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手術と指輪:外す理由と外し方

外れない指輪

手術を受ける時には、体につけているものを外す必要が原則的にあります。その中でも、今回は指輪について解説したいと思います。結婚指輪など、長期間外さずにつけっぱなしの方も多くいると思います。そのような場合、簡単に指輪が外せない方もいらっしゃるかもしれません。

なぜ手術の時に指輪を外した方がいいのか、また外れない時の指輪の外し方についてご説明します。

手術の時に指輪を外さなければならない理由は大きく2つあります。

理由①:指がむくんでしまうため

一つの理由として、手術や麻酔の影響で体に浮腫(むくみ)が起こると、指輪によって指が締め付けられてしまうためです。大きな手術では輸液量も多くなるため全身の浮腫が生じることもあります。その際に指がむくんでしまうと、指輪の部分がさらに締め付けられてしまい血流が悪くなってしまうことがあります。

当院で行う鼠径ヘルニア手術や胆のう摘出術では手術時間が1時間程度で術中の輸液量も多くないため指がむくむようなことはほとんどありませんが、リスクを減らすという意味では指輪は外した方がよいでしょう。

理由②:電気メスでの熱傷を防ぐため

手術の時には止血や切開をすすめるために電気メスを使用します。電気メスの使用時には体内に電気が流れますが、電気を体外に逃すために”アース”の役割を担う「対極板」を足に張って使います。そのようにすることで、電気メスの先端以外で火花が発生することがないようになっています。

もし指輪をしたままで、指輪が手術台の金属部分などに接触していて、対極板より電気抵抗が低ければそちらに電気が流れてしまい、指輪をはめている皮膚にやけどをきたす可能性があります。

結婚指輪の素材は、プラチナ、ゴールド、チタン、ジルコニウム、タンタルなどが使われているようです。程度の差はありますが、基本的には金属ですので通電性があるといわれています。そのため手術の時にやけど予防に指輪を外しておく必要があります。

外れない指輪の外し方

長い年月指輪をはめていてご自身では指輪が外れないという方もいらっしゃるかと思います。石鹸などで滑りをよくして外れる程度であればよいのですが、指の関節部分が太くなってどうにも取れそうにないという方も見受けられます。

指輪の外し方にもいろいろな方法があると思いますが、病棟の看護師さんが外せなかった指輪を約20人ほど外すことに成功してきた私の方法をご紹介したいと思います。

外れない指輪の外し方

① 図のように指輪と指の間に糸を通します

② 指先側に15-20回程度細かく糸を巻きます

③ 指の付け根側の糸を指先側に引っ張った状態で指先側に巻いた向きと同じ回転方向で回していきます(青矢印)

④ これを4-5セット繰り返します

ねじのように少しずつ指の皮膚が根本側に移動して指輪が少しずつ外れていきます。

皮膚が擦れて痛いこともあるので、オリーブオイルを全体に垂らしてから行います。

糸はあまり細いものだと切れてしまいますし、ナイロン糸など摩擦の低いものでは滑ってしまうので2-0か0号の絹糸がおすすめです。

このやり方で私の経験では今のところすべての方の指輪を外せています。

外れない指輪がある場合には術前に相談していただければ外来でなるべくとるようにします。外した指輪は、指輪屋さんでサイズ変更も可能みたいですので、また大切にしていただければと思います。

もし取れない場合には、リングカッターで切断することもあるそうですが、当院では前述の理由のうち、指がむくむ可能性は低くやけどの予防が主なため、指輪のある手にゴム手袋をはめていただき通電しないようにして手術の準備をしたいと思います。

手術の時には指輪以外にもピアスやネックレスは外していただきます。またコンタクトレンズも乾いてしまわないように外して手術室までは眼鏡をかけていただき、直前に眼鏡をはずしてお預かりします。義歯も基本的には外しますが、グラグラして抜けそうな歯を保護しているような場合には麻酔科医師と相談して外すかどうかを決めていきます。

手術を安全に行えるように様々な注意を行っております。何か気になることがありましたらお気軽にお尋ねください。

文責/医療監修 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森 学

※西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 COKU外科部門では、鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のう疾患に対して傷の小さな腹腔鏡手術を経験と資格の豊富な外科医が担当して手術を行っています。鼠径ヘルニア手術では日帰りか短期入院かを選択いただけます。また土曜日の診察・手術も行っています。足の付け根のしこりや膨らみが気になる方はご相談ください。紹介状不要で受診いただけます。

当院のホームページはこちらです。

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