手術を検討される際、執刀医がどのような専門医資格を有しているかは、患者さんやご家族にとって重要な判断材料のひとつです。今回は、鼠径ヘルニア(脱腸)や胆のう手術に関連する外科・消化器外科領域の専門医制度についてご紹介しながら、当院外科医師の専門性についてお伝えします。
消化器外科領域の専門医資格は、医療の高度化と細分化を背景に、三層構造として整理されています。
初期臨床研修(卒後2年間)修了後、外科系(消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科など)に進む医師がまず取得を目指すのが「外科専門医」です。
この資格は、外科の基本的な知識・手技を修得し、専門研修プログラムを修了した後に試験に合格することで取得できます。通常、卒後7年目頃に取得されます。
さらに、後進の指導や教育に携わる医師は「外科指導医」を取得します。こちらは認定施設での指導経験に加え、学術業績(原著論文発表等)が求められるため、取得には卒後17〜18年程度のキャリアが必要です。
次に位置づけられるのが「消化器外科専門医」です。外科専門医取得後にサブスペシャリティとして取得する資格で、消化器外科全般の知識・技能が問われます。
受験資格には、指定修練施設での一定期間の研修、規定症例数の執刀・指導経験、さらに筆頭論文1編・共著論文2編以上、学会発表3件などの学術活動が含まれます。
認定試験は総論・上部消化管・下部消化管・肝胆膵脾の4領域から出題され、70%以上の正答率が求められます。
なお、「消化器外科指導医」という資格もあり、専門医取得後に十分な症例数や発表などの業績が認められれば取得できます。
最上位の3階層には、「内視鏡外科技術認定医」や「肝胆膵外科高度技能専門医」といった高次専門医資格が位置づけられます。
これらは、豊富な執刀経験に加えて術者自身による手術ビデオ審査を通過することが必要であり、実際の手術手技そのものが評価される極めて実践的な資格です。
例えば、内視鏡外科技術認定医の2023年の合格率は約31%と高難度であり、肝胆膵外科高度技能専門医は2011年から2022年までの累計でも全国で約500名に留まるなど、狭き門となっています。
当院の外科医師は全員が、
を取得しています。
さらに、3階層に位置する高次専門医資格としては、内視鏡外科技術認定医および肝胆膵外科高度技能専門医を取得しており、消化器外科領域における豊富な知見と高度な技術を有しています。
これらの資格は、知識だけでなく手術の実践的技能を含めた総合力が認められて初めて取得できるものです。当院では、こうした専門性を活かし、患者さんに対して安全かつ質の高い低侵襲手術を提供することを使命としています。
消化器外科領域における専門医資格の取得は、日々の診療・手術経験、そして学術的な探求の積み重ねによって支えられています。当院外科チームは、これらの経験と実績を礎に、患者さんが安心して治療を受けられる医療を実践してまいります。
文責/医療監修 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器外科部長 三賀森 学