手術を受ける際には、体に身につけているものは原則すべて外す必要があります。その中でも今回は 「指輪」 にフォーカスし、手術前に外す理由や外れない場合の対応についてわかりやすく解説します。
結婚指輪やペアリングなど、普段つけっぱなしにしている方も多く、長年外していないため簡単には外れない方もいらっしゃいます。なぜ手術時に指輪を外す必要があるのか、また外れない場合の外し方について知っておくことで安心して手術に臨めます。
手術や麻酔の影響で体に 浮腫(むくみ) が生じると、指が太くなり指輪が指を締め付け、血流障害を起こす恐れがあります。
当院で行う 鼠径ヘルニア手術や胆のう摘出手術(腹腔鏡手術) は手術時間が約1時間程度で輸液量も多くなく、術中に大きくむくむことはほとんどありません。しかしリスク回避のため、手術前には指輪を外しておくことをおすすめしています。
手術中は止血や切開のため 電気メス(電気凝固装置) を使用します。その際、電気を体外へ逃す「対極板」を足に装着して安全に使用していますが、万が一指輪が手術台の金属部分に接触していた場合、電気が指輪を介して流れ、皮膚にやけど(熱傷)を起こすリスクがあります。
結婚指輪に多く使われる プラチナ、ゴールド、チタン、ジルコニウム、タンタル などの素材は通電性があるため、手術時には安全のため必ず外すことが推奨されます。
長期間指輪をつけていて外れない場合でも、以下の方法で外せる可能性があります。
1️⃣ 指輪と指の間に糸を通します
2️⃣ 指先側に15~20回程度、細かく糸を巻き付けます
3️⃣ 根本側の糸を引っ張りながら、巻き付けた方向と同じ方向へねじるように回します(青矢印)
4️⃣ これを4~5回繰り返すことで、少しずつ指の皮膚が根元へ移動し、指輪が抜けていきます
オリーブオイルや石鹸水で滑りを良くして行うのがおすすめです。糸は 2-0か0号の絹糸 が適しており、ナイロン糸など摩擦の低い糸は滑ってしまうため避けましょう。
この方法で私はこれまで約30名の患者さんの指輪を術前に外しており、今のところ全例成功しています。
外れない指輪がある場合には術前に相談していただければ外来でなるべくとるようにします。外した指輪は、指輪屋さんでサイズ変更も可能みたいですので、また大切にしていただければと思います。
もし取れない場合には、リングカッターで切断することもあるそうですが、当院では前述の理由のうち、指がむくむ可能性は低くやけどの予防が主なため、指輪のある手にゴム手袋をはめていただき通電しないようにして手術の準備をしたいと思います。
手術時には指輪以外にも ピアス、ネックレス、時計、コンタクトレンズ、義歯 は原則外していただきます。コンタクトレンズは乾燥防止のため外し、手術室へは眼鏡でお入りいただき、直前で眼鏡をお預かりいたします。義歯は麻酔科医と相談の上、外すかどうかを決定します。
手術を安全に受けていただくため、患者様ごとに最適な対応を行っておりますので、不安なことがあればお気軽にスタッフへお声かけください。
文責/医療監修 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森 学
※西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 COKU外科部門では、鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のう疾患に対して傷の小さな腹腔鏡手術を経験と資格の豊富な外科医が担当して手術を行っています。鼠径ヘルニア手術では日帰りか短期入院かを選択いただけます。また土曜日の診察・手術も行っています。足の付け根のしこりや膨らみが気になる方はご相談ください。紹介状不要で受診いただけます。
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