大腸カメラ検査や胃カメラ検査は、食道や胃、十二指腸、大腸などの消化管を直接観察し、さまざまな病気の早期発見や診断に役立つ有用な手段です。「大腸カメラも胃カメラ検査も必要だと分かってはいるけれど、忙しくてなかなか時間をとれない」という方は多いのではないでしょうか。大腸カメラと胃カメラの検査では、検査前の食事制限や検査の流れが共通しているため、医療機関によっては同じ日に受けることが可能です。この記事では、大腸カメラと胃カメラの同日検査のメリットや注意点、検査の流れについて、詳しく解説します。
大腸カメラ検査と胃カメラ検査を同じ日に受けることは可能です。どちらの検査にも食事制限や時間的な拘束、投薬が必要ですが、2つの検査を同じ日におこなうことで、それらの負担をまとめることができます。ただし、高齢の方やハイリスクな病気を抱えている方は、身体の負担を考慮して、別の日に実施をおすすめする場合があります。
大腸カメラ検査と胃カメラ検査を同じ日に受けるメリットについて、スケジュール調整、費用、食事制限の回数の観点からご紹介します。
2.1. スケジュール調整の負担が減る
大腸カメラと胃カメラの検査を別の日に受ける場合、それぞれに事前受診、検査、結果説明のための受診が必要になります。2つの検査を同じ日に受けることで、これらの受診が半分で済み、スケジュール調整の負担が軽くなります。それぞれの診断結果を早く知ることができる点もメリットです。
2.2. 費用総額が安くなりやすい
2つの検査を別の日におこなうよりも、費用総額が安くなりやすくなることもメリットです。例えば、検査に関わる初診料や再診料、薬代、検査で使用される麻酔薬(鎮静剤)の料金など、2つの検査で重複している費用が節約できる可能性があります。また、検査日が同じ日になることで、来院回数が減るため、交通費の負担も抑えられるでしょう。
2.3. 食事制限が1回で済む
大腸カメラ検査や胃カメラ検査は、検査前に食事制限が設けられます。例えば、前日は21時までに夕食を終え、当日の朝は絶食する必要があるなど、検査に向けて事前に食事を調整しなければなりません。検査が別の日におこなわれる場合には、こうした食事制限が2回必要になります。しかし、2つの検査を同じ日におこなうことで、食事制限は1回で済み、時間と手間が軽減されます。これは特に忙しい方にとってはメリットといえるでしょう。
大腸カメラと胃カメラの検査を同じ日に受ける際の注意点について、副作用の可能性、実施可能な病院の少なさの観点からご紹介します。
3.1. 体質によっては麻酔の副作用が起こる可能性がある
大腸カメラと胃カメラの検査を同じ日におこなうことで、単独でおこなうよりも検査時間は長くなります。その分、検査中に使用する麻酔薬(鎮静剤)の量が増加するため、患者さんの体質によっては、血圧の低下や呼吸が弱くなるなどの副作用が生じる可能性があります。
3.2. 実施可能な病院を見つけることが難しい
大腸カメラ検査と胃カメラ検査を同じ日におこなう場合、検査時間が長くなるため、麻酔薬(鎮静剤)の適切な調整が求められます。そのため、高度な内視鏡挿入技術や麻酔薬(鎮静剤)の管理が必要になり、実績豊富な病院で熟練した医師やスタッフによる対応が求められます。このような条件を満たす病院は限られているため、同じ日に胃カメラ検査と大腸カメラ検査を受けられる病院を見つけるのが難しいといえるでしょう。
大腸カメラと胃カメラを同じ日におこなう場合、どのような流れで実施されるのでしょうか。検査の流れについては病院やクリニックによって異なります。ここでは、西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKU の同日検査について詳しく解説します。
4.1. 前日・当日の食事について
大腸に便や未消化の物質が残っていると、検査に時間がかかり正確な診断ができなくなります。できる限りスムーズな検査ができるように、検査の前日は消化に良いもの(素うどんやおかゆ、豆腐、たまご、やわらかく煮た大根や人参、プリン、ゼリーなど)を食べるようにおすすめしています。消化に悪いもの(ゴボウや葉野菜、トマト、ゴマ、とうもろこし、海藻類、ひじき、切り干し大根、こんにゃく、納豆など)は避けるようにしましょう。西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、検査前日の夕食は21時までに済まし、それ以降は、水分を除き当日の検査終了まで絶食としています。
4.2. 着替え・検査前のお薬の服用
大腸カメラ検査のために、検査前日の寝る前に下剤を服用し、当日も検査の5時間前から下剤の服用を開始します。(便が透明な状態であることを確認します。)来院したら検査着に着替えます。胃カメラ検査のために、胃の中の泡をとるための薬を服用します。鼻から内視鏡を入れる方は、鼻の粘膜を広げる点鼻薬を投与します。喉をしびれさせる麻酔薬の入った氷を口にふくんでいただきます。必要に応じて追加のスプレー麻酔をします。
4.3. 血圧・脈拍モニターを装着し麻酔
ベッドに横になり血圧計や脈拍モニター、酸素モニターを装着します。大腸カメラ検査、胃カメラ検査のどちらが先の場合も、左側を下にして横になります。口から胃カメラを挿入する方は、マウスピースをくわえます。(鼻から検査をする方は鼻の麻酔をします。)その後、鎮静剤(眠くなる薬)を点滴で投与し検査に入ります。(西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、大腸カメラ検査を受ける場合、原則鎮静剤を使用させていただきます。)
4.4. 胃カメラを挿入
胃カメラを挿入します。西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUで使用する胃カメラは、先端部が径5.8mmの、高画質細径カメラで、鼻もしくは口から挿入可能です。食道・胃・十二指腸の内視鏡治療には先端部径9.8mmの処置用スコープを使用します。どちらも、操作性に優れ、画質が良く、より精密な処置が可能です。
また、AI内視鏡システムを導入しており、病変がある場所をAIが表示します。検査の所要時間は7~8分程度で、検査中は常に血圧や脈拍をモニターで観察し、異常があればすぐに対応できる体制を整えています。
4.5. 大腸カメラの挿入
ベッドの方向を180度回します。左側を下にしたまま、膝を抱えるような姿勢になり、大腸カメラがスムーズに動くように肛門に麻酔ゼリーや潤滑用ゼリーを塗ります。肛門から大腸カメラを挿入します。この際も必要があれば鎮静剤を追加して投与します。大腸カメラは、先端径11.7mmの高画質カメラで、ポリープの診断に欠かせない拡大観察機能を併せ持っています。病変はAIが検出して表示する仕組みです。大腸カメラ検査の所要時間はおよそ、10分~20分程度です。
4.6. リカバリー室での休憩
検査後は、リカバリー室(休憩室)に移動し、ベッドで30分~1時間程度、ゆっくりお休みいただきます。リカバリー室でも血圧と血中酸素量のモニターで観察をしているので安心です。目が覚めたら、着替えをしていただきます。
4.7. 結果のご説明
当日、結果説明をご希望の方は、診察室で検査画像をみながら、一緒に確認しご説明します。
病理検査をおこなった場合は、結果が出るまで2週間ほどかかるので、後日、説明いたします。生検が必要だった場合は、病理検査結果がでる頃に再度受診をしていただいております。
西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、大腸カメラや胃カメラ検査の身体的負担をできるだけ軽減できるように徹底しています。安心して検査をしていただくための当院の検査の特徴についてご紹介します。
5.1. 検査時にかかる身体的負担を徹底的に軽減
大腸カメラや胃カメラ検査は「痛い」「苦しい」というイメージがありますが、西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは鎮静剤(麻酔薬)を用いて、うとうとしている間に検査を終えることができます。また、大腸カメラ検査で腸内菅を膨らませる際、空気の代わりに炭酸ガスを用います。炭酸ガスは腸管内で速やかに吸収されるため腸内に空気が長時間残らず、検査後のお腹の張りや痛み、違和感を和らげます。
5.2. ポリープが見つかった場合は治療に移行
西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUは病院施設のため、大腸カメラ検査中にポリープが見つかった場合、大きさが概ね2cm未満で出血のリスクが高くないものについては、そのまま治療に移行し検査中に切除しています(日帰り手術)。また、2cm以上の大きなポリープや早期がんを疑う病変は、別日に短期入院治療をおこなっています。
大腸カメラや胃カメラ検査は、「痛い」「苦しい」「我慢」といったイメージを持たれる方がいらっしゃいますが、内視鏡検査は、病変の早期発見や何らかの症状があるときの診断に有用な手段です。細いスコープや鎮静剤(麻酔薬)の使用、高い内視鏡技術により、なるべく苦痛の少ない検査を目指すことができます。また、大腸カメラと胃カメラを同日に検査することで、食事制限や受診回数、麻酔薬や鎮静剤の投薬回数を減らすことができ、時間的、身体的な負担を軽減できます。
西宮敬愛会病院の低侵襲治療部門COKUは、身体への負担をできる限り抑えた低侵襲外科治療を専門的におこなう病院です。内視鏡部門では、消化器内視鏡専門医・指導医資格を持つ経験豊富な内視鏡医が、最新のシステムと高い挿入技術を用いて検査をおこなうため、大腸カメラ検査と胃カメラ検査を同じ日におこなうことも可能です。また検査時には鎮静剤(麻酔薬)を使用することで、患者さんの苦痛を和らげるよう努めています。大腸カメラ検査や胃カメラ検査に関する不安なことがございましたら、いつでもご相談ください。