大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の大きな目的の一つは、大腸ポリープを早期に発見・切除することです。しかし、すべてのポリープが切除対象というわけではありません。切除すべきポリープと、経過観察でよいポリープがあり、適切に見極めることが重要です。
特に、切除すべき腫瘍性ポリープを確実に取り除くことで、大腸がんの発生や死亡率を低下させる効果が期待できます1)。しかし、切除すべきポリープも見つけなければ切除できません。検査の質が非常に重要です。
大腸内視鏡検査に携わっていない方は、
「どこの病院で検査しても、切除すべきポリープはすべて取ってもらえる」
と考えるのが自然でしょう。
しかし実際は、大腸には多数のヒダが存在し、丁寧にヒダをめくって観察しなければポリープの見逃しが発生する可能性があります。検査医の技術や使用する内視鏡機器によって、検査の質は大きく左右されるのです。
大腸内視鏡検査の質を評価する代表的な指標が「ADR(Adenoma Detection Rate:腺腫発見率)」です。
単なる「ポリープ切除率」では、切除不要な過形成性ポリープも含まれてしまうため、検査の質を正確に評価できません。ADRは組織学的に腺腫(切除すべき良性腫瘍)が確認された割合を示し、より信頼性の高い指標とされています2)。
西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門COKUでは、
✅ 先端フード装着
✅ BLI(狭帯域光観察)機能付き拡大内視鏡
を併用し、丁寧かつ詳細な観察を実施しています。
その結果、2024年4月~2025年5月のADRは56.6%(平均年齢54.3歳)と、非常に高い水準を維持しています。
年代 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
20代以下 | 0%(※) | 0%(※) |
30代 | 31.7% | 16.7% |
40代 | 63.0% | 38.5% |
50代 | 75.0% | 54.1% |
60代 | 65.3% | 62.2% |
70代 | 70.8% | 70.8% |
80代以上 | 100% | 80% |
※内視鏡センター開設から1年程度のデータのため、20代以下のADRは現時点で0%になっています。他院の検査も含めると0%ではありません。
病院ごとに患者様の年齢層・生活習慣(喫煙率等)が異なるため、ADRを単純に比較することはできません。しかし、質の高い内視鏡検査を行っているかどうかの参考指標としてADRは非常に重要です。
大腸内視鏡検査は、単に「受ける」だけでなく、検査の質が非常に大切です。西宮敬愛会病院では、最新の内視鏡機器と熟練の医師による検査で、大腸がんの予防につながる内視鏡診療を提供しています。
医療監修:西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉 章紀
1) Nishihara R, Wu K, Lochhead P et al. Long-term colorectal-cancer incidence and mortality after lower endoscopy. N Engl J Med 2013;369:1095-105.
2) Lee TJ, Rutter MD, Blanks RG et al. Colonoscopy quality measures : experience from the NHS Bowel Cancer Screening Programme. Gut 2012;61:1050-7.