胆石症は、胆のうや胆管に石ができる病気で、健康診断などで偶然発見されることも少なくありません。無症状のまま経過することも多い一方で、ひとたび症状が現れると激しい痛みや発熱を引き起こし、時には手術が必要になることもあります。
今回は、胆石がどのようにしてできるのか、どんな症状が現れるのか、診断から治療までの流れを詳しく解説します。さらに、日々の食生活で気をつけるべきポイントなど、胆石症を予防するための実践的な方法もご紹介しましょう。
胆石症とは、肝臓で作られる消化液「胆汁」の通り道である胆管や、胆汁を一時的に蓄え濃縮する袋状の臓器「胆のう」の中に、胆汁の成分が固まって石(結石)ができる病気です。結石ができる場所によって、胆のうの中にできる胆のう結石、肝臓と十二指腸をつなぐ管である総胆管にできる総胆管結石、肝臓の中の胆管にできる肝内結石に分類され、胆石症はこれらの総称になります。胆石があっても症状を感じないことが多いですが、胆石が胆管を詰まらせたり、胆汁の流れが悪化して細菌感染を起こしたりすると、腹痛や発熱、黄疸が生じることもあります。
胆石とは、肝臓で脂肪の消化を助ける「胆汁」の成分が固まり、石状になったものです。主にコレステロールやビリルビンなどが固まってできます。胆石は、できる場所によって主に以下の3種類に分けられます。

胆石は、肝臓で作られる胆汁成分のバランスが崩れたり、胆汁の流れが滞ったりすることで生じます。主な原因とメカニズムは以下の通りです。
胆汁中に含まれるコレステロールが増えすぎて、溶けきれずに結晶化して石ができやすくなる
胆のうの収縮能が低下し、胆汁が滞ることで胆石形成につながる
ホルモンの影響で胆汁成分や胆のうの動きに変化が生じ、胆石ができやすくなる
中年以降に多く見られ、年齢を重ねることも胆石ができるリスクを高める
溶血性貧血など遺伝性の疾患や胆石ができやすい体質が、家族内で受け継がれることがある
これらの疾患は胆汁の成分や胆のうの収縮能に影響を与えるため、胆石ができやすくなる
胆石が見つかっても無症状で経過することが多くみられます。有症状となった場合に、よくみられる症状は以下の4つです。
胆石症の症状で最も頻度が高いのが痛みです。主に右上腹部やみぞおちに激しい痛みをともなうことが多く、背中や肩に響くような痛みになることもあります。特に脂質の多い食事の後やストレスによって引き起こされるのが特徴です。この痛みは「胆石発作」と呼ばれ、一度起こすと繰り返す傾向があります。
胆石による腹痛発作には、吐き気や嘔吐をともなうことがしばしばあります。胆石が胆管内で刺激を与えたり、胆汁の出口を塞いだりすることによって生じるためです。特に激しい痛みが起こる際に、吐き気や嘔吐といった症状が出やすくなります。
胆石が原因で胆のうや胆管に細菌感染が起こると、「急性胆のう炎」や「急性胆管炎」を発症し、発熱や悪寒をともないます。特に、黄疸と発熱が同時に現れる場合は、「重症急性胆管炎」など命に関わる状態に進行している可能性があり、速やかな医療機関の受診が必要です。炎症が重症化すると胆のうや胆管に膿が溜まり、敗血症やショック状態を引き起こすこともあります。
胆石が肝臓で作られた胆汁の通り道である胆管を塞いでしまうと、胆汁の流れが悪くなり、血液中のビリルビンという色素成分が体内に溜まります。これにより、皮膚や目の白目の部分が黄色くなる「黄疸」という症状が現れ、かゆみをともなうこともあります。特に、総胆管結石や肝内結石において黄疸が見られることが多いです。総胆管結石から胆管炎を併発した際にも黄疸が現れやすくなります。

胆石症の診断には、いくつかの検査を組み合わせておこないます。
最初におこなうのは、身体への負担が少ない腹部超音波検査(エコー)です。この検査では、胆のう内の石の有無や大きさ、胆のうの壁の状態などを直接確認できます。胆のう結石はほぼ腹部超音波検査で見つかるといわれています。
血液検査は、腹部超音波検査では分かりにくい炎症の有無や肝機能の状態を調べるためにおこないます。検査で調べる項目と分かることは以下のとおりです。
CT検査やMRI検査は、腹部超音波検査で確認が難しい場合や、より詳しい情報を得たい場合におこないます。検査で調べる点と分かることは以下のとおりです。
胆石症の治療は、自覚症状の有無によって、保存療法と胆のう摘出術に分けられます。それぞれの治療方法の特徴について解説しましょう。
胆石を持っていても、無症状であることが多く、このような場合は原則として治療をおこなう必要はありません。無症状の胆石は、経過観察が選択されます。ただし、胆石の形成や発作を避けるために、脂肪分の多い食事を控え、規則正しい食生活を心がけることが重要です。急激なダイエットも胆石形成のリスクを高めるため避けましょう。
腹痛や発熱などの症状がある胆石症の場合、胆のう摘出術が最も根本的な治療法として推奨されます。腹腔鏡下手術は、お腹に数ヵ所の小さな穴を開け、専用のカメラと細い手術器具を使って胆のうを摘出する方法です。この方法の大きなメリットは、術後の痛みが少なく、回復が早いため、入院期間も短く(通常3~5日程度)済むことです。現在ではほとんどの胆のう結石症が腹腔鏡下手術の対象となりますが、過去の腹部手術による強い癒着がある場合など、状況によっては開腹手術に切り替えることもあります。胆のうを摘出しても、肝臓や胆管がその機能の一部を補うため、日常生活に大きな支障はありません。
胆石はさまざまな要因で形成され、特に以下の方はできやすい傾向があります。
胆汁中に含まれるコレステロールが増え、結晶化しやすいため
肥満や急な体重減少が胆石形成リスクを高めるため
胆石症の発症は、中年以降に多いとされるため
女性は結石ができやすく、妊娠もリスク因子となるため
胆石形成に関与が指摘されるため
遺伝や似た食生活が影響するため
胆石の発生リスクを下げるためには、日々の食生活が非常に重要です。以下の点を心がけましょう。
脂肪分の多い食事は胆汁中に含まれるコレステロールを増やし、結晶化する原因となるため
【実践例】
・揚げ物はできるだけ控えて、衣を薄くする
・肉は脂身を取り除き、鶏むね肉や赤身肉を選ぶ
・調理法は「焼く」「蒸す」「茹でる」を基本にする
コレステロールを摂り過ぎると胆石形成リスクを高めるため、また卵は胆のうを収縮させて腹痛発作を引き起こす可能性があるため
【実践例】
・卵・レバー・魚卵などの摂取はできるだけ控える
・肉類中心の食事から大豆製品や魚類を取り入れた食事を摂る
・マヨネーズを使わず酢と植物油のドレッシングに置き換える
これらの食品に含まれる水溶性食物繊維には悪玉コレステロールを減らす作用があるため
【実践例】
・毎食必ず野菜料理を1品以上、1日350gを目標にする
・ひじきの煮物やもずく酢など海藻類を副菜として取り入れる
・おやつはナッツ類(無塩)小皿に1皿程度を食べる
脱水は胆石発生のリスクとなるため、十分な水分摂取で胆汁が濃縮されにくく、流れが良くなるのを助ける
【実践例】
・起床時、食事前、入浴前後にコップ1杯の水を飲む
・1日1.5L~2Lを目標に、こまめに少量ずつ摂取する
・カフェイン飲料は控えて、麦茶やルイボスティーなどを飲む
不規則な食事は胆のうの正常な働きを妨げ、胆汁の詰まりを招きやすくなるため
【実践例】
・食事は、朝7~8時、昼12~13時、夕18~19時を目安にする
・特に朝食抜きは避ける
・週末も平日と同じ時間帯での食事を心がける
長期間の絶食や急激な体重減少は胆のうの収縮能を低下させ、胆汁が滞りやすくなるため
【実践例】
・減量は1ヵ月あたり現体重の1%程度のゆるやかなペースでおこなう
・極端な糖質制限や単品ダイエットは避ける
・タンパク質、脂質、糖質をバランスよく摂取する
肥満は胆汁の組成に影響を与えて、胆石ができやすくなるため
【実践例】
・毎日体重を測定し、記録をつける習慣を作る
・夕食は就寝2~3時間前までに済ませる
・腹八分目を意識し、よく噛んでゆっくり食べる
上記の食事対策は胆石症の予防に効果的とされていますが、食事のみで完全に予防できるわけではありません。個人の体質や糖尿病・肝疾患などの基礎疾患がある場合には、食生活に気をつけていても胆石が形成されることがあります。
胆石症は無症状のことも多い一方で、激しい腹痛や発熱といった重篤な症状を引き起こすこともある病気です。コレステロールの多い食事や肥満、急激なダイエットなどが主な原因となり、腹部超音波検査をはじめとした各種検査で診断されます。脂質の多い食事を控え、食物繊維を豊富に含む食品を積極的に摂取し、適正体重を維持することが予防につながります。
胆石症の治療においては、症状の有無が重要な判断基準となりますが、胆石の個数や大きさ、またその経時的な変化も治療時期の決定に重要な因子となるため、患者様一人ひとりの状況に対応いたします。健康診断で胆石を指摘された方やお腹の症状でお悩みの方は、西宮敬愛会低侵襲治療部門COKUへご相談ください。