第36回日本内視鏡外科学会に司会として参加してきました。担当させていただいたのは「ヘルニア•合併症」のセッションでした。
5演題の発表いただいた先生方からは鼠径ヘルニア修復術術後のメッシュ感染や慢性疼痛といった、まれではありますが起きてしまうととても治療に難渋する合併症の経験をお話しいただき議論を行いました。
早期のメッシュ感染では手技上の問題や清潔操作徹底の重要性が再認識されました。
晩期のメッシュ感染は約10年前の手術の影響が今になり顕在化してきています。メッシュの種類など、良性疾患の手術では長い経過の先をしっかり考えた手術計画が一層大切だと感じました。
慢性疼痛は鼠径ヘルニア手術においては最も避けたい合併症です。近年、鼠径部ヘルニア術後慢性疼痛(Chronic Postoperative Inguinal Pain; CPIP)と言い注目されています。その定義は「鼠径部ヘルニア術後3ヶ月以上経過しても軽快しない、もしくはそれ以降に新たに出現した日常生活に支障を来す痛み」とされています。CPIPの原因としては、固定に用いるタッキングや、メッシュの収縮によるもの、手術の際の剥離層などさまざまなものが考えられます。ヘルニア門を修復だけでなく、CPIPをおこさない手技や知識もヘルニア手術においては必要になっています。
当院でも診察が始まりました。学会発表は自施設の成績を見つめ直す大切な機会です。一例一例ていねいに手術を行い、真摯に治療成績を積み重ねていきたいと思います。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森