に多い水溶性食物繊維があります。消化されない不溶性食物繊維は水分を吸って便のかさを増す働きがあり、大腸を内側から刺激して排便を促します。

水溶性食物繊維は水に溶けることでネバネバしたゲル状になります。便の中の水溶性食物繊維が便を柔らかくなめらかにすることで便を出しやすくしてくれます。不溶性と水溶性のバランスは2:1が理想的といわれており、両方を合わせた食物繊維の1日の摂取目安量は25gで、これは野菜なら350gに相当する量です。

また、酪酸(らくさん)には腸の働きを活発にする働きがあります。酪酸は大腸内の善玉菌が食物繊維を分解してつくり出すので、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を積極的にとって善玉菌を増やし、より多くの酪酸を作ることが効果的です。

3.5. 適度な運動を取り入れる

運動不足は便秘の原因となる可能性があり、特に高齢の方は運動量の低下が便秘につながりやすくなります。便秘の改善にはウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が効果的とされていますが、その理由として有酸素運動には腸内の善玉菌を増やす効果と食物繊維の効果を高める2つの働きがあることがわかっています。

腹筋運動などの筋トレも便秘改善には効果的ですが、重いものを持ち上げることは鼠径ヘルニアの引き金となる可能性があるので注意が必要です。また、おなかのマッサージも便秘の改善に効果があるとされています。マッサージのやり方や時間、回数などはさまざまですが、以下のようなやり方が文献などで紹介されています。

  • 腸の進行方向に合わせて「の」の字を書くようにもむ
  • 左右の脇腹を上下にもむ
  • 下腹を上に押し上げるようにもむ

おなかのマッサージはお風呂でバスタブにつかりながらおこなうと、お風呂の浮力による腸のリラックス効果も得られて、さらに効果的です。

3.6. ストレスをためこまない

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、脳からの指令を待つことなく独自に活動することができます。一方で、脳と腸のあいだには密接なネットワークがあり、腸の不調が精神の不安定をもたらしたり、精神的なストレスが腸の不調を引き起こしたりすることが知られています。

緊張するとおなかが痛くなったり、便意をもよおしたりすることがありますが、逆にストレスが腸の活動を低下させて便秘になるケースも多くみられます。ストレスは腸の運動だけでなく、腸内細菌の働きも低下させてしまうため、ストレスの解消は重要な便秘対処法といえるでしょう。

社会生活を送るうえでストレスはつきものですが、ストレスを感じたらなるべくその日のうちに解消して、ストレスをためこまないことが大切です。また、お通じがないことへのあせりや罪悪感がストレスとならないように、気持ちを楽にして便秘と向き合いましょう。ストレスの解消には休養と睡眠をしっかりとることが第一ですが、運動や趣味などを通じて自分なりのストレス解消法をみつけることをおすすめします。

4. まとめ

医療機関で鼠径ヘルニアの手術がおこなわれる回数は盲腸(虫垂炎)よりも多く、外科手術の中でもっとも多い病気です。鼠径ヘルニアは周囲の人たちが気付かないだけで、実は多くの方が悩んでいる身近な病気といえるでしょう。鼠径ヘルニアが起こる最大の要因は「腹圧」の高まりであり、便秘が鼠径ヘルニアのリスクを高めることは間違いありません。

一方、便秘の2大原因は腸の機能低下と精神的なストレスです。便秘になると、鼠径ヘルニアのリスクが一層高まることになるため、日ごろから便秘予防を心がけておく必要があるでしょう。便秘を改善するには、生活習慣・食生活・運動習慣の改善に加えてストレスをため込まないことです。全身の健康維持と鼠径ヘルニアの予防を兼ねて、今日から便秘の改善に取り組むことをおすすめします。

2025.02.01

鼠径ヘルニアは、一般的に脱腸とも呼ばれ、太ももの付け根(鼠径部)の腹膜の筋肉に穴が開き、腸や臓器の一部が外へ飛び出す病気です。鼠径ヘルニアの発症の要因には生まれつき、遺伝といった先天的なものと、性別や加齢、腹圧のかかりやすい体勢や動作などの後天的なものがあります。遺伝的な要因については、現在のところ確証はされていないものの、近年の研究で特定の遺伝子との関連性が示唆されています。ここでは、鼠径ヘルニアの症状について触れ、発症する主な要因や遺伝性、予防法などについて解説します。

1. 鼠径ヘルニアの症状

鼠径ヘルニアは、一般的に脱腸とも呼ばれ、太ももの付け根(鼠径部)の腹膜の筋肉に加齢などが原因で弱まって穴が開き、そこから、腹膜と一緒に腸や臓器の一部が外へ飛び出すことをいいます。

初期症状としては、鼠径部にやわらかな膨らみができ、立っているときは現れますが、指で押さえたり、横になったりすると引っ込んでしまう特徴があります。放置すると、急に硬くなったり、膨らみを押しても引っ込まなくなったりする「陥頓(かんとん)」という状態になることがあり、こうなると、緊急手術が必要になります。

鼠径ヘルニアは、腹膜の筋肉に穴が開くという構造的な問題のため、自然治癒することはなく、手術による治療となるため、早めに専門の医療機関を受診することが大切です。

2. 鼠径ヘルニアが発症する主な要因

鼠径ヘルニアの発症には、先天的な要因と後天的な要因があります。先天的な要因の場合、生まれたときからある、腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき:腹膜が袋状にのびてできた出っ張り)により、乳児期から発症します。後天的な要因の場合、加齢によって腹部の筋肉が弱くなることや慢性的に腹圧のかかる動作などにより発症します。

2.1. 先天的な要因

小児の鼠径ヘルニアの原因は先天的な体の構造が関係しています。鼠径部にはお腹と外陰部を結ぶ管が通っており、これを「鼠径菅」といいます。胎児期において、男児の場合、はじめはお腹の中にある精巣が鼠径管を通って陰嚢(いんのう)へと移動します。この過程で、お腹の内側を覆う腹膜の一部が引き込まれ、袋状の構造(腹膜鞘状突起)が形成されます。

一方、女児の場合、鼠径菅を通るのは、子宮円索(しきゅうえんさく)という、子宮を支える靭帯です。この過程で腹膜の一部が大陰唇に向かって伸びることがあり、これを「ヌック菅」と呼びます。

通常、腹膜鞘状突起(ヌック菅)は、出生時に自然と閉鎖しますが、閉じずに残っていると、腹圧がかかった際に、その袋(ヘルニア嚢)の中に腸や臓器の一部が入り込み、鼠径ヘルニアを発症することがあるのです。

2.2. 後天的な要因

鼠径ヘルニアは先天的な理由に加えて、性別や加齢による腹部の筋力の脆弱化、肥満、腹圧のかかる体勢や動作による鼠径部への圧力などの要因で発症する場合があります。それぞれの要因について詳しくみていきます。

2.2.1.性別

鼠径ヘルニアは女性に比べて男性の方が、発症リスクが高く3人に1人が罹患するともいわれています。その理由の一つとして、男性の鼠径菅の弱さが挙げられます。男性の精巣は胎児期にはお腹の中に位置していますが、妊娠期間中にお腹から鼠径菅という筒状の通路を経由して陰嚢へ移動します。この移動にともない鼠径管が構造的に弱くなっているため鼠径ヘルニアが発症しやすくなります。

一方、女性の場合は、妊娠中や出産をきっかけに、鼠径ヘルニアを発症することがあります。なぜならば、妊娠後期は胎児が急激に大きくなり子宮が大きくなることで腹圧が高まり、出産時はいきむことで強く腹圧がかかるためです。

2.2.2.加齢
加齢は鼠径ヘルニアの主な原因の一つであり、特に40代以降の男性に多く見られます。加齢にともない、腹部の筋肉や筋膜が弱くなり、内臓を支える力が不足します。このため、内臓が腹膜の隙間から脱出しやすくなり、発症リスクが高まります。

2.2.3.腹圧のかかる体勢や動作

体内脂肪の重量が重く、腹圧が高く鼠径部に負担がかかりやすい肥満の方は、鼠径ヘルニアになりやすい傾向があります。また、便秘気味の方も排便時にいきむことで、腹圧がかかり鼠径ヘルニア発症の要因になります。その他、立ち仕事の人、咳が多い人、立ったり座ったり、重い物を持ち上げるなど、慢性的に腹圧のかかる体勢や動作も発症につながるため、注意が必要です。

3. 鼠径ヘルニアが遺伝する?

鼠径ヘルニアの遺伝性については、いくつかの報告があります。

一つは、「コラーゲンタイプIのα1遺伝子多型」との関わりです。

コラーゲンタイプIのα1遺伝子とはコラーゲンの一部を作るための設計図となる遺伝子で骨の強度や皮膚の弾力性などに関与しています。そのバリエーション(変異)である「コラーゲンタイプIのα1遺伝子多型」と鼠径ヘルニアの発症リスクとの関連性が示唆されています。

もう一つは、「アンギオテンシン変換酵素遺伝子の多型」との関連です。

アンギオテンシン変換酵素遺伝子とは血圧などの調整などに関与しています。そのバリエーション(変異)であるアンギオテンシン変換酵素遺伝子の多型は、腹部大動脈瘤(腹部大動脈が部分的に大きくなる病気)と鼠径部ヘルニアの発症に関与することが報告されています。

いずれも、現在のところ研究段階であり、他の遺伝子や生活習慣、環境要因などとの関わりも含めて、さらなる研究が期待されています。

4. 鼠径ヘルニアを予防する方法

鼠径ヘルニアを確実に予防する方法はありません。しかしながら、急激に体重が変化しないように注意して適切な体重を維持し、日常生活で重い物を持ち上げるなどの腹圧がかかる動作や状況を避けることによって、予防できる可能性があります。

また、慢性咳嗽(まんせいがいそう:8週間以上、せきが続く)の症状や便秘による排便時のいきみ、尿閉(にょうへい:尿がまったく出ない状態)による排尿困難などで、慢性的に腹圧がかかりやすくなります。鼠径ヘルニアを発症させたないためにも、早めに治療をすることが大切です。

5. まとめ

鼠径ヘルニアは40代以上の男性に多く、加齢による腹部の筋力の低下や腹圧をかけやすい体勢や動作などが要因になって発症する傾向があります。男性ばかりでなく、女性も妊娠や出産などをきっかけに発症することがある病気です。遺伝性については明確に証明されてはいませんが、いくつかの研究で特定の遺伝子との関連性が示唆されています。

鼠径ヘルニアは筋膜に穴があく病気のため自然治癒することはなく、根本的な治療は手術になります。患者さまの鼠径ヘルニアの種類や大きさなどのよって、リスクは異なります。また、放置すると、膨らみが大きくなって治療が困難になったり、手で押しても戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」を引き起こしたりする可能性があるので、注意が必要です。

気になる症状があれば、できるだけ早く専門の医療機関に相談することをおすすめします。西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUでは、鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のう疾患など、外科的良性疾患に対する診療・治療を専門的におこなっています。腹腔鏡手術を中心にできる限り体への負担を抑えた低侵襲治療を心がけており、日帰り手術または短期入院を選択していただけます。消化器外科領域において、経験と資格を持つ医師が、腹腔鏡手術や内視鏡治療をはじめとする先進的な治療を提供しています。鼠径ヘルニアのことで少しでも気になることがあれば、いつでもご相談ください。

2025.01.17

鼠径(そけい)ヘルニアとは、脚の付け根にぽっこりとしたふくらみができ、そのなかに皮下脂肪や腸など臓器の一部が飛び出してしまう病気です。あまり耳なじみのない病名かもしれませんが、生涯のうちで男性がこの病気で手術を受ける割合は27~42.5%にものぼるといわれています。また、鼠径ヘルニアは発生する場所がデリケートゾーンのため、受診をためらう方も少なくありませんが、放置すると重症化する恐れがあり、早期の発見と治療が重要な病気でもあります。

ここでは鼠径ヘルニアという病気の概要、どんな痛みや症状があり、どんな症状の際に病院に行かなければならないのかをわかりやすく解説します。

1.そもそも鼠径ヘルニアってどんな病気?

両脚の付け根の部分を「鼠径部」といいますが、この部分の皮膚の下にある筋膜が弱くなって、おなかの中にある腹膜や腸の一部が袋状に飛び出してくることがあります。これが鼠径ヘルニアという病気で、俗に「脱腸」とも呼ばれます。

鼠径ヘルニアの直接の原因はおなかの筋膜が弱くなることと腹圧が高まることにあります。そのため、以下のような方は鼠径ヘルニアになるリスクが高いと考えられます。

  • 中高年男性(特に70歳前後)
  • 重いものを持ち上げる作業や立ち仕事が多い
  • 便秘や前立腺肥大がある
  • 咳がよく出る
  • 親や兄弟に鼠径ヘルニアの経験者がいる

「ヘルニア」とは内臓などの一部が、本来あるべき場所から飛び出した状態を指しており、鼠径ヘルニアとは腸など臓器の一部が鼠径部に飛び出してしまう病気を意味しています。

 

2.鼠径ヘルニアの痛み以外の症状

鼠径ヘルニアの症状が軽いうちは痛みを感じることは少なく、鼠径部に飛び出した袋状のふくらみやしこりが主な症状です。ふくらんだヘルニア部分は押し戻したり、体を横にしたりすると引っ込みますが、いきんだり、長時間立っていたりすると、再び飛び出てきます。

ヘルニアが生じることで皮膚や組織が引っ張られるため、違和感や不快感、おなかの張りなどの症状が起こることがあります。ヘルニアの袋のなかに大腸が飛び出している場合には、便の通りが悪くなるために便秘が起こることがあります。また膀胱の一部が飛び出しているときは排尿障害が起こることもあります。

飛び出した腸の一部が周囲の筋肉に締めつけられると、血流障害を起こして、強い痛みとともに便秘や嘔吐など腸閉塞の症状を引き起こすこともあります。

 

3.鼠径ヘルニアの痛み

鼠径ヘルニアの痛みは、初期段階では軽い違和感や引きつるような痛みとして現れます。立っているときやお腹に力を入れたときに、鼠径部に柔らかい腫れが感じられ、指で押すと一時的に引っ込むことがあります。しかし、時間が経つにつれて腫れが硬くなり、元に戻らなくなることがあります。この段階では、痛みは通常軽度ですが、進行するにつれて強くなり、特に長時間立っているときや重い物を持ったときに痛みが増す傾向があります。具体的には、歩行時にチクチクしたり、皮膚が突っ張ったりするような感覚をともなうこともあります。さらに重度になると「人生で経験したことがないほどの激痛」と表現されることもあり、このような痛みは日常生活に大きな影響を及ぼします。

 

4.痛みが強い場合は「嵌頓」かも

ヘルニアの袋は筋肉にあいた穴やすき間から飛び出していることが多く、飛び出た腸の一部が筋肉に挟まれて元に戻らなくなることがあります。この状態を「嵌頓(かんとん)」といい、筋肉と筋肉のあいだにヘルニアの部分が「はまり込んだ」状態で、経験したことがないほどの強い痛みを感じることがあります。

嵌頓状態のヘルニアは、専門用語で「急性非還納性ヘルニア(きゅうせいひかんのうせいヘルニア)」といい、急に起こって元通りに納まらなくなったヘルニアを意味します。さらに、飛び出した腸が筋肉に締めつけられて血流障害を起こした「絞扼性ヘルニア(こうやくせいヘルニア)」という状態になると、腸に壊死が起こる可能性があります。ただちに医療機関を受診しましょう。

 

5.鼠径ヘルニアに痛み止めは効く?

鼠径ヘルニアによる痛みを和らげる方法の一つとして、痛み止めの使用が一般的に考えられるかもしれません。しかし、ヘルニアには市販の痛み止めはあまり効かないことが多いようです。仮に痛み止めで一時的に痛みを低減できたとしても、それはあくまで対処療法であり、ヘルニアの進行や重篤化するリスクを低減するものではありません。

一般的に初期の鼠径ヘルニアで痛みを感じることはほとんどなく、引きつるよう痛みや針で刺すような局所的な痛みの場合、体を横にしたり、手で押し戻したりして、ヘルニアを引っ込めると痛みは楽になることがあります。

ただし、痛みの原因が嵌頓によるものなら、飛び出た腸への血流が妨げられて虚血状態になっているか、もっと悪い場合は腸が壊死していることも考えられます。このような状態になっては痛み止めも効果はありません。すぐに手術が必要です。

鼠径部に痛み止めを使用したくなるほどの強い痛みを感じたら、根本的な解決のためにも、すぐに医療機関を受診して診断を受けてください。

 

6.鼠径部に痛みを感じたら早めの受診が大切

鼠径部にふくらみやしこり、痛みや違和感が起こる代表的な病気は鼠径ヘルニアですが、以下のような別の病気や症状の可能性もあります。

<鼠径ヘルニアと似た症状や病気の例>

・鼠径部リンパ節腫大(そけいぶリンパせつしゅだい)

鼠径部にある通常2~3ミリのリンパ節が感染などで1センチ以上に腫れる症状

・鼠径部皮下腫瘍(そけいぶひかしゅよう)、鼠径部皮下膿瘍(そけいぶひかのうよう)

鼠径部の皮膚の下にしこりが生じたり、膿がたまったりしている状態

・大伏在静脈瘤(だいふくざいじょうみゃくりゅう)

下肢静脈瘤の1種で、脚の内側にある静脈にコブのような膨らみができる病気

・ヌック管水腫(ヌックかんすいしゅ)

女性に特有のヌック管という鼠径部の管に水が溜まる病気

詳しくはこちらのコラムをご参照ください

足の付け根にしこりや痛みがある病気とは?原因や受診の目安を解説[1] 

鼠径部にしこりや痛みを感じたら、鼠径ヘルニアやほかの病気が原因かもしれません。どのような病気であれ早期に診断を受けることが、適切な治療と病気の重症化を防ぐことにつながります。鼠径部に痛みや違和感を覚えたら、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

 

まとめ

鼠径ヘルニアは外科手術の中でもっとも症例の多い病気で、虫垂炎(盲腸)よりも多くの方が治療を受けています。実は、私たちが思っているよりもずっと身近な病気であり、特に中高年世代の男性には、いつ、誰にでも起こる可能性があります。鼠径ヘルニアがどのような病気で、どのようにして起こり、どのような痛みや症状があるかを理解しておくことはとても大切です。

もしも鼠径ヘルニアを発症してしまったら、もとに戻す方法は手術以外にありません。特に中高年男性で親兄弟に鼠径ヘルニアの経験者がいる、立ち仕事や重いものを持つ仕事をしている、など鼠径ヘルニアのリスクが高い方は、「急に腹圧が高まる行動を避ける」「肥満に気をつける」「禁煙」などの予防を心がけ、気になるからだの変化を発見したら、すぐに専門の医療機関を受診してください。

少しでも早く医師の診断を受け、適切な処置を施すのが、鼠径ヘルニアを悪化させないための最も確実な唯一の方法です。

2025.01.10

鼠径部(そけいぶ)は、左右の太ももの付け根辺りに位置し、股間を構成する重要な部位です。普段はあまり意識することがないかもしれませんが、鼠径部に痛みやしこりなどの違和感がある場合、鼠径ヘルニアや鼠径部リンパ節腫大など、何らかの病気が疑われます。放置すると悪化するリスクがあるため、早めに医療機関を受診することが大切です。この記事では、鼠径部の位置や構造をわかりやすく解説するとともに、その名前の由来についても触れます。また、鼠径部に起こりやすい病気についても説明します。

1. 鼠径部(そけいぶ)とは

鼠径部(そけいぶ)とは、足の付け根にある溝の内側に位置し、股間を構成する大切な部位です。ここでは、鼠径部のより詳しい位置や構造、その名前の由来について説明します。

1.1. 鼠径部の位置・構造

鼠径部は左右の太ももの付け根の溝の内側にある三角形状の部分で、下腹部の一部を指します。お腹の下にある恥骨の左右外側にあり、股関節の前方に位置します。

鼠径部の下側には、鼠径靭帯と呼ばれる靭帯があります。この鼠径靭帯の内側寄りには、鼠径管という、腹壁の内と外をつなぐ短い管状の構造物が通っています。鼠径管は男女で役割が異なり、男性には精索(せいさく:精巣から伸びる血管や神経、精管を包んだ束)が通り、女性には子宮円索(しきゅうえんさく:子宮を固定して支える組織)などが通っています。

1.2. 鼠径部の名前の由来

鼠径部という名前に含まれる「鼠(ねずみ)」という漢字は、男性の身体の発達に関連する由来があります。男性が産まれる直前、精巣(睾丸)は腹部から陰嚢(男性の性器が収められている袋状の器官)へと移動するといわれています。この動きが、まるで鼠が移動しているようだと例えられたことから、「鼠径部」という名称になったと考えられています。

2. 鼠径部で起こる疾患

足の付け根にあたる「鼠径部」では、鼠径ヘルニアをはじめとする、様々な病気が起こり得ます。鼠径部に膨らみやしこり、痛みなどの症状がある場合、以下のような病気が疑われます。

2.1. 鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは、加齢などにより鼠径部の腹壁の筋肉が弱まり、そこから本来お腹のなかにあるはずの腹膜や腸の一部が皮下に袋状に脱出してしまう病気です。お腹に力を入れたり立っているときに、鼠径部がぽっこりと膨らみが現れますが、横になったり指で押し戻したりすると引っ込んで目立たなくなります。初期段階では痛みをほとんど感じませんが、放置すると膨らみが大きくなり、開いた穴に腸が入り込み穴の入り口で締め付けられ、指で押してもお腹に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」を引き起こすことがあります。

陥頓を起こすと強い痛みや吐き気、腹痛のほか、腸の血流が悪化して壊死する絞扼性腸閉塞(こうやくせいちょうへいそく)や腹膜炎などを発症することがあります。鼠径ヘルニアは自然治癒することはないので、根本的な治療は手術になります。手術の方法としては、穴があいた部分を人工のメッシュシートで補強するのが一般的です。

2.2. 鼠径部リンパ節腫大(そけいぶりんぱせつしゅだい)

鼠径部にあるリンパ節が腫れる症状です。通常、リンパ節は2~3ミリ程度ですが、1センチ以上に腫れることがあります。腫れたリンパ節は痛みをともなう場合もありますが、痛みを感じないケースもあります。

鼠径部のリンパ節が腫れる原因の一つが細菌の感染です。感染が原因の場合、腫れは一時的なもので、感染が治癒すれば自然に消えることがほとんどです。そのほか、膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患やがんなどの悪性疾患などが原因のことがあり、その場合は治療が必要です。

2.3. 鼠径部皮下腫瘍(そけいぶひかしゅよう)・鼠径部皮下膿瘍(そけいぶひかのうよう)

鼠径部皮下腫瘍や鼠径部皮下膿瘍は、いずれも鼠径部にしこりや腫れが生じる病気です。鼠径部皮下腫瘍は、皮膚が丸く盛り上がったり、しこりができたりしますが、通常痛みはありません。粉瘤(ふんりゅう:皮膚の下に袋状の組織に老廃物が溜まる良性の皮下腫瘍)や石灰化上皮腫(表皮が変形・変質してできる腫瘍)、脂肪腫などが見られます。

鼠径部皮下膿瘍は痛みがあり、熱を持って赤く腫れることがあります。主な原因は、化膿性汗腺炎(皮膚の毛包に炎症が起こり、膿が蓄積する病気)などの皮膚炎です。

治療法としては、腫瘍が良性の場合、手術で切除する、あるいは摘出することが一般的です。膿瘍で軽傷の場合は抗菌薬などを使用して治療します。重症の場合には、手術で患部を切除します。

2.4. ヌック(Nuck)管水腫

ヌック(Nuck)菅水腫は、女性特有の病気で、鼠径部にある「腹膜鞘状突起(ヌック管)」と呼ばれる管に液体が溜まることによって、鼠径部が膨らむ状態を指します。このヌック管は、胎児期に腹膜の一部として形成されますが、通常は出生後1年以内に自然に閉じます。しかし、何らかの理由でこの管が閉鎖されずに残存して内部に液体が溜まり、ヌック菅水腫を引き起こすことがあります。

症状としては、鼠径部にコリっとしたしこりや膨らみが現れます。この膨らみは、鼠径ヘルニアと似ていますが、膨らみを手で押しても引っ込みません。また、痛みをともなうこともあります。

ヌック菅水腫は自然に治癒することはなく、治療には手術が必要です。手術では、ヌック管を切除して液体が溜まる原因を取り除く処置がおこなわれます。

Nuck管水腫は、まれに子宮内膜症と併存することがあります。子宮内膜症とは、子宮内膜が本来あるべき子宮の内側以外に発生し発育する病気で、この場合、水腫のなかに血液が含まれることが多く痛みを伴います。治療は、手術で水腫を切除し、子宮内膜症の成分を確認する必要があります。鼠径部の子宮内膜症は、腹腔内など他の部位にも病変がある可能性があるため、婦人科での専門的な検査と治療をおすすめします。

2.5. 大伏在静脈瘤(だいふくざいじょうみゃくりゅう)

大伏在静脈瘤は「下肢静脈瘤」の一種で、太ももや足の付け根のあたりにある静脈に血液が溜まり、コブのような膨らみが生じる状態です。

この病気は、静脈内の血液が心臓へとスムーズに戻れなくなることが原因です。通常、静脈内には血液の逆流を防ぐための「弁」が備わっています。しかし、加齢による筋力の低下や長時間の立ち仕事、肥満、さらには妊娠による体への負荷などの要因によって静脈内の圧力が高まると、この弁が正常に機能しなくなり血液が逆流してしまいます。その結果、静脈が拡張してコブのように膨らみ、見た目にもはっきりと浮き出る状態になります。

大伏在静脈瘤が発生すると、太ももからふくらはぎの内側を流れる静脈がボコボコと目立つようになり、足のだるさや重さを感じたり、むくみやこむらがえりを起こしたりすることがあります。症状が悪化すると出血や潰瘍につながることがあるため、早めの治療が大切です。

軽症の場合は、弾性ストッキングと呼ばれる靴下を使用して症状の進行を抑える保存療法をおこないます。症状が進行している場合には、膨らんだ静脈を直接切除する手術や、レーザーや高周波を使用して静脈内を焼く血管内治療をおこなうことがあります。

3. まとめ

鼠径部は、鼠径靭帯やリンパ管、神経、動脈や静脈などが集まっている重要な部位です。そこに痛みや腫れなどの違和感があれば、何らかの病気を発症している可能性があります。痛みがないからといって安易に放置すると、重篤な状態につながるリスクがあるため、早めに消化器外科のある医療機関を受診することをおすすめします。

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUは、鼠径ヘルニアや胆のう疾患など、外科的良性疾患に対し、体への負担をできる限り抑える検査や治療を目指す低侵襲外科治療を専門的におこなう施設です。消化器外科・内科領域においてさまざまな経験と資格を有する医師が先進的な治療を提供しています。鼠径部の膨らみや痛み、違和感で気になることがあれば、いつでもご相談ください。

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