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鼠径ヘルニアと便秘は関係ある?便秘の対処方法も紹介

俗に脱腸とも呼ばれる鼠径ヘルニアは、皮膚の下に腸などの内臓が飛び出してしまう病気で、便秘が原因のひとつともいわれています。なぜなら便秘は腸内の圧力を高め、排便時に腹圧がかかることで、鼠径ヘルニアのリスクを高める可能性があるからです。特に、慢性的な便秘は腹部の筋肉や組織に負担がかかり、鼠径ヘルニアが発生しやすくなるといわれています。このように、便秘と鼠径ヘルニアの関連性は非常に重要です。本記事では、鼠径ヘルニアと便秘の関係性や、鼠径ヘルニアの予防にもつながる便秘の効果的な対処方法について詳しく解説します。

1. そもそも鼠径ヘルニアとは

太ももの付け根のあたりを「鼠径部」といいますが、鼠径部の皮膚の下にある筋肉を包む膜である筋膜が弱くなって、おなかの中にある腹膜や腸の一部が袋状に飛び出してくることがあります。これが鼠径ヘルニアという病気で、俗に「脱腸」とも呼ばれます。ピンポン玉のようなふくらみが現れるのが特徴で、中高年男性に多くみられ、統計によると成人男性の3人に1人が生涯のうち一度は発症するといわれています。

多くの場合、鼠径ヘルニアは命にかかわるような重症化に至りませんが、患部の見栄えが悪いだけでなく、時として日常生活のさまたげにもなります。さらに、一度ヘルニアが起きてしまうと手術以外に治療の方法がないため、まず予防が重要だといえるでしょう。

2. 鼠径ヘルニアと便秘の関係

便秘は鼠径ヘルニアの発症や悪化に寄与する重要な要因です。便秘により排便時に過度の力を入れることで腹圧が上昇し、これが鼠径部に負担をかけます。特に慢性的な便秘は、既存の鼠径ヘルニアを悪化させるリスクを高めます。また、鼠径ヘルニアがあると排便が困難になり、便秘がさらに悪化する悪循環が生じることもあります。したがって、便秘の予防と改善は鼠径ヘルニアのリスク軽減に重要です。

3. 便秘の対処方法

鼠径ヘルニアのリスクを回避するだけでなく、健康で楽しい毎日を送るためにも、しっかりと便秘の対処法を実践しましょう。

3.1. 生活リズムを一定にする

大腸の働きは自律神経によって調節されていて、副交感神経が優位になることがスムーズな排便につながります。反対に交感神経が優位になると大腸は動きを止めて排便しにくくなります。不規則な生活リズムは自律神経のバランスを崩してしまい、便秘が起こる原因につながります。

生活リズムを一定にするための基本は、まず睡眠をしっかりとることです。就寝前のスマホや明るすぎる照明は交感神経を優位にして睡眠不足の原因となります。食事や入浴も寝る2時間前には済ませるように心がけましょう。

起床したらカーテンを開けて日の光を浴び、軽く体を動かしましょう。そして朝食をしっかりとることで体内時計がリセットされ、自律神経のバランスが整います。朝食は大腸を目覚めさせる刺激になるので、朝食後はトイレに行く習慣をつけましょう。毎日同じ時間にトイレに行くことが快適な排便習慣につながる第一歩です。

3.2. こまめにトイレに行く

トイレにこまめに行くことも、便秘の改善には重要な習慣です。したいときに我慢することが続くと、大腸に便がたまったことを脳に知らせる排便反射が弱くなってしまいます。せっかく大腸が脳へ排便のタイミングを知らせるシグナルを送っているのに、脳が反応しなくなってしまい、便秘を引き起こすきっかけになってしまいます。したいときには我慢せずこまめにトイレに行きましょう。

また、排泄は、副交感神経というリラックス状態のときに優位になる神経が関わっているため、まずはリラックスすることが大切です。そのためトイレにはリラックスできる環境を整えることも大切です。トイレのデザイン、照明や色調、換気や消臭などに気を配り、快適に過ごせるトイレにすることで、排便ストレスから解放されやすくなります。トイレが快適な空間ならこまめに行くことも苦ではなくなり、規則正しい排便習慣が身につきやすくなります。

3.3. しっかり水分を摂る

大腸の役割は小腸から送られてきた食べ物のカスや腸内細菌の死骸から水分を吸収して大便をつくることです。通常、排泄された便の成分は水分が70~80%、固形物が20~30%の割合となっていますが、便が大腸内にとどまっている時間が長いほど、便は水分を吸収されて固形物の割合が増えて硬くなります。

便が硬くなると排泄しづらくなるという悪循環におちいってしまいます。そのためしっかりと水分をとることは便秘の改善にとても重要で、便のやわらかさを維持するには、成人なら1日に1.5~2リットル以上の水分補給が目安となります。

3.4. 食生活を整える

便秘の改善には食生活を整えることがとても大切です。規則正しい食事のタイミングや栄養バランスのとれた食事内容はもちろんですが、おなかの調子を整えて大腸の働きを活発にする食物繊維や発酵食品を積極的にとりいれることが便秘の改善につながります。

食物繊維には野菜やイモ類、豆類などに多く含まれる不溶性食物繊維と、リンゴ、バナナなどのフルーツや海藻類に多い水溶性食物繊維があります。消化されない不溶性食物繊維は水分を吸って便のかさを増す働きがあり、大腸を内側から刺激して排便を促します。

水溶性食物繊維は水に溶けることでネバネバしたゲル状になります。便の中の水溶性食物繊維が便を柔らかくなめらかにすることで便を出しやすくしてくれます。不溶性と水溶性のバランスは2:1が理想的といわれており、両方を合わせた食物繊維の1日の摂取目安量は25gで、これは野菜なら350gに相当する量です。

また、酪酸(らくさん)には腸の働きを活発にする働きがあります。酪酸は大腸内の善玉菌が食物繊維を分解してつくり出すので、ヨーグルトや納豆などの発酵食品を積極的にとって善玉菌を増やし、より多くの酪酸を作ることが効果的です。

3.5. 適度な運動を取り入れる

運動不足は便秘の原因となる可能性があり、特に高齢の方は運動量の低下が便秘につながりやすくなります。便秘の改善にはウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が効果的とされていますが、その理由として有酸素運動には腸内の善玉菌を増やす効果と食物繊維の効果を高める2つの働きがあることがわかっています。

腹筋運動などの筋トレも便秘改善には効果的ですが、重いものを持ち上げることは鼠径ヘルニアの引き金となる可能性があるので注意が必要です。また、おなかのマッサージも便秘の改善に効果があるとされています。マッサージのやり方や時間、回数などはさまざまですが、以下のようなやり方が文献などで紹介されています。

  • 腸の進行方向に合わせて「の」の字を書くようにもむ
  • 左右の脇腹を上下にもむ
  • 下腹を上に押し上げるようにもむ

おなかのマッサージはお風呂でバスタブにつかりながらおこなうと、お風呂の浮力による腸のリラックス効果も得られて、さらに効果的です。

3.6. ストレスをためこまない

腸は「第二の脳」とも呼ばれ、脳からの指令を待つことなく独自に活動することができます。一方で、脳と腸のあいだには密接なネットワークがあり、腸の不調が精神の不安定をもたらしたり、精神的なストレスが腸の不調を引き起こしたりすることが知られています。

緊張するとおなかが痛くなったり、便意をもよおしたりすることがありますが、逆にストレスが腸の活動を低下させて便秘になるケースも多くみられます。ストレスは腸の運動だけでなく、腸内細菌の働きも低下させてしまうため、ストレスの解消は重要な便秘対処法といえるでしょう。

社会生活を送るうえでストレスはつきものですが、ストレスを感じたらなるべくその日のうちに解消して、ストレスをためこまないことが大切です。また、お通じがないことへのあせりや罪悪感がストレスとならないように、気持ちを楽にして便秘と向き合いましょう。ストレスの解消には休養と睡眠をしっかりとることが第一ですが、運動や趣味などを通じて自分なりのストレス解消法をみつけることをおすすめします。

4. まとめ

医療機関で鼠径ヘルニアの手術がおこなわれる回数は盲腸(虫垂炎)よりも多く、外科手術の中でもっとも多い病気です。鼠径ヘルニアは周囲の人たちが気付かないだけで、実は多くの方が悩んでいる身近な病気といえるでしょう。鼠径ヘルニアが起こる最大の要因は「腹圧」の高まりであり、便秘が鼠径ヘルニアのリスクを高めることは間違いありません。

一方、便秘の2大原因は腸の機能低下と精神的なストレスです。便秘になると、鼠径ヘルニアのリスクが一層高まることになるため、日ごろから便秘予防を心がけておく必要があるでしょう。便秘を改善するには、生活習慣・食生活・運動習慣の改善に加えてストレスをため込まないことです。全身の健康維持と鼠径ヘルニアの予防を兼ねて、今日から便秘の改善に取り組むことをおすすめします。

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