もちろん可能です。まずは経過や症状のお話を伺います。次に立位で鼠径部の視診や触診を行います。必要に応じてCT検査や超音波検査を行います。鼠径部には鼠径ヘルニア以外の病気もありますので鑑別診断を行います。
当院では日帰り手術にも入院手術にもどちらにも対応しております。大きなご病気をお持ちの方はこちらから入院をおすすめすることもありますが、術前検査などで問題がない方は日帰り手術と入院手術をお選びいただけます。日帰り手術をご希望されていても、術後の状態で入院に変更することも可能ですのでご相談ください。
なお、手術当日は車の運転ができませんので遠方から車でお越しの方は一泊入院していただくことで翌日にご自身の運転で帰宅できます。
総合病院では多くの部署の手続きや確認が必要となり前日入院のところが多くなっています。当院では手術当日にお越しいただくため、まずはそこが短縮されます。手術当日に来て手術を行うためには、朝の食事や飲水時間、内服の管理において患者さんのご協力が必要となるためしっかりと術前にお伝えいたします。
また、手術の侵襲や最近の麻酔技術や考えると、鼠径ヘルニア手術は日帰りや短期入院で十分可能なのですが、総合病院ではクリニカルパスといってもともとスケジュールが決まっています。患者さん毎に入院期間の変更を行うと様々な部署がかかわり煩雑になってしまうため、合併症のある方にも対応できるように比較的長めの入院期間になっていることが多いようです。
鼠径ヘルニア修復術には腹腔鏡を用いる「腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術」と直視下に行う「鼠径部切開法」があります。腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術には腹腔内からヘルニア門をメッシュで覆うTAPP法と腹壁内で操作してヘルニア門をメッシュで覆うTEP法があります。腹腔鏡手術の方が傷が小さくなるため当院では第一選択としております。また鼠径ヘルニアの大きさやタイプによってTEP法とTAPP法を使い分けています。前立腺の手術後や下腹部に大きな手術痕があり腹腔鏡が難しいと判断した場合は鼠径部切開法を選択します。
腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術の場合、片側では50分程度です。全身麻酔で行いますので前後に10-15分ずつかかるためおおよそ1時間30分程度手術室にいることになります。
胃カメラや大腸カメラといった内視鏡検査で用いる鎮静剤は自分で呼吸はしているけど意識がぼんやりするといったいわゆる眠っている状態にします。ミダゾラムが代表的な鎮静剤ですが、このお薬は確かに聞きやすさに個人差があります。
手術で行う全身麻酔はこの内視鏡検査の鎮静とは異なります。プロポフォールという鎮静剤やフェンタニルやレミフェンタニルといった痛み止め、手術によっては筋弛緩薬を用います。手術中はプロポフォールやセボフルランやデスフルランといった鎮静剤を持続投与して麻酔状態を維持します。これらを組み合わせた麻酔では麻酔器で人工呼吸を行います。麻酔の効き具合を確認するため、心電図や血圧計、酸素モニター、CO2モニター、筋弛緩モニター、BISモニター(脳波計)を用いています。当院ではこれらの全身麻酔管理は麻酔科専門医が行います。
長く手術に携わっていますが、この全身麻酔が効かなかった方を私は見たことがありません。麻酔に関するご心配がありましたが術前に麻酔科医よりも説明をさせていただきますのでご相談ください。
手術が終わり全身麻酔を覚ましたのちに手術室から隣のリカバリー室(回復室)に移ります。リカバリー室でしっかり目が覚めればストレッチャーからリクライニングシートに移ります。約2時間の間に飲水、トイレ歩行、軽食の摂取をしていただき問題がなければ診察を行い退院です。入院の方はそのタイミングで病棟のお部屋に移動します。
腹腔鏡手術ではヘルニア門の大きさやメッシュを留置した場面など手術のポイントごとに撮影を行っていますので、退院時に画像をお見せしながら説明させていただきます。
また退院時には帰宅後の注意点などを用紙を用いてご説明いたします。
日常生活は手術当日より制限なく可能です。術後2週間は長時間の運動や腹圧のかかる積極的なトレーニング(ジムでの筋トレなど)は避けてください。2週間程度経過して違和感などがなくなっていれば通常の運動を徐々に再開してください。
よくいただくご質問について回答していますが、鼠径ヘルニアの状態などによって個別で違うこともありますので診察時にお問い合わせいただければお答えさせていただきます。術前の不安がなく手術を受けられることが一番と思いますので些細なことでも構いませんのでお気軽にご質問ください。
文責/医療監修 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森 学