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鼠径ヘルニアの原因と主な症状、なりやすい人の特徴について

鼠径ヘルニアとは、足の太もものつけ根にある「鼠径部」の皮膚の下に、本来はお腹の中にあるはずの腸や脂肪組織などが飛び出す、一般的に「脱腸」と呼ばれる病気です。外見的には鼠径部がぽっこりと柔らかく膨らみます。鼠径ヘルニアの症状は様々です。一部の方は痛みをほとんど感じず、膨らみを指で押すと元に戻りますが、放置して悪化すると、重篤な状態になる可能性があるため、治療するタイミングが大切です。鼠径ヘルニアは主に40歳以上の男性に多い病気ですが、若い方から80歳以上の高齢者まで、男女問わず起こる可能性があります。この記事では鼠径ヘルニアについて、主な種類や症状、原因、そしてなりやすい人の特徴や治療法について、詳しく解説します。

1. 鼠径ヘルニアとは

鼠径ヘルニアとは、足の太もものつけ根(鼠径部)の腹壁(腹膜・筋肉、皮下脂肪、皮膚で構成されているお腹の壁)が、加齢などの原因で弱まって穴が開き、そこから、お腹の臓器を覆っている腹膜と一緒に臓器(腸や脂肪組織など)の一部が、皮膚下に飛び出してしまう病気です。
「ヘルニア」とは体の組織や臓器が正しい位置からはみ出した状態のこと。つまり、鼠径ヘルニアは、「鼠径部から本来出てはいけない臓器が出ている」ということなのです。

1.1.鼠径ヘルニアの種類と主な症状

鼠径ヘルニアの症状は様々です。一部の方は痛みを感じず、立位のときは鼠径部にぽっこりとした柔らかい膨らみが現れますが、指で押したり横になったりすると、臓器がお腹に戻って、膨らみが消失することがあります。また、引っ張られるような違和感や不快感、痛みなどの症状がある人もいます。
日常生活に支障がないからと放置する人がいますが、放置すると足のつけ根の膨らみが大きくなったり、硬くなったりすることがあります。さらに、開いた穴(ヘルニア門)に入り込んだ腸が、穴の入り口で締め付けられて、お腹の中に戻らなくなる陥頓(かんとん)が生じるリスクがあります。陥頓が起こると強く痛み、腸の血流が阻害されて、腸閉塞や壊死することもあるため大変危険です。
鼠径ヘルニアは、ヘルニアが発生する部位によって、主に「外鼠径ヘルニア」「内鼠径ヘルニア」「大腿ヘルニア」の3つに分類されます。

1.1.1. 外鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアのなかでも最も多いのが外鼠径ヘルニアです。外鼠径ヘルニアを発症すると、鼠径部のやや外側が膨れ、鼠径管(鼠径部にあるお腹の中と外をつなぐ管)を通って、内鼠径輪(鼠径菅のお腹側の入り口)から腸などが飛び出します。内鼠径輪が広がって腸などが入り込み、陰嚢(いんのう)にまで脱出することがあります。

1.1.2. 内鼠径ヘルニア

内鼠径ヘルニアは、鼠径三角(内鼠径輪より内側)と呼ばれる部位の筋膜が弱くなり、腸などが飛び出してくる病態で、鼠径部のやや内側が膨れます。加齢や生活習慣によって腸壁が弱くなることが原因のため、中高年の男性に多いのが特徴です。

1.1.3 大腿ヘルニア

内鼠径ヘルニアは、鼠径三角(内鼠径輪より内側)と呼ばれる部位の筋膜が弱くなり、腸などが飛び出してくる病態で、鼠径部のやや内側が膨れます。加齢や生活習慣によって腸壁が弱くなることが原因のため、中高年の男性に多いのが特徴です。

2.鼠径ヘルニアの原因とは?

鼠径ヘルニアを発症する原因は、先天性と後天性があります。子どもの鼠径ヘルニアのほとんどが、生まれつきの先天性です。一方、大人の場合は、生まれた後の後天的な原因によって起こります。


2.1.先天性(生まれつき)

先天性の原因は、胎児期にできた鼠径部の腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)の残存です。腹膜鞘状突起とは、腹膜の一部が鼠径部に向かって袋状に伸びた出っ張りです。多くは生まれる前に自然に閉鎖しますが、稀に開いたまま残ることがあります。そこに、腹圧がかかるなどの要因で、お腹の中の臓器の一部が入り込むことで鼠径ヘルニアを発症することがあるのです。

2.2. 後天性

後天的な原因のなかで多いのが「加齢」といわれています。加齢により腹壁が弱くなると、咳込みや排便時のいきみ、立ったり座ったりの繰り返し、重い荷物を持つなど、慢性的に腹圧がかかる動作が要因となって、鼠径ヘルニアを発症することがあります。また、体内脂肪の重量が重く、鼠径部に負担がかかりやすい肥満の人も鼠径ヘルニアになりやすいといわれています。

3. 鼠径ヘルニアになりやすい人の特徴とは?

厚生労働省が発表している第7回NDBオープンデータによると、鼠径ヘルニアは40歳以上の男性に多く、手術を受けている人は、60歳~70歳代が多いことがわかります。また、鼠径ヘルニアは、重たい物を持ち上げる仕事や立ち仕事、便秘気味、前立腺肥大症や肥満気味、慢性的に咳をするなど、腹圧がかかることが多い人は、鼠径ヘルニアになりやすいといわれています。妊婦やスポーツ選手にも多い傾向があります。

4.鼠径ヘルニアの治療方法

鼠径ヘルニアは自然に治癒することはなく、治療は原則的に手術になります。鼠径ヘルニアの手術は「鼠径部切開法」と「腹腔鏡下修復術」の2種類があり、どちらにするかは、患者さまのヘルニアの状態に応じて決定します。

4.1. 鼠径部切開法

膨らみのある鼠径部を約5cmほど切開して、鼠径ヘルニアを確認しながら手術をおこなう方法で、飛び出した腸などをお腹の中に戻し、ヘルニア門(ヘルニアの原因となる穴部分)をメッシュと呼ばれる網目状の人工膜で塞いで補強します。ヘルニア門への到達方法やメッシュをどこに敷き補強するかで術式が異なります。鼠径部切開法の場合、必ずしも全身麻酔である必要はなく、局所麻酔を使用して手術をおこなうことができます。手術後2週間は激しい運動や重い物を持つなどの腹筋に負荷がかかる動作は控える必要があります。

4.2.腹腔鏡手術

腹腔鏡手術とは、お腹に1か所の2cm程度、もしくは3カ所(腹腔鏡用・両手の鉗子用)5~10mmほどの小さな穴を開けて、そこに腹腔鏡や鉗子を挿入し、炭酸ガスでお腹の壁の隙間や腹腔内を広げて、お腹の中の様子をモニターで観察しながら手術をおこなう方法です。飛び出した腸などを元の場所へ戻し、ヘルニア門をメッシュで塞ぎます。腹腔鏡手術には、腹腔鏡を筋肉と腹膜の間に挿入するTEP法と腹腔内に挿入するTAPP法があります。鼠径部切開法よりも傷が小さく痛みが少ないため、早期に社会復帰できる利点があります。手術は全身麻酔でおこない、翌日には退院できます。退院後はデスクワークであれば、1~2日で復職できますが、激しいスポーツや腹筋に負荷がかかる仕事は1〜2週間程度避けることが推奨されています。

5.まとめ

鼠径ヘルニアは、子どもや中高年の男性がかかるイメージがありますが、男女問わず、誰もが発症する可能性がある病気です。膨らみだけで、痛みがなく日常生活に支障がないから、「放っておけば、そのうち良くなるだろう」と安易に考えるのは危険です。鼠径ヘルニアは腹壁に穴が開く病気であり、自然に穴が閉じることはなく、治療には手術が必要になります。太もものつけ根の膨らみや痛み、違和感に気づいたら、早めに鼠径ヘルニアの診察に慣れている消化器外科のある医療機関を受診することをおすすめします。

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUは、鼠径ヘルニアや胆のう疾患など、外科的良性疾患に対する低侵襲外科治療を専門的におこなう施設です。消化器外科領域においてさまざまな経験を有する医師が先進的な治療を提供することで、患者さまの負担を可能な限り少なくする治療を目指しています。鼠径ヘルニアのことで不安なことがあれば、いつでもご相談ください。

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