消化器内科医をしていると、非常に多くの方が「便潜血検査」でひっかかって来院されます。
「検便」と言われる場合もありますが、検便だと便の何を調べているのか(菌を調べているのか、虫卵を調べているのかなど)がわからないので、医療者の間では便潜血検査と表現します。
潜血、という言葉は、目に見えない血という意味で使います。
便の中に目に見えないような量の血液が混じっていないかを調べる検査を、便潜血検査と言います。
目で見て明らかにわかるような血液が混じっている場合は「血便」と呼んで区別します。
便潜血陽性で初めに考えるべき疾患はやはり大腸癌です。
便潜血陽性の方のうち、2-3%程度が大腸癌と診断されます。
約33-50人に1人はほっておくと命に係わるということです。
数字は小さく見えますが決して軽視するべきではありません。
また、便潜血検査を受けた方のおよそ2人に1人は大腸ポリープを指摘されます。
これも放置すると癌化のリスクがあります。
その他、痔核のこともありますし、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患のこともあります。
お尻が切れたからだと自己診断せず、必ず精密検査を受けて下さい。
病変を見つけやすく、条件によってはその場で治療も可能な大腸内視鏡検査をお勧めします。
近年、大腸癌の治療は飛躍的に進歩しています。約9割の方が内視鏡や外科的に切除可能です。
仮に転移していても、切除が可能なら転移巣・原発巣とも切除が検討されます。
化学療法も進歩していて他の癌より効きやすいです。
進行も比較的穏やかなものが多いです。
つまり、大腸癌は「闘える」癌ですので、とにかくは「大腸癌を見つける」ことが重要です。
精密検査を受けないことこそ、切除不能進行大腸癌の温床です。
1回だけ陽性の時点で、「便潜血陽性」です。扱いが変わるわけではありません。
2回とも陽性の方は、「便潜血陽性」の人の中でも病気の確率が高い人たち、というだけです。
便潜血検査は感度の高い検査ですが、9割程度です。仮に大きな大腸癌があったとしても、毎回便潜血陽性になるわけではありません。
私自身も、進行直腸癌症例で便潜血が陰性であったケースを経験しています。
お尻から指を入れると触れる大きな癌があっても、便潜血が陰性のこともあり得るということです。
当院では鎮静剤(麻酔)を用いて検査を行いますし、浸水法を用いて、丁寧に腸の走行を整えながら挿入しますので、疼痛を最小限に抑えることが可能です。
必要に応じ鎮痛剤の注射も併用できますがほとんどのケースで必要としません。
専用の透けない検査パンツを使用していますので、お尻が見えるのは内視鏡を入れる瞬間だけです。
詳しくは以下のリンクで、大腸カメラの詳しいながれと、当院の大腸内視鏡の特徴をご説明しています。
通常は総合病院に紹介になるようなサイズのポリープについても、当院で対応可能です。
文責/医療監修 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉 章紀