「鼠径ヘルニア専門医はいますか?」
鼠径ヘルニアの手術を検討されている患者さんから、このような質問をいただくことがあります。実は、現在の日本には「鼠径ヘルニア専門医」という名称の公的専門医資格はありません。
一方で、鼠径ヘルニア診療や腹腔鏡手術に関する資格制度はいくつか存在しており、外科医の経験や技術を判断する一つの目安になります。
西宮敬愛会病院COKUでは、所属する外科医3名全員が、
を取得しています。
さらに、そのうち2名は「ヘルニア領域」の内視鏡外科技術認定医を取得しています。
今回は、「鼠径ヘルニア専門医」という言葉と、実際の外科医資格についてわかりやすく解説します。
現在、日本専門医機構などが認定する正式な「鼠径ヘルニア専門医」という資格はありません。
そのため、インターネットで「鼠径ヘルニア専門医」と検索した場合、多くは以下のような資格や経験をもとに説明されています。
近年、日本ヘルニア学会では「鼠径部ヘルニア修得医」という資格制度も開始されました。これは、鼠径部ヘルニア診療に関する一定の知識と経験を認定する資格で、2024年から始まった新しい制度です。
ただし、認定条件は鼠径部ヘルニア手術の執刀経験25例以上となっており、比較的初期段階の資格という印象があります。
外科医の資格制度は、段階的に経験を積みながら取得していく仕組みになっています。
① 外科専門医
まず取得を目指すのが「外科専門医」です。
一定数以上の手術経験や研修実績、専門医試験によって認定されます。卒後7年目くらいで取得。
② 消化器外科専門医
さらに消化器外科領域の経験を積み、「消化器外科専門医」を取得します。
胃がん、大腸がん、胆石、ヘルニアなど、消化器外科領域の幅広い診療経験が必要になります。卒後8~10年目くらいで取得します。
経験や業績を重ねることで、それぞれ「指導医」の資格取得にもつながります。
腹腔鏡による鼠径ヘルニア手術において、一つの大きな指標となる資格が「内視鏡外科技術認定医」です。
これは、日本内視鏡外科学会が認定する資格で、
「内視鏡外科手術を安全かつ適切に行い、さらに指導できる技量を持つ」
ことを認定する制度です。
申請には「消化器外科専門医」の取得が必須であり、十分な経験を積んだ外科医のみが受験できます。
さらに、この資格は筆記試験に加えて、実際の手術動画も審査されます。つまり、手術そのものが評価されます。経験豊富な外科医が受験しても、合格率は30%前後の難関資格です
2026年5月現在、
となっています。
さらに地域別では、
です。
※日本内視鏡外科学会公開資料より集計
「技術認定取得者(消化器・一般外科領域)」および「2025年度新規合格者(消化器・一般外科領域)」より集計
西宮敬愛会病院COKUでは、所属外科医3名全員が
を取得しています。
さらに、そのうち2名は「ヘルニア領域」の内視鏡外科技術認定医を取得しており、兵庫県内13名のうち2名が当院に所属しています。
また、当院では鼠径ヘルニア手術において、内視鏡外科技術認定医が必ず2名体制で手術に参加しています。
これらを整え、安全性と精度を重視した治療を行っています。
もちろん、資格そのものが手術をするわけではありません。
しかし、専門医資格や内視鏡外科技術認定医の取得に至るまでには、多くの手術経験や学術的な研鑽が必要になります。そうした積み重ねは、安全で緻密な手術につながる重要な要素だと考えています。
また、鼠径ヘルニア手術では、外科医の資格だけでなく、病院全体の体制も重要です。
西宮敬愛会病院COKUでは、
という体制を整えています。
さらに当院には、「ヘルニア領域」の内視鏡外科技術認定医が2名所属しています。この資格を持つ外科医による腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術を受けられる施設は、日本全国でも限られています。
鼠径ヘルニア(脱腸)でお悩みの方は、まずはヘルニア外来にご相談ください。
文責 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森 学
公開日:2026年5月14日