胆石とは、肝臓・胆のう・胆管にできる小さな石のことです。日本でも、食生活の欧米化や高齢化にともない、その保有率は年々増加しています。日本人に見られる胆石の多くは、コレステロールの増加が原因で形成されるもののため、日常の食事内容を見直すことで、十分に予防することが可能です。
本記事では、胆石ができやすい食生活の特徴や、控えたい食材、発症リスクを下げるための食材などをわかりやすく解説します。今日から始められる胆石予防のヒントとして、ぜひ参考にしてください。
胆石とは、肝臓・胆のう・胆管にできる小さな石(結石)のことを指します。胆汁という、脂肪の消化を助けるために肝臓でつくられる消化液は、主にコレステロール・胆汁酸塩・リン脂質・ビリルビンなどの成分から構成されています。これらの成分のバランスが崩れると、胆汁の中で一部の物質が結晶化して固まり、胆石が形成されます。
胆石の中で最も多いのがコレステロール胆石で、胆汁中のコレステロールが増えすぎたり、胆のうの働きが低下して胆汁の流れが滞ったりすることで生じます。脂肪やコレステロールの多い食事は胆石につながる原因であることがわかっています。
胆石の多くを占めるコレステロール系の結石は、胆汁の中にあるコレステロールが固まってできるものです。脂っこい食事をとりすぎると、消化のために胆汁酸が多く分泌され、胆汁の中のバランスが崩れて胆石ができやすくなります。特に、胆汁にコレステロールが多くなりすぎると、余分なコレステロールが固まりやすくなり、小さな結晶(石のもと)ができてしまうことがあるため注意が必要です。
ただし、脂質をまったく摂らないようにする必要はありません。オリーブオイルや青魚に含まれる良質な油(不飽和脂肪酸)は、適量であれば胆汁の流れを整え、胆のうの働きを助ける役割があります。脂質を極端に減らしすぎると、胆のうの動きが悪くなって胆汁が滞りやすくなるほか、脂溶性ビタミンの吸収が悪くなることもあるので注意が必要です。脂質は「種類」と「量」を調整し、バランスよく摂ることが胆石予防のポイントです。
魚卵や脂肪分の多い魚は、コレステロール値が高く、胆のうに負担をかけやすい食品です。適度な摂取に留めるようにしましょう。
魚卵類:いくら、たらこ、明太子など
脂肪分の多い魚:うなぎ、まぐろのトロ、さば、さんまなど
天ぷら、バラ肉やレバーなど、揚げ物や脂肪分の多い食事は胆のうを刺激し、胆汁の分泌を促します。胆石予防のために摂りすぎには注意です。
揚げ物
唐揚げ、天ぷら、フライなど
高脂肪の肉類
豚バラ肉、レバー、ホルモン、鶏皮、ベーコン、ソーセージなど
脂質と糖質の多い洋菓子や動物性脂肪が多い乳製品なども、胆のうに負担をかけ胆石を形成する要因になるため、過度に摂取するのは控えたい食品です。
洋菓子
アイスクリーム、ケーキ、クッキーなど。
スナック菓子やファストフードも脂質や添加物が多いため、注意が必要です。
乳製品
バター、生クリーム、チーズなど

胆石を予防するために、積極的に摂取したい食べ物には、食物繊維を多く含む食材とビタミンCを多く含む食材が挙げられます。体の内側から胆石のリスクを減らすことが期待できる食材をご紹介します。
食物繊維(特に水溶性食物繊維)には体内のコレステロール吸収を抑えたり、胆汁とともにコレステロールを排出させたりする働きがあるため、胆石予防に効果的です。
食物繊維を多く含む食材
海藻類:こんぶ、ひじき、わかめ
果物:バナナ、いちご、りんご、オレンジ、グレープフルーツ
野菜:ほうれん草、かぼちゃ、ブロッコリー、にんじん、さつまいも
豆類:いんげん豆、大豆、えんどう豆
ビタミンCには胆汁酸の排出を促す作用があります。胆汁酸はコレステロールの分解と排出を担う重要な成分であり、その合成にはビタミンCが欠かせません。胆石の予防のためにも、ビタミンCを豊富に含む果物や野菜を日常的に取り入れるようにしましょう。
ビタミンCを多く含む食材
オレンジ、キウイ、いちご、みかん、カリフラワー、ブロッコリー、ほうれん草、かぼちゃ、さつまいも、ピーマンなど
胆石を予防するためには、食事の内容だけでなく、食べ方にも注意が必要です。
≪一度にたくさん食べない≫
一度に大量に食べると胆のうが急に収縮し、胆石が動きやすくなって詰まりの原因となることがあります。食べ過ぎを避け、腹八分目を意識した食事を心がけることが大切です。
≪早食いをしない≫
よく噛まずに飲み込むと食べ物が十分に消化されず、胃腸や胆のうに余計な負担をかけてしまいます。少量ずつ、ゆっくりと、よく噛んで味わうことを意識しましょう。
≪食事の時間は規則正しく≫
食事の時間が不規則になると胆汁の分泌リズムが乱れ、胆汁が停滞しやすくなります。朝食をしっかり摂ることで胆汁を排出し、胆石のリスクを下げることができます。朝食を抜く習慣や食事の時間が日によってばらつかないように注意しましょう。
≪就寝前の食事は控える≫
夜間は胆のうの働きが弱まるため、遅い時間や就寝直前の食事は控えるのが望ましいでしょう。夕食は就寝の2~3時間前までに済ませるのが理想的です。

定期的に体を動かすことで、肥満を防ぐとともに、胆汁の流れを良くし、胆石の形成を防ぐ効果が期待できます。特にウォーキングは、全身の血行を促し胆汁の流れをスムーズにする働きがあります。1日20〜30分程度を目安に、無理のない範囲で続けるのがおすすめです。
また、長時間座りっぱなしでいると胆汁の流れが悪くなり、胆石のリスクが高まります。仕事や家事の合間に15分程度のストレッチをしたり、週2回ほど軽い筋トレを取り入れたりするのも効果的です。ストレッチや筋トレは代謝を高め、脂質の代謝をサポートするうえでも役立ちます。
≪日常生活に「ながら運動」を取り入れる≫
特別な運動をしなくても、日常の中で体を動かす工夫を取り入れることもできます。
例)
こうした「ながら運動」を意識的におこなうことで、座りっぱなしの時間を減らし、自然に体を動かす習慣が身につきます。
≪水分補給のポイント≫
十分な水分を摂ることも、胆石の形成を防ぐうえで欠かせません。水分をしっかりと摂ることで、胆汁の濃度を薄め、胆のう内で結石ができにくい状態を保てます。1日に1.5〜2リットルを目安に、こまめに水分を摂取するようにしましょう。
入浴中や睡眠中にも汗で水分が失われるため、就寝前、起床時、入浴の前後、運動中およびその前後など、のどが渇く前のタイミングで補給することが大切です。
≪日常生活に「ながら運動」を取り入れる≫
特別な運動をしなくても、日常の中で体を動かす工夫を取り入れることもできます。
例)
・エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を使う
・歯磨き中にかかとの上げ下げをする
・少し遠くの店に歩いて行く
・信号待ちの間はつま先立ちをする
こうした「ながら運動」を意識的におこなうことで、座りっぱなしの時間を減らし、自然に体を動かす習慣が身につきます。
≪水分補給のポイント≫
十分な水分を摂ることも、胆石の形成を防ぐうえで欠かせません。水分をしっかりと摂ることで、胆汁の濃度を薄め、胆のう内で結石ができにくい状態を保てます。1日に1.5〜2リットルを目安に、こまめに水分を摂取するようにしましょう。
入浴中や睡眠中にも汗で水分が失われるため、就寝前、起床時、入浴の前後、運動中およびその前後など、のどが渇く前のタイミングで補給することが大切です。
胆石を悪化させないためには、食べ物の選び方だけでなく、飲み物の種類や食事のとり方にも気をつけることが大切です。ここでは、患者さんからよく寄せられる質問に答えながら、日常生活で実践できる食習慣のポイントをわかりやすく解説します。
水分は、胆汁をスムーズに流すために欠かせません。1日1.5〜2リットルを目安に、こまめな水分補給を心がけましょう。おすすめは常温の水やカフェインの含まれていない薄めのお茶などです。
一方、糖分の多い清涼飲料水や炭酸飲料は、胆のうに負担をかけ、胆汁のバランスを崩す原因となるため、ほどほどを心がけましょう。適度のコーヒーやアルコールは胆石の形成を抑制するとされていますが、過度に摂取すると刺激になり逆効果になるため注意が必要です。
一度に多くの量を食べると、胆のうが急激に収縮し、胆石が詰まる原因になります。1回の食事量は少なめにして、1日数回に分けて摂ることがおすすめです。一定のリズムで食事を摂ることで、胆のうに過度な刺激を与えず、安定した消化リズムを保つことができます。

胆石症は、コレステロールを多く含む食事や肥満、急激なダイエットなどが主な要因とされており、胆石の悪化や再発を防ぐためには食生活の見直しが欠かせません。そこで胆石予防には、脂質の摂りすぎを控え、野菜や海藻、豆類などの食物繊維を多く含む食品やビタミンCが豊富な果物を積極的に取り入れましょう。また、適度な運動や十分な水分補給を心がけ、適正体重を維持することも大切です。
胆石は、症状が現れないまま経過することも多い一方で、悪化すると強い腹痛や発熱などの重篤な症状を引き起こす場合もあります。食後の腹部の張りや痛みなどが気になる方、また健康診断で胆石を指摘された方は、早めの受診をおすすめします。
西宮敬愛会 低侵襲治療部門 COKU では、血液検査や腹部超音波検査などを用いて、胆石の状態を詳しく確認します。無症状であれば経過観察をおこない、治療が必要と判断された場合は、腹腔鏡下胆のう摘出術をご案内しています。「腹腔鏡手術」は、体への負担が少なく、傷が小さいことが特徴で、術後の痛みが軽く、回復も早いというメリットがあります。執刀は日本肝胆膵(かんたんすい)外科学会高度技能医や日本内視鏡外科学会技術認定医の資格を有する消化器外科医が担当し、より確実な手術を心がけています。また、当院では安全面と術後の経過をしっかり見守るため、日帰りではなく一泊二日の入院を基本とし、手術当日にご来院いただき、翌日に体調に問題がなければご退院いただけます。
症状の有無だけでなく、胆石の大きさ・数・位置、経過観察中の変化などを総合的に評価し、患者さま一人ひとりの状態に合わせた治療方針をご提案しています。少しでも気になることがあれば、いつでも西宮敬愛会 低侵襲治療部門 COKUにご相談ください。