鼠径ヘルニアや胆のう手術では、十分に整えられた診療体制があってこそ、安全な手術が実現します。
当院では、手術そのものだけでなく、術前の評価や麻酔管理、術後の回復までを一貫して支える体制を整え、患者様の状態や生活背景に応じて、日帰り手術と入院手術のいずれにも対応できる診療体制を構築しています。
西宮敬愛会病院COKU鼠径ヘルニアセンターでは、腹腔鏡手術を中心とした鼠径ヘルニア・胆のう手術を専門に行う医療機関として、阪神間をはじめ、西宮市、神戸市、尼崎市、宝塚市、伊丹市、芦屋市、大阪市など、幅広い地域から患者様にお越しいただいています。
2025年は手術体制の安定と人員確保が進み、手術日を週5日とすることが可能となりました。その結果、月50〜60件の手術を行える体制が整い、近隣のみならず、阪神間の広い地域から多くの患者様にご来院いただきました。また、関東や中部、九州、遠くは海外から受診される方もおられ、専門センターとしての役割を改めて実感する一年となりました。
2026年も当院では、患者様に安心して手術を受けていただけるよう、次の3つのことを大切にしながら診療体制を整えてまいります。
どのような手術であっても、「お手軽な手術」は存在しません。麻酔を行い、身体にメスを入れること自体が侵襲であり、治療効果を得ながら侵襲を可能な限り小さくするためには、手術機器や人員を含めた十分な体制が必要です。
鼠径ヘルニアや胆のう摘出術は、外科の分野では入門的な手術と位置づけられています。そのため、多くの総合病院では経験を積んだ医師と若手医師の2名で手術に入り、若手医師が中心となって執刀されることが一般的です。また、全身麻酔についても研修医や若手医師が担当する場合があります。一方で、クリニックなどでは外科医1名で手術が行われることもあります。医療機関ごとに教育体制や人員、コストなどさまざまな事情があることは理解しています。
当院では「患者さんファースト」を最優先に考え、経験を積んだ外科医2名が手術に入り、互いに意見を交わしながら安全性を高めた手術を行っています。また、全身麻酔は高度な専門知識が求められるため、麻酔科専門医が必ず担当します。
さらに当院では、日帰り手術と入院手術のいずれにも対応できる体制を整えています。近年は「できれば日帰りで手術を受けたい」というご希望を持つ患者様が多い一方で、術後の痛みや体調変化に対する不安を感じておられる方も少なくありません。
当院では、日帰り手術をご希望された場合でも、術後の経過を踏まえ、必要に応じて入院手術へ切り替えるなど、柔軟な対応が可能です。
当院のデータでは、「鼠径ヘルニアかもしれない」と受診された方の約3割は、実際には鼠径ヘルニアではありませんでした。
診察や画像検査を通じて慎重に鑑別診断を行い、鼠径ヘルニアでない場合には、リンパ節腫大や粉瘤などの良性疾患、時にはCT検査で悪性疾患が見つかることもあります。その際には、責任をもって適切な医療機関へご紹介します。
画像診断については、外科医と放射線科医によるダブルチェックを行っています。
鼠径ヘルニアかどうか判断が難しい場合には、すぐに手術を行うのではなく、経過観察を選択することもあります。鼠径ヘルニアでない方に手術が行われてはいけません。
初期の鼠径ヘルニアにおいて嵌頓のリスクは極めて低いと考えます。他院で嵌頓の説明を受け、早急な手術を勧められたとしてセカンドオピニオンとして当院を受診される方もいらっしゃいますが、当院では嵌頓のリスクや手術の適切なタイミングについても、丁寧にご相談させていただきます。
「病院は待ち時間が長い」「CT検査は数週間後で結果説明も別日」「手術は数か月待ち」
総合病院での勤務経験が長い私自身、このような状況が生じる背景はよく理解していますが、患者様にとっては大きな負担となります。
当院では、鼠径ヘルニアや腹腔鏡下胆のう摘出術といった良性疾患手術を専門とする医療機関として、できる限り無駄のない、スマートな診療スケジュールを実現できるよう、スタッフ全員で工夫を重ねています。
多くの曜日で初診当日のCT検査が可能であり、初回受診日に診断が確定し、他に大きな問題がなければ、次回は手術日の来院のみで対応できる体制を整えています。外来ではお待たせしないよう、外来枠も調整しています。
また、手術に対する不安を少しでも和らげられるよう、医師・看護師・受付事務のすべてのスタッフが、丁寧な説明を行うことを共通の認識として大切にしています。
「当たり前のことを当たり前に行う」――その積み重ねこそが、安心につながると考えています。
当院では、医師・看護師・事務スタッフ全員が気づいた点を共有し、話し合いながら改善に取り組んでいます。
腹腔鏡手術を安心して任せられる医療機関として、今後も安全性と確実性を最優先に、診療体制の向上に努めてまいります。
診療の中で気になることがありましたら、どんなことでも貴重なご意見として承りますので、遠慮なくお声がけください。
文責 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森 学
公開日:2026年1月7日