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鼠径部(そけいぶ)ってどこ?位置・構造や起こる病気について解説

鼠径部(そけいぶ)は、左右の太ももの付け根辺りに位置し、股間を構成する重要な部位です。普段はあまり意識することがないかもしれませんが、鼠径部に痛みやしこりなどの違和感がある場合、鼠径ヘルニアや鼠径部リンパ節腫大など、何らかの病気が疑われます。放置すると悪化するリスクがあるため、早めに医療機関を受診することが大切です。この記事では、鼠径部の位置や構造をわかりやすく解説するとともに、その名前の由来についても触れます。また、鼠径部に起こりやすい病気についても説明します。

1. 鼠径部(そけいぶ)とは

鼠径部(そけいぶ)とは、足の付け根にある溝の内側に位置し、股間を構成する大切な部位です。ここでは、鼠径部のより詳しい位置や構造、その名前の由来について説明します。

1.1. 鼠径部の位置・構造

鼠径部は左右の太ももの付け根の溝の内側にある三角形状の部分で、下腹部の一部を指します。お腹の下にある恥骨の左右外側にあり、股関節の前方に位置します。

鼠径部の下側には、鼠径靭帯と呼ばれる靭帯があります。この鼠径靭帯の内側寄りには、鼠径管という、腹壁の内と外をつなぐ短い管状の構造物が通っています。鼠径管は男女で役割が異なり、男性には精索(せいさく:精巣から伸びる血管や神経、精管を包んだ束)が通り、女性には子宮円索(しきゅうえんさく:子宮を固定して支える組織)などが通っています。

1.2. 鼠径部の名前の由来

鼠径部という名前に含まれる「鼠(ねずみ)」という漢字は、男性の身体の発達に関連する由来があります。男性が産まれる直前、精巣(睾丸)は腹部から陰嚢(男性の性器が収められている袋状の器官)へと移動するといわれています。この動きが、まるで鼠が移動しているようだと例えられたことから、「鼠径部」という名称になったと考えられています。

2. 鼠径部で起こる疾患

足の付け根にあたる「鼠径部」では、鼠径ヘルニアをはじめとする、様々な病気が起こり得ます。鼠径部に膨らみやしこり、痛みなどの症状がある場合、以下のような病気が疑われます。

2.1. 鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは、加齢などにより鼠径部の腹壁の筋肉が弱まり、そこから本来お腹のなかにあるはずの腹膜や腸の一部が皮下に袋状に脱出してしまう病気です。お腹に力を入れたり立っているときに、鼠径部がぽっこりと膨らみが現れますが、横になったり指で押し戻したりすると引っ込んで目立たなくなります。初期段階では痛みをほとんど感じませんが、放置すると膨らみが大きくなり、開いた穴に腸が入り込み穴の入り口で締め付けられ、指で押してもお腹に戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」を引き起こすことがあります。

陥頓を起こすと強い痛みや吐き気、腹痛のほか、腸の血流が悪化して壊死する絞扼性腸閉塞(こうやくせいちょうへいそく)や腹膜炎などを発症することがあります。鼠径ヘルニアは自然治癒することはないので、根本的な治療は手術になります。手術の方法としては、穴があいた部分を人工のメッシュシートで補強するのが一般的です。

2.2. 鼠径部リンパ節腫大(そけいぶりんぱせつしゅだい)

鼠径部にあるリンパ節が腫れる症状です。通常、リンパ節は2~3ミリ程度ですが、1センチ以上に腫れることがあります。腫れたリンパ節は痛みをともなう場合もありますが、痛みを感じないケースもあります。

鼠径部のリンパ節が腫れる原因の一つが細菌の感染です。感染が原因の場合、腫れは一時的なもので、感染が治癒すれば自然に消えることがほとんどです。そのほか、膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患やがんなどの悪性疾患などが原因のことがあり、その場合は治療が必要です。

2.3. 鼠径部皮下腫瘍(そけいぶひかしゅよう)・鼠径部皮下膿瘍(そけいぶひかのうよう)

鼠径部皮下腫瘍や鼠径部皮下膿瘍は、いずれも鼠径部にしこりや腫れが生じる病気です。鼠径部皮下腫瘍は、皮膚が丸く盛り上がったり、しこりができたりしますが、通常痛みはありません。粉瘤(ふんりゅう:皮膚の下に袋状の組織に老廃物が溜まる良性の皮下腫瘍)や石灰化上皮腫(表皮が変形・変質してできる腫瘍)、脂肪腫などが見られます。

鼠径部皮下膿瘍は痛みがあり、熱を持って赤く腫れることがあります。主な原因は、化膿性汗腺炎(皮膚の毛包に炎症が起こり、膿が蓄積する病気)などの皮膚炎です。

治療法としては、腫瘍が良性の場合、手術で切除する、あるいは摘出することが一般的です。膿瘍で軽傷の場合は抗菌薬などを使用して治療します。重症の場合には、手術で患部を切除します。

2.4. ヌック(Nuck)管水腫

ヌック(Nuck)菅水腫は、女性特有の病気で、鼠径部にある「腹膜鞘状突起(ヌック管)」と呼ばれる管に液体が溜まることによって、鼠径部が膨らむ状態を指します。このヌック管は、胎児期に腹膜の一部として形成されますが、通常は出生後1年以内に自然に閉じます。しかし、何らかの理由でこの管が閉鎖されずに残存して内部に液体が溜まり、ヌック菅水腫を引き起こすことがあります。

症状としては、鼠径部にコリっとしたしこりや膨らみが現れます。この膨らみは、鼠径ヘルニアと似ていますが、膨らみを手で押しても引っ込みません。また、痛みをともなうこともあります。

ヌック菅水腫は自然に治癒することはなく、治療には手術が必要です。手術では、ヌック管を切除して液体が溜まる原因を取り除く処置がおこなわれます。

Nuck管水腫は、まれに子宮内膜症と併存することがあります。子宮内膜症とは、子宮内膜が本来あるべき子宮の内側以外に発生し発育する病気で、この場合、水腫のなかに血液が含まれることが多く痛みを伴います。治療は、手術で水腫を切除し、子宮内膜症の成分を確認する必要があります。鼠径部の子宮内膜症は、腹腔内など他の部位にも病変がある可能性があるため、婦人科での専門的な検査と治療をおすすめします。

2.5. 大伏在静脈瘤(だいふくざいじょうみゃくりゅう)

大伏在静脈瘤は「下肢静脈瘤」の一種で、太ももや足の付け根のあたりにある静脈に血液が溜まり、コブのような膨らみが生じる状態です。

この病気は、静脈内の血液が心臓へとスムーズに戻れなくなることが原因です。通常、静脈内には血液の逆流を防ぐための「弁」が備わっています。しかし、加齢による筋力の低下や長時間の立ち仕事、肥満、さらには妊娠による体への負荷などの要因によって静脈内の圧力が高まると、この弁が正常に機能しなくなり血液が逆流してしまいます。その結果、静脈が拡張してコブのように膨らみ、見た目にもはっきりと浮き出る状態になります。

大伏在静脈瘤が発生すると、太ももからふくらはぎの内側を流れる静脈がボコボコと目立つようになり、足のだるさや重さを感じたり、むくみやこむらがえりを起こしたりすることがあります。症状が悪化すると出血や潰瘍につながることがあるため、早めの治療が大切です。

軽症の場合は、弾性ストッキングと呼ばれる靴下を使用して症状の進行を抑える保存療法をおこないます。症状が進行している場合には、膨らんだ静脈を直接切除する手術や、レーザーや高周波を使用して静脈内を焼く血管内治療をおこなうことがあります。

3. まとめ

鼠径部は、鼠径靭帯やリンパ管、神経、動脈や静脈などが集まっている重要な部位です。そこに痛みや腫れなどの違和感があれば、何らかの病気を発症している可能性があります。痛みがないからといって安易に放置すると、重篤な状態につながるリスクがあるため、早めに消化器外科のある医療機関を受診することをおすすめします。

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUは、鼠径ヘルニアや胆のう疾患など、外科的良性疾患に対し、体への負担をできる限り抑える検査や治療を目指す低侵襲外科治療を専門的におこなう施設です。消化器外科・内科領域においてさまざまな経験と資格を有する医師が先進的な治療を提供しています。鼠径部の膨らみや痛み、違和感で気になることがあれば、いつでもご相談ください。

この記事を監修した人

三賀森 学

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 COKU 消化器外科部長/医学博士

  • 資格:
  • 日本外科学会外科専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会専門医・指導医
  • 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医
  • 日本ヘルニア学会評議員

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