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胃痛が起こる原因や考えられる病気について解説

2024.09.30

胃痛は日常生活に支障をきたす場合があり、繰り返す場合は心配です。健康な胃では胃酸と粘液のバランスが保たれていて、これが崩れると胃粘膜が傷つき胃痛が起こります。痛む部位や痛みの出方はさまざまで、他の臓器に病気が見つかることもあります。胃痛の原因や考えられる病気を中心に検査方法、改善策について詳しく解説します。

1.胃痛が起こるメカニズム

胃痛は、胃の攻撃因子である胃酸と、防御因子としての粘液の分泌バランスが崩れることで発生します。通常、胃は粘膜で覆われており、胃酸(主に塩酸)が食べ物の消化と殺菌をおこないますが、同時に胃の粘膜を攻撃します。これに対抗するため、防御因子である粘液が胃粘膜を保護します。攻撃因子と防御因子のバランスが取れていると健康が維持されますが、ストレスや睡眠不足、暴飲暴食、脂肪や刺激物の多い食生活、喫煙などでこのバランスが崩れると、胃酸が粘膜を傷つけ、胃痛が起こります。

また、アニサキスのような寄生虫に対するアレルギーも、胃痛を引き起こす要因です。

2.胃痛の主な症状

胃痛といっても、胃痛を起こした原因や病気によってその症状はさまざまです。例えば、キリキリする痛み、しぼられるような痛み、鈍痛、みぞおち付近の痛み(心窩部痛:しんかぶつう)などです。また、胃痛には、次のような症状をともなうことがあります。

・食欲不振

・膨満感

・胸やけやげっぷ

・吐き気

・吐血や下血

3.胃痛の原因

胃痛のよくある原因として、ストレス、食生活、細菌やウイルスの感染、ヘリコバクター・ピロリ菌について取り上げて説明していきます。

3.1.ストレス

攻撃因子の胃酸と防御因子の胃粘液の分泌には、自律神経が関わっています。
ストレスがかかると緊張状態が続くため、自律神経のうちの交感神経が高まり、胃の血管が収縮して血流が低下し、胃粘液の分泌が少なくなります。そのうえ、副交感神経の働きで胃酸の分泌が増えることがわかっています。つまり、ストレスがかかると、攻撃因子と防御因子のバランスが崩れるため、胃粘膜が傷つきやすい状態になることが、ストレスで胃痛が起こる原因です。


3.2.食生活

胃痛は普段の食生活と深いかかわりがありますが、胃痛のリスクとして、次のような食生活があげられます。

  • 刺激物の多い食事

刺激物は、攻撃因子として胃の粘膜を直接傷つけたり、胃酸の分泌を増やしたりするため、胃痛の原因となります。例えば、香辛料の多い激辛のラーメンやカレー、カフェイン飲料やコーヒー、熱すぎたり冷たすぎたりする食べ物などです。

  • 脂肪分の多い食事

脂肪は胃では消化されずに十二指腸に送られますが、十二指腸で消化を助けるために分泌される消化管ホルモンは、胃の動きを抑える働きがあります。そのため脂肪分の多い食事をすると、食べ物が胃内に留まる時間が長く、胃に負担がかかるため、胃痛の原因となります。

  • 多量のアルコール

アルコールは、直接胃粘膜に刺激を与えたり、胃酸の分泌を促したりすることから、胃痛の原因となります。

3.3細菌やウイルス

細菌やウイルスは感染性胃腸炎の原因となり、胃痛のほか、腹痛、悪心・嘔吐、下痢、発熱などの症状をともなうことがあります。感染性胃腸炎を起こす原因の病原体によって、症状や治るまでの期間などは異なります。

3.4.ヘリコバクター感染

ヘリコバクターは、胃の粘膜内に生息する細菌のひとつで、感染があると胃の粘膜に慢性的な炎症を起こします。その結果、長い間に胃粘膜に特徴的な変化(萎縮:いしゅく)が起こり、胃粘液の分泌が減ることで、胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどの病気の原因となり、胃痛や胃の不快感などの症状が起こります。ヘリコバクターは、幼少期に保菌者の親から感染し、無症状のまま保菌することが多く、検診や胃カメラで感染が分かった場合には除菌が必要です

4.胃痛が起きた場合に考えられる消化器の主な病気

胃痛が起きた場合、胃そのものに病気がある場合だけでなく、胃の周辺の臓器に病気がある場合もあります。胃痛が起きた場合に原因として考えられる主な病気を紹介します。

4.1.急性胃炎

急性胃炎とは、胃の粘膜に急に炎症が起きている状態です。

  • 症状

突然胃が突然キリキリと痛み、吐き気や嘔吐、下痢などの症状をともなうこともあります。

  • 原因

痛み止めなどの薬の副作用、ストレス、激辛など刺激の強い食べ物、アルコールの飲み過ぎなどのことが多いようです。

  • 治療

通常、絶食や消化の良い食物で胃の安静を保つと症状は改善します。胃の粘膜を保護する薬を使うこともあります。

4.2.食中毒

食中毒は、細菌やウイルスなどの微生物が付着した食物を食べることで発症する病気です。

  • 症状

胃痛・腹痛、悪心・嘔吐、下痢・血便のほか、発熱や頭痛など全身症状があらわれることもあります。

  • 原因

肉や魚の生食や不十分な加熱、食品の不適切な温度管理や、原因物質が付着した手指による調理による料理を食べることで起こることが多く、食中毒の原因菌としては、サルモネラ菌、カンピロバクター、腸管出血性大腸菌(O-157など)、腸炎ビブリオ、ノロウイルス、黄色ブドウ球菌などが知られています。

  • 治療

食中毒が疑われる場合には、下痢止めや胃腸薬などを勝手に飲まずに、医療機関を受診することをおすすめします。医療機関では、食中毒の原因に合わせた治療と解熱剤などの対症療法、点滴による水分と栄養の補給がおこなわれます。

4.3.逆流性食道炎(胃食道逆流症)

逆流性食道炎は、胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症が起きる病気です。

  • 症状

すっぱいものが上がってくる呑酸(どんさん)、胸やけ、食後の胸の痛みなどが主な症状です。寝ている間に逆流すると、せき、のどのかすれや違和感などを生じる場合があります。

  • 原因

食道と胃のつなぎ目の下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)が、加齢による筋力低下、肥満や妊娠による圧迫、食べ過ぎなどにより緩むことが原因です。

  • 治療

生活習慣の改善や肥満の解消を心がけ、胃酸の分泌を抑える薬や、胃の動きを良くする薬などで治療します。

4.4.胃・十二指腸潰瘍

胃・十二指腸潰瘍は、胃や十二指腸の粘膜に潰瘍ができる病気です。

  • 症状

潰瘍のできた部位によって異なりますが、上腹部やみぞおちの鈍痛や吐き気などが主な症状です。胃潰瘍は食後、十二指腸潰瘍は夜間や空腹時に痛みが出ることが多いとされ、吐血や下血がある場合もみられます。

  • 原因

ヘリコバクター・ピロリ菌感染、解熱鎮痛薬、喫煙、ストレスなどが原因で、胃の防御因子が減り、胃から分泌される胃酸や消化酵素によって、粘膜にできた傷が深くなり発症します。

  • 治療

胃カメラで診断し、出血箇所を見つけた場合には、その場で処置具を使って、電気メスでの焼灼やクリップなどで止血することもできます。胃酸の分泌を抑える薬や、胃の粘膜を保護する薬を服用するだけでなく、食生活やストレス解消、禁煙など生活習慣の改善も必要です。

4.5.機能性ディスペプシア(機能性胃腸症)

ディスペプシアとは、腹部膨満感、胃痛などみぞおち付近の不快な症状を言いますが、これらの症状があるにもかかわらず、胃カメラやX線検査などで胃がんや胃潰瘍など、症状の原因が見つからない病気です。

  • 症状

慢性的な、胃もたれ、腹部膨満感、胃痛などみぞおち付近の不快な症状があります。

  • 原因

胃や十二指腸の動きが悪くなることや、胃酸に対して痛みを感じやすくなる胃の知覚過敏、ストレスなど、いくつかの要因が複合的に関わって発症します。ヘリコバクター・ピロリ菌が関係していることもあります。

  • 治療

生活習慣や食習慣を改善すると、症状が改善することがあります。薬物療法としては、胃酸の分泌を抑える薬と胃の運動を良くする薬、胃の動きや不安感を和らげる漢方薬を服用することがあります。効果がない場合には、抗不安薬や抗うつ薬を使うこともあります。

4.6.胃がん

胃がんは、胃の内側の粘膜の細胞が、何らかの原因でがん細胞になり、無秩序に増えていく病気です。

  • 症状

初期には症状がないことが多いですが、進行すると、胃痛、胃周辺の不快感・違和感、胸やけ、吐き気、食欲不振などの症状があらわれます。がんが大きくなると、胃粘膜の下層へ深く進み、周辺の他の臓器へも広がり、血液の流れにしたがって、離れた臓器に転移することもあります。

  • 原因

胃がんのリスクとして、ヘリコバクター・ピロリ菌感染、喫煙、塩分の摂りすぎが挙げられます。

  • 治療

胃カメラで胃がんが疑われる細胞を採取し、病理診断をおこない、病期などに合わせた治療法が選択されます。

4.7.胆石症

胆石症は、胆のうや胆管に石(胆石)ができる病気です。約8割は胆のう内に石ができる胆のう結石であり、約2割は胆管に石ができる総胆管結石です。肝臓の中にできることもありますが、ごくわずかです。

  • 症状

食後まもなく、右の肋骨の下あたりや、みぞおちにあらわれる痛みを、胃痛と感じることがあります。右肩に抜けるような痛みが出たり、吐き気や嘔吐をともなったりすることもあります。胆石ができる場所によって、胆汁の流れが悪くなると皮膚が黄色くなる黄疸になります。ただし、胆石症になっても症状がない場合も多く、胆のう結石では約8割の方が無症状です。

  • 原因

胆汁の成分が、何らかの原因で固まって胆石ができることが原因です。胆汁の成分であるコレステロールやビリルビンは、高カロリー食、肥満、脂質異常症、妊娠などに影響を受けることがわかっています。

  • 治療

胆のう結石は、無症状の場合には経過観察をし、症状がある場合は、基本的に手術で胆石と胆のうを一緒に切除します。総胆管結石は症状がある場合が多く、重症になることが多いため、胃カメラや手術で切除します。

4.8.膵炎

膵炎には、急性膵炎と慢性膵炎があります。急性膵炎は、何らかの原因で本来食べ物を消化する膵液によって、膵臓自体の組織が破壊される病気です。慢性膵炎は、膵臓に長期間にわたり炎症が持続することで、膵臓の組織が変化(線維化:せんいか)し、機能が衰える病気です。

  • 症状

急性膵炎の症状は、みぞおちから背中にかけての強い痛み、嘔吐や発熱です。慢性膵炎は腹痛が主な症状で、進行して膵臓がほとんど機能しなくなると、消化不良や下痢が起こることがあり、糖尿病を発症することもあります。

  • 原因

急性膵炎も慢性膵炎も、その原因のほとんどは、長期間に渡る多量の飲酒です。急性膵炎は胆石が原因の場合もあります。

  • 治療

急性膵炎の治療は、絶飲食をし、膵液の働きを抑える薬や痛みに対する鎮痛薬を使用します。慢性膵炎の治療は、膵臓の機能がどのぐらい保たれているかという病期によって異なりますが、禁酒、禁煙に膵液の働きを抑える薬や鎮痛薬を使います。

4.9.急性虫垂炎の初期

急性虫垂炎は、いわゆる盲腸です。大腸のもっとも奥の盲腸の部分にある、親指大の突起物の虫垂に、炎症が起きる病気です。

  • 症状

盲腸というと、右下腹の痛みのイメージですが、初期には食欲不振、へその周りの不快感、みぞおちの痛みがあり、胃腸炎の症状と似ています。その後、右下腹部に痛みが集中するように移動します。腹膜炎を併発すると、発熱、下痢、嘔吐をともなうことがあります。

  • 原因

虫垂に硬い便が詰まったり虫垂の粘膜が腫れたりすると、虫垂の出口がふさがることがあります。その結果、虫垂の粘膜の血流が悪くなったり、血の塊ができたりしたところに、細菌が感染すると虫垂に炎症が起こり発症します。

  • 治療

虫垂の炎症の程度や腹膜炎の併発の有無などにより、治療方法は異なります。治療には抗生物質で虫垂の炎症を抑える方法と、虫垂を手術で切除する方法があります。

4.10.アニサキス症

魚介類に寄生するアニサキスという寄生虫が、胃の粘膜に食い付くことで胃痛が起こる病気で、近年、増えています。

  • 症状

魚介類を刺身など生食で食べた6〜12時間後に、強い胃痛、吐き気、嘔吐などの症状が起こり、蕁麻疹などのアレルギー症状をともなうこともあります。

  • 原因

アニサキスが寄生している魚介類を生食し、胃の粘膜に食いつくことが原因です。胃痛は、アニサキスが食いついた痛みではなく、アニサキスという異物やアニサキスの分泌物に対するアレルギー症状によるものです。

  • 治療

胃カメラでアニサキスが確認できれば、同時に器具を使ってアニサキスを除去する治療をします。胃痛の前に生魚などを食べていれば、早急に胃カメラによる除去がすすめられます。

5.胃痛の改善方法

胃痛が起こる病気がある場合には、その治療が優先されますが、ここでは、日常生活の中でできる胃痛が起きた時の改善方法や予防方法について紹介します。

5.1.胃薬を使用する

胃薬は、胃の粘膜を保護する薬、胃酸の分泌を抑える薬、胃の動きを良くする薬、逆に胃の動きを抑える薬など多くの種類があるため、薬局やドラッグストアで薬剤師に相談して、自分の症状に合った適切な薬を選んでもらうことをおすすめします。

5.2.ストレスを解消する

ストレス解消は、胃痛を改善、予防することにつながります。十分な睡眠時間で休息することが大切ですが、気分転換や軽い運動など、自分なりのストレス解消法を見つけるようにしましょう。

5.3.食習慣を改善する

胃に滞留時間が長く、負担が大きい脂肪分の多い食事や、刺激物やアルコールなど胃粘膜に直接影響を与える食べ物などは、なるべく控えるようにしましょう。暴飲暴食は避け、消化の良い物を腹八分目にすることが、胃痛の改善・予防に役立ちます。

5.4.睡眠をしっかり取る

前述の通り、胃酸や胃粘膜の分泌には、自律神経が関わっています。睡眠不足や睡眠の質の低下は、自律神経のバランスを乱す原因になるため、睡眠をしっかりとることが胃痛の改善・予防につながります。

5.5.禁煙する

たばこに含まれるニコチンは、胃や十二指腸の血管を収縮させ粘液の分泌を減らすだけでなく、胃液の分泌を増やす作用があり、胃の粘膜に対する攻撃因子が優位になることで、胃痛の原因になります。禁煙は、胃痛の改善・予防だけでなく、胃がんをはじめとしたさまざまな病気のリスクを減らすことがわかっているため、禁煙することが大切です。

5.6.医療機関を受診する

胃痛を改善する方法を試してもよくならない場合には、医療機関を受診することをおすすめします。その場合には、消化器内科の専門医のいるクリニックで、必要に応じて胃カメラができることが望ましいでしょう。胃カメラで胃の粘膜を直接観察することで、胃痛の原因を見つけて、適切な治療をすることができるからです。

6.胃痛の原因を調べる検査

胃痛の原因を調べる検査について説明します。

6.1.超音波検査(腹部エコー検査)

胃痛であっても、胃以外の臓器に病気があることも多いため、肝臓、胆のう、胆管、膵臓、脾臓、腎臓、子宮、卵巣、膀胱、前立腺、胃、小腸、大腸などを観察することができる腹部超音波検査は有用な検査です。腹部超音波検査は、おなかに超音波をあてて、臓器への反射波を映像としてとらえ、異常の有無を調べる検査です。

6.2.血液検査

胃痛の原因や胃痛を生じる病気の状態を調べるために、血液検査をおこないます。血液検査では、主に肝機能(AST、ALT、γGTPなど)、貧血(ヘモグロビンの数値)、炎症の有無(白血球数、CRP)などを調べます。

6.3.胃カメラ(胃内視鏡検査)

胃カメラは、口や鼻から胃カメラ用のスコープを挿入し、食道、胃、十二指腸の粘膜を直接観察する目的でおこなわれる検査です。胃痛がある場合に胃カメラをおこなうと、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、逆流性食道炎、胃ポリープ、急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん、胃アニサキス症などの病気の有無や、重症度などを診断することができ、適切な治療につなげることができます。また、必要があれば、胃カメラと同時に出血部の止血などの治療や、組織の一部を採取して病理診断をおこない、良性・悪性の確認もできます。

西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、最新の内視鏡システムを導入し、可能な限り苦痛の少ない検査を目指しています。検査・治療は、総合病院で経験を積んだ日本消化器内視鏡専門医・指導医の資格を持った医師がおこない、AIによる見落とし防止システムも導入しています。受診当日や土曜日に検査することもできるため、胃痛の症状がある方は、是非ご相談ください。

7.まとめ

胃痛は、ストレスや睡眠不足などによる自律神経のバランスの乱れや、暴飲暴食、刺激の強い食べ物、喫煙などによって引き起こされます。これらの要因により、胃酸分泌と粘液分泌のバランスが崩れ、胃の粘膜が傷つきやすくなることが原因です。

胃痛の原因となる病気には、胃の病気だけでなく、周辺の臓器の病気もあります。正確な診断のために、腹部超音波エコーや血液検査、胃カメラなどの検査がおこなわれます。特に胃カメラは、食道から胃、十二指腸までの粘膜を直接観察でき、確実な診断と治療につなげることができる有用な検査です。最近では、細いスコープや鎮静剤の使用、鼻からの挿入などにより、苦痛の少ない検査が可能になっています。胃痛がある場合は、一度胃カメラを受けることをおすすめします。

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