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血便が出た!?

 便をした後、ふと便器を見ると、水が赤く染まっている。あるいはティッシュに血液が付着している。
 非常にびっくりされるかと思います。
 血便が出た場合にどういうことが想定されるか、どうしたらよいか、お話したいと思います。

直ちに受診が必要なケースは?

 血便自体、当日に急いで受診するべき状態と、そうでない状態があります。
 「意識を失った」「めまいがある」「便器の底が血で見えないくらい多量である」「冷や汗をかいている」「血圧が低い」「頻脈である」「倦怠感が強い」「顔色が悪い(真っ青である)」などは大量の出血である可能性があります。いわゆる「ショック」かそれに近い状態の可能性がありますので、急いで医療機関を受診してください。

考えられる出血部位

 血液は腸の中にいる時間が長ければ長いほど黒みを帯びる性質があります。
 鮮血の場合は、肛門付近か、肛門から近い大腸からの出血が想定されます。
 肛門から遠い大腸からの出血は、鮮血というより少し黒みがかっていることが多いです。
 例外として、大量出血の場合、肛門から遠い大腸でも赤みが強い便になります。
 また、十二指腸や小腸からの出血があると、黒色便になることが多いですが、大量出血の場合は赤に近い色になる場合があります。

考えられる病気

・腹痛を伴っている場合

 腹痛を伴う血便でよくあるのは虚血性腸炎です。
 虚血とは、医学的に「血が足りない」という意味です。何らかの原因(おそらく腸管内の圧力が便秘などで高いことが一因)で腸の粘膜が虚血に陥り、短期間で改善しますが、虚血によって傷んだ粘膜から出血します。
 初めは腹痛と下痢で始まり、数時間以内に血便に変わることが多いです。
 血便の量は多く見えますが、病院で採血をするとヘモグロビン値(血の濃さを表し、出血が多いと薄くなります)はあまり変わらないことが多く、代わりに炎症反応を認めます。
 CTで下行結腸~S状結腸が腫れていることが多く、特徴的です。

 潰瘍性大腸炎Crohn(クローン)病など、いわゆる炎症性腸疾患による血便もあります。
 原因不明に腸管の粘膜に炎症が起き、粘膜がボロボロになって出血し、腹痛も起こります。
 近年増加傾向で、従来若年の病気とされていましたが、高齢発症も増加しています。
 
 細菌性腸炎による血便もあり得ます。いわゆる食中毒です。
 カンピロバクター腸管出血性大腸菌赤痢アメーバなどが原因となります。
 食あたり→血便の流れは有名ですが、血便に至る食あたりはあまり多くありません。
 抗菌薬による抗生物質起因性出血性大腸炎も、抗生物質により有害な菌が大腸内で優位となって発症し、鑑別として重要です。

大腸憩室


 少ないパターンとして腸管子宮内膜症や、出血を伴う憩室炎などがあります。
 腸管子宮内膜症は腸に子宮内膜症が起きる病気で、生理の周期に合わせて血便が出ます。
 憩室炎とは、大腸の憩室(図にあるような、大腸の壁から飛び出した無数の部屋で、内視鏡でみると凹んだ穴のように見えます)に炎症が起きることです。
 多くの憩室炎は出血を伴いませんがまれに出血も伴って来られるケースがあります。


 これらについては、腹痛が落ち着いてから大腸内視鏡検査を行います。
 大腸癌による血便ではないかの除外が必要だからです。
 潰瘍性大腸炎やCrohn病については、禁忌の状況がなければ数日以内に大腸内視鏡を行うことが多いです。

・腹痛を伴わない血便

 腹痛を伴わない血便で最も重大なものはやはり大腸癌・ポリープです。
 大腸癌は組織がもろいため、便でこすれて出血し、見た目に赤い便となる場合があります。

 次にやっかいなものは結腸憩室出血です。先ほど出てきた憩室から大量に出血し、ヘモグロビン値も低下することが多いです。
 この場合炎症は伴わず腹痛はありません。便器の底が見えないような大量の血便が何度も出るため、救急受診が必要です。

 痔核出血は頻度の高い疾患です。内痔核は肛門痛なく出血し、鮮血のことが多いです。
 内視鏡や肛門鏡でないと痔の存在はわかりませんが、痔があるからといって痔核出血とは限らず、血便があれば全結腸内視鏡を受けることをお勧めしています。

 放射線性直腸炎もよく見かける疾患です。前立腺癌や子宮頸癌など、直腸の近くの癌に対する放射線治療後で、直腸に放射線が当たることで血管に異常が起き、出血します。
 アルゴンプラズマ凝固法(APC)と呼ばれる装置で焼きつぶす治療を行います。

 小腸・大腸の毛細血管拡張症も血便を来します。
 非常に小さな病変ですが止血術をしなければ自然に止血しないため、だらだらと出続けます。
 勢いのある出血ではないので、血便というより黒色便が症状になることも多いです。

 NSAIDs(消炎鎮痛剤)による大腸病変も出血を来すことがあります。
 例えば狭心症や脳梗塞などの血管がつまる病気を起こした方に、再発予防で出されるアスピリンですが、消化管に悪影響を起こす場合があり、全消化管に病変が出現し得ます。
 もちろんアスピリンがだめだと言っているのではなく(むしろ非常に有用な薬剤です)、副作用として認識しなければいけないという意味です。

 上記のように、血便という症候だけで考えられる病気は多岐にわたります。
 血便をはじめ、心配な症状がある方は、ぜひ当院へご相談下さい。

文責/医療監修 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉 章紀

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