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鼠径ヘルニア

脱腸とも呼ばれる手術適応の疾患です
鼠径ヘルニア
脱腸って知っていますか?
About Inguinal Hernia

鼠径ヘルニア(脱腸)って何ですか?

一般的に脱腸と呼ばれる良性の病気です。成人の鼠径ヘルニアは加齢とともに足の付け根(鼠径部)の組織が弱くなった部分から腹膜の一部が袋状に脱出してしまい、鼠径部が膨れ上がる病気です。
鼠径ヘルニアには大きく分けて、外鼠径ヘルニア、内鼠径ヘルニア、大腿ヘルニアの3つに分類されており、鼠径部にあいている穴(ヘルニア門)の大きさによって、さらに細分化されています。 2021年4月から日本ヘルニア学会が新分類↗︎を提唱しています。鼠径ヘルニアに似た病状として、鼠径部のリンパ節腫脹、閉鎖孔ヘルニアや若年女性でみられるNuck(ヌック)管水腫や異所性子宮内膜症、妊婦の方にみられる子宮円索静脈瘤などがあります。鼠径部の膨隆が気になる方はぜひ一度受診してください。
こんな症状がある人は要注意:

✓ 太ももの付け根(鼠径部)が立つと膨らむ

✓ 鼠径部の痛みや不快感がある

✓ 鼠径ヘルニア(脱腸)と指摘された

こんな症状はありませんか?
About Inguinal Hernia

足の付け根にこんな症状はありませんか?

太ももの付け根に柔らかい膨らみがでている。または左右の形が大きく違う。
膨らみは手で押すとへこみ、横になると消える。
陰嚢が片方だけ腫れてきた。
お腹が張っている感じがする。
下腹部に違和感や不快感、時に差し込むような痛みがある。
※ 脱出した腸が腹腔内に戻らないときは命に関わり緊急手術が必要となることもあります。
患者さまに合わせた
治療をえらびます
Treatment

鼠径ヘルニアの治療について

鼠径ヘルニアは組織が弱くなってできたヘルニア門である孔が原因のため、薬による治癒はできず、根本的治療は手術になります。ヘルニアバンドで体外から圧迫することで脱出による疼痛などの症状を緩和することはできますが、自然に治ることはありません。
従来の手術はヘルニア嚢を処理した後に、ヘルニア門を縫合閉鎖することが一般的でしたが、疼痛や高い再発率のため近年では人工のメッシュシートを使用した手術(Tension-free repair)が一般的です。
人工のメッシュシートは様々な形のものが開発され、それにより多くの術式が存在します。世界的にも様々な検討が行われていますが、一番よい特定の術式というものは決まっていません。日本ヘルニア学会からの診療ガイドラインでも、「各施設で習熟した術式を行うことが勧められる」とされています。
日帰りも可能な負担の少ない手術です
Procedure

日帰りもしくは短期の入院で手術を行います

鼠径ヘルニアの手術には大きく分けて鼠径部切開法による手術と腹腔鏡を用いた手術があります。
手術のコンセプトは脱出した腹膜(ヘルニア嚢)を処理して、ヘルニア門にメッシュシートを置くというもので 大きくは変わりませんが、切開の場所や大きさが異なってきます。

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術はアプローチの違いから、TAPP:Transabdominal preperitoneal repair(経腹的腹膜前修復法)とTEP:Totally extraperitonea l repair(腹膜外腹膜前修復法)に分けられますが、腹膜前腔にメッシュシートを留置するというコンセプトは全く同じです。当院では臍部の単一の創からTEPを行うSILS(Single incisional laparoscopic surgery)-TEPを主に行います。術後の疼痛予防としてタッカー(固定用のホッチキス)による固定を省略した方法なども行っております。また、ヘルニア門径などに応じてTAPPと使い分け、患者様の病態に最も適した術式を選択します。
SILS-TEP法
術式と傷の部位
SILS-TEP術のイメージ図

TAPP法
術式と傷の部位
TAPP術のイメージ図

鼠径部切開法

前立腺手術など腹腔鏡手術でアプローチする腹膜前腔がすでに治療されている方や、全身麻酔がかけられない方は、鼠径部切開法による手術を行います。腹腔鏡手術は全身麻酔が必要となりますが、鼠径部切開法では脊髄クモ膜下麻酔(腰椎麻酔)や局所麻酔での手術も可能です。鼠径部切開法による術式も様々なものがありますが、当院ではLichtenstein法(リヒテンシュタイン法)やダイレクトクーゲル法やメッシュプラグ法を主に行っています。Lichtenstein法とTEP/TAPP法ではメッシュの留置位置がヘルニア門の腹側か背側かという違いがあり、再発鼠径ヘルニアの際には両者を使い分けることで確実性の高い手術を目指します。
鼠径部切開法の手術イメージ
図2:鼠径部切開法の手術イメージ
手術時の注意事項
手術は一定の確率で合併症が起こりえます。
受診時に手術の説明文書をお渡しして詳細を説明させていただきます。
以下に主なものを挙げています。
01 再発:
メッシュシートを用いる術式になり再発は減っていますが、組織の脆弱性などから再発をきたすことがあります。全国では2-3%と推定されています。長期的な発生もありますので、術後に変化があればご相談ください。
02 疼痛:(慢性疼痛)
術後数日は切開部の疼痛があるため鎮痛薬を処方します。多くの場合、痛みは徐々に和らいでいきますが、まれに数か月にわたる知覚異常や神経疼痛が残ることがあります。慢性疼痛は術後の生活にとても大きな影響を与える合併症です。手術時には神経の同定や温存、神経の存在しやすい部位の操作を避けたり、タッキングを省略するなどの工夫を行っていますが、確定的なものはありません。術後の疼痛にも対応を行っていきますので、術後の外来時にご相談ください。
03 感染:
まれに遅発性のものもあるため、創部の発赤や腫脹、疼痛がある際には診察を受けてください。軽いものは抗生剤治療で軽快することもありますが、感染が長引くときは再手術が必要になることもあります。
04 漿液腫:
ヘルニア嚢が大きい場合、手術部位に水がたまり、もともとの膨隆部に丸く硬いしこりを触れる場合があります。多くの場合、痛みなどはないため経過をみていくと徐々に小さくなっていきます。大きくて疼痛などがあれば穿刺して水を抜くこともあります。

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