排便後の違和感が続く「残便感」。すっきりしない感覚が日常にじわじわと影響し、気になりながらも対処法が分からず不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。残便感は、便秘や水分不足などの生活習慣が原因となることもあれば、実は大腸がんなど重大な病気が隠れていることもあります。中には「そのうち治るだろう」と放置してしまう方もいますが、早めに原因を知り、対処することが大切です。
この記事では、残便感の主な原因と、日常生活でできるセルフケア、そして残便感が続くときに注意したいサインについて、わかりやすく解説します。すっきりしない感覚が続いて不安な方は、ぜひ最後までご覧ください。
残便感とは、排便を終えたあとにも「まだ便が残っているような気がする」状態を指します。実際には腸内に便が残っていない場合もあり、感覚的な違和感としてあらわれることもあるでしょう。
排便後に「何となくすっきりしない」そんな不快感を抱えながらも、忙しさや恥ずかしさから我慢してしまう方も少なくありません。
多くの場合は生活習慣の乱れが原因ですが、消化管の異常や病気が関係していることもあります。残便感が長く続く場合は、自己判断せずに早めに医療機関へ相談することが大切です。
残便感が起こる要因は、日常のちょっとした習慣が影響で起こることもあれば、消化管の異常や病気が原因となることもあります。ここでは、残便感を感じる原因について詳しく解説します。
便の約80%は水分で構成されています。そのため、排便をスムーズにするためには十分な水分摂取が欠かせません。水分が不足すると便が硬くなり、腸内に長く留まりやすくなります。これが「出し切れていない」と感じる残便感につながるのです。
排便のリズムが乱れると、腸の働きが鈍って便意を感じにくくなります。その結果、便がたまりやすくなり、残便感を招きやすくなります。
例えば、仕事中や通勤中などのため我慢してしまったり、外出先ではトイレの場所が分からなかったりすることもあるかもしれません。
こうした習慣が続くと腸の活動が悪くなり、便意そのものが起こりにくくなることがあります。
便秘は、本来排泄されるはずの便が大腸内にとどまり、スムーズに出せなくなる状態を指します。一方、下痢は便が軟便から水のような状態になり、排便回数が増えるのが特徴です。どちらも代表的な便通異常で、生活の質に大きな影響を与えることがあります。
便秘の場合、硬くなった便や大量の便が直腸にたまってしまうため、便を出し切れず残便感が強く出やすくなります。反対に下痢では、腸の粘膜が炎症を起こしたり感覚が過敏になったりすることで、実際には便が残っていなくても「まだ残っている」と感じやすくなるのです。
大腸がんは、名前のとおり大腸に発生するがんで、日本人では特に肛門に近いS状結腸や直腸にできやすいといわれています。正常な粘膜から直接発生する場合もありますが、多くは良性の大腸ポリープが大きくなる過程でがん化します。
大腸がんの初期はほぼ無症状です。しかし、進行すると腸の内側が狭くなり、便が細くなったり出し切れない感じが残ったりして残便感として自覚される場合があります。
直腸瘤は、排便時のいきみによって直腸の前側が腟の中にふくらんでしまう状態です。直腸そのものの病気ではなく、直腸と腟の間にある壁が弱くなることで起こり、加齢や出産、長期間の強いいきみなどが主な原因と考えられています。
直腸瘤による残便感は、ふくらんだ部分に便が入り込んでしまうために起こります。そのため、便を出し切っているつもりでも直腸内に残って「まだ便が残っている」と感じやすくなるのです。
過敏性腸症候群は、腹痛やお腹の不快感とともに、便秘や下痢などの便通異常が数ヵ月以上続く病気です。腸に炎症や腫瘍といった明らかな異常がないにもかかわらず症状が起こるのが特徴で、便の状態や排便回数から「便秘型」「下痢型」「混合型」「分類不能型」の4つに分けられます。
過敏性腸症候群で残便感が生じやすいのは、腸の運動や知覚が過敏になっているためです。ストレスが加わると腸の収縮運動が強くなったり、脳と腸の信号のやり取りが過剰になったりして、実際には便が残っていなくても「残っている」と感じてしまいます。
痔核(いぼ痔)は、肛門の内側にある血管や組織がふくらんで、出血や腫れ、外に出てくるといった症状を起こします。肛門は柔らかい組織でできており、便やガスをコントロールする役割を持ちます。このクッションが弱くなり、ふくらんで飛び出すようになると痔核となるのです。
とくに直腸内側にできる「内痔核(ないじかく)」の場合、排便時に痔核が肛門から突出することで「まだ便が残っているように感じる」ことがあります。実際に便が残っているわけではなく、肛門の違和感や圧迫感が残便感として感じられます。
残便感は、以下のような生活習慣の工夫によってやわらぐことがあります。
ここでは日常生活で取り入れやすい対処法を紹介します。
食物繊維は性質の違いによって「水溶性」と「不溶性」の2種類があり、それぞれ異なる役割を持ちます。
水溶性食物繊維は、便に水分を含ませて柔らかくすることで、腸内に便が残りにくくするだけでなく、腸内環境を整える効果も期待できます。代表的な食品は以下のとおりです。
不溶性食物繊維は水分を吸収して数倍にふくらむことで便の量を増やし、腸を刺激してぜん動運動を活発にさせます。便の排出を促す働きがあるため、残便感の解消におすすめです。
食物繊維は残便感の改善や腸内環境の維持に役立ちます。水溶性と不溶性をバランスよく摂りましょう。
体内の水分が不足すると便が硬くなり、排出しにくくなるため残便感の原因になります。
便の約8割は水分で構成され、残りは食物繊維や腸内細菌の残骸などの固形分です。そのため、よい便通のためには十分な水分摂取が欠かせません。また、不溶性の食物繊維は水分を吸収して便のかさを増し腸の動きを助けるため、水分と合わせて摂ることでより効果を発揮します。つまり、水分をしっかり補うことが便通改善の基本になるのです。
1日に必要な水分摂取量は1.5リットル前後ですが、季節や体調によって必要量は変わるため、こまめに補給することが大切です。水やお茶に加え、スープや果物からも水分を補うと無理なく摂取できるでしょう。
便意を感じたらできるだけ早めにトイレへ行きましょう。我慢を繰り返すと腸の動きが鈍くなり、次第に便意そのものを感じにくくなってしまいます。
さらに、便が腸にとどまる時間が長くなることで硬くなり、排出がより困難になります。便意がなくても、毎日決まった時間にトイレに座る習慣をつけると、自然なリズムが整いやすくなるためおすすめです。
朝食後や着替えたあと、家を出る前など自分で行きやすいタイミングを見つけましょう。
腸の働きは、体を動かすことで活発になります。運動によって腸が刺激されると、排便がスムーズになり、残便感の軽減にもつながります。
日常生活に取り入れやすく、おすすめなのはウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動です。息が弾む程度の運動を、毎日30分ほど続けると腸の動きが整いやすくなります。強い運動よりも、軽く体を動かすことを習慣にするのがポイントです。
さらに、ストレッチやヨガのように体をひねる動きを取り入れると、腸が直接刺激されて排便リズムが整いやすくなります。外出が難しい方でも、室内でできるストレッチやお腹のマッサージを取り入れるだけで腸の動きを助けることができます。
毎日のちょっとした工夫で残便感の軽減につながるため、無理のない範囲から始めましょう。
残便感は生活習慣や便秘によることも多いですが、重大な病気が隠れている場合もあります。特に、以下のような症状があるときは注意が必要です。
特に大腸がんは初期には自覚症状がほとんどないため、気づいたときにはすでに進行しているケースも少なくありません。そのため「いつもの便秘だろう」と自己判断で放っておかずに、これらのサインがある場合は次回の検診を待たずに早めの受診が大切です。
残便感とは「排便後もすっきりしない」「まだ残っている気がする」といった不快な症状です。生活習慣や便秘・下痢が原因となることが多い一方、大腸がんや過敏性腸症候群など病気が隠れている場合もあります。特に、血便や腹痛、便の形状や回数の変化がみられた場合はすぐに専門の医療機関を受診してください。残便感はセルフケアで改善することもありますが、原因をはっきりさせるには検査が欠かせません。
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