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胃潰瘍とは?主な症状と原因、治療・予防方法について

2024.11.16

忙しい現代社会において、胃潰瘍は多くの人々が直面する健康問題の一つです。突然、胃の痛みや胸やけの症状が現れて、「もしかして、胃潰瘍では?」と不安な方がいらっしゃるかもしれません。胃潰瘍の原因としては主にピロリ菌が知られていますが、最近では薬剤による副作用も増えています。健康な生活を取り戻すためにも、胃潰瘍の原因や症状を正しく理解し、適切な治療を受けることが大切です。この記事では、胃潰瘍について、主な症状や原因、適切な検査・診断方法、そして効果的な治療法と予防策までを詳しく解説していきます。

1. 胃潰瘍とは

胃潰瘍とは、胃液に含まれる胃酸が胃壁を守る粘膜を傷つけ、一部が欠損した状態になる病気です。胃の粘膜は、粘液によって胃酸や消化酵素から守られています。しかし、何らかの要因で胃酸の量が増えると、強い酸性である胃酸によって、自らの胃の粘膜にダメージを与えてしまうのです。胃の壁は内側から粘膜層・粘膜下層・固有筋層・漿膜層の順に4層で構成されています。損傷が粘膜層で留まっている傷が浅いものを「びらん」、損傷が粘膜下層よりも深いものを「潰瘍」と言います。

2. 胃潰瘍の主な症状

胃潰瘍にはさまざまな症状があります。ここでは主な症状として、痛み・不快感・下血とに分けて説明します。

2.1. 痛み

胃潰瘍を発症すると特有の痛みが現れます。主に空腹時や食後に、上腹部やみぞおちに鈍い痛みを生じます。胃の背中側のあたる部分に痛みが出ることもあり、人によって痛みの程度は異なります。

2.2. 不快感

胃潰瘍により、胃もたれや胸やけ、げっぷ、食欲不振、吐き気や嘔吐などの不快な症状が起こることがあります。

2.3. 下血

胃潰瘍が悪化すると、潰瘍から出血が起こり、吐血や便に血が交じる黒色便(タール便)などの症状が見られることがあります。便が黒くなるのは、出血した血液が胃酸の影響を受け、ヘモグロビン中の鉄が酸化して便に混じるためです。胃から肛門までは距離があり、通過時間が長くなるため便が真っ黒になります。出血が続くと貧血を引き起こすことがあるので注意が必要です。ほかの自覚症状がない場合でも早めに受診することをおすすめします。

3. 胃潰瘍になる原因

胃潰瘍になる原因として、以前はピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が多かったのですが、現在は薬剤が原因となるケースが増えてきています。ストレスが胃潰瘍の原因になるともいわれていますが、日常に受ける程度のストレスであれば、潰瘍レベルにまでになるケースはほとんどありません。ここでは胃潰瘍の主な原因について説明します。

3.1. ピロリ菌

胃潰瘍の主な原因の一つがピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)という胃の中に生息している細菌です。ピロリ菌は乳幼児期に主に親子間での口移しで与えた離乳食や水などを介して感染することが多いとされています。ピロリ菌は、適切な薬物療法により除菌が可能です。

3.2. 薬剤の副作用

近年、胃潰瘍の原因として特に増加しているのが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や抗血小板薬、抗凝固薬(抗血栓薬)の副作用です。NSAIDsは痛みを和らげたり、炎症を抑えたりする薬ですが、服用によって胃の粘膜が傷つきやすくなり胃潰瘍を引き起こすことがあります。また、狭心症や脳梗塞の予防や治療のために処方される抗血小板薬や抗凝固薬も、NSAIDsと併用することで出血や潰瘍発症リスクが高まります。

3.3. 乱れた生活習慣

喫煙、アルコール、暴飲暴食、塩分の多いものや脂っこいもの、刺激物の過剰摂取は、胃酸の過剰な分泌を招き、胃潰瘍のリスクを高める原因となります。

4. 胃潰瘍に関連する検査・診断

胃潰瘍を疑う場合、主に胃X線検査(バリウム検査)と内視鏡検査(胃カメラ)をおこない診断します。それぞれの検査の特徴と、胃潰瘍の主な原因であるピロリ菌の有無の検査についても解説します。

4.1.胃X線検査(胃バリウム検査)

バリウム(造影剤)と発泡剤を飲み、胃を膨らませて検査をおこないます。胃の壁にバリウムを付着させ、そこにX線を当てて、胃壁の凹凸を観察する方法です。異常を発見した場合は、内視鏡検査でより詳しく検査をすることになります。

メリット

■身体の負担が少ない:体内に器具を挿入しないため、身体の負担が少ない。

デメリット

■精密な診断が難しい:微小な病変を見逃しやすい。

■組織を採取できない:直接組織を採取して詳しく調べることができない。

■被ばく:X線による被ばくがある。

■下剤の服用:バリウムを排泄するために下剤の服用が必要になる。

4.2. 内視鏡検査(胃の中を直接見る検査)

内視鏡(胃カメラ)を口や鼻から入れて、胃の内部を直接観察する方法です。胃の中を直接観察できるため、胃潰瘍の検査・診断には内視鏡検査が適しています。内視鏡検査では、胃潰瘍の状態や進行度、ピロリ菌感染の有無を確認できます。また、異常があれば組織を採取して病理検査を実施することができます。口からの内視鏡検査であれば、出血がある場合は止血処置も可能です。

メリット

■精度が高い:胃の粘膜を直接観察するため、わずかな潰瘍や病変を見つけやすい。

■組織の採取:その場で組織を採取し詳しい検査ができる。

■治療もできる:出血していた場合、その場で処置ができる。

デメリット

■痛み・不快感:口や鼻からカメラを挿入するため、喉の痛みや不快感、吐き気などがある。

■休憩時間が必要:痛みや不快感を緩和するために、鎮静剤を使う場合は回復にしばらく休憩が必要になる。

西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUの内視鏡検査では、日本消化器内視鏡専門医・指導医の資格を有している医師が担当しています。内視鏡検査の「痛い」「苦しい」といった不安をできるだけ軽減するために、鎮静剤を使ってうとうとしている間に検査を終えることができます。使用している内視鏡は先端部が細く、口からも鼻からも挿入が可能で、高画質カメラで精密に処置できます。その他、病変を見つけると知らせてくれるAIシステムを導入するなど、安心して検査を受けていただけるように工夫しています。

4.3.ピロリ菌の有無を調べる検査

胃潰瘍の主な原因のひとつであるピロリ菌の有無を調べることで、胃潰瘍の予防に役立ちます。会社や自治体の健康診断の際に検査を受けることも推奨されています。ピロリ菌検査には、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。

≪内視鏡を使わない検査≫

内視鏡を使わずに、吐いた息や血液、尿、便などからピロリ菌を調べる方法には次のようなものがあります。

尿素呼気試験

尿素の薬剤を口から投与し、その後、吐いた息のなかの二酸化炭素の量からピロリ菌の有無を確認します。

メリット

負担なく短時間で検査でき高精度。内視鏡を使わない検査の中では、最も信頼性が高い。

デメリット

プロトンポンプ阻害薬(胃液の分泌を抑え胃潰瘍などを治療する薬)などを服用している場合、偽陰性(感染しているのに、陰性と判定されること)となる可能性がある。

抗体測定

血液や尿を採取してピロリ菌に対する抗体があるかを確認します。

メリット

■血液や尿から簡便に検査できる。

デメリット

■除菌が成功しても抗体は一定期間残るため、陽性と判定されることがある。

便中抗原測定

便の中にあるピロリ菌の抗原を調べます。

メリット

■精度が高く、除菌前後の判定に用いられる。

デメリット

■便を採取する必要があるため抵抗感のある方にはストレスになる。

≪内視鏡を使う検査≫

胃内視鏡検査で胃の粘膜の組織を採取し、ピロリ菌の有無を確認する方法には以下のようなものがあります。

迅速ウレアーゼ試験

胃の組織と試薬を反応させて、ピロリ菌が作る酵素(ウレアーゼ)による色の変化を調べます。

メリット

■検査時間が短く迅速に結果が出る。

■試薬の色の変化を見るだけなので、判定が簡単。

デメリット

■プロトンポンプ阻害薬(胃液の分泌を抑え胃潰瘍などを治療する薬)などを服用している場合、偽陰性と判定されることがある。

鏡検法

胃の組織を染色しピロリ菌がいるかを顕微鏡で確認します。

メリット

■炎症の強さや、がん細胞の有無などについても診断できる。

デメリット

■ピロリ菌の量が少ないと判定が難しいことがある。

培養法

胃の組織をピロリ菌が発育しやすい環境で培養し、ピロリ菌の有無を調べます。

メリット

■特異度が高い(感染していない場合、陰性と正しく判定できる可能性が高い)

■培養したピロリ菌を使ってどの薬が効果的かを調べることができる。

デメリット

・結果がでるまでに5~7日程度かかる。

・感度が高くない(感染しているのに、陰性と判定される可能性がある)。

5. 胃潰瘍の治療方法

胃潰瘍の治療方法は、まずは胃液の分泌を抑えることが基本です。ピロリ菌を保有している場合は除菌治療をおこないます。また、胃酸の分泌を抑える薬剤の服用や生活習慣の見直し、出血が見られる場合は内視鏡で止血するなどの対策も必要です。以下で詳細を説明します。

5.1.ピロリ菌の除去

ピロリ菌を除去する抗菌薬とその効き目をよくするために、胃酸の分泌を抑える薬剤を1週間服用します。この段階で多くの場合は除菌することができますが、できなかった場合は異なる薬剤を用いて除菌を試みます。胃潰瘍の原因が服用中の薬剤の副作用の場合、疾患治療のためにその薬剤の中断が難しい場合は、できるかぎり中止せずに治療を進めることが重要です。

5.2.胃酸の分泌抑制と生活習慣の見直し

ピロリ菌に感染していない場合は、胃酸の分泌を抑え、胃の粘膜を保護するための薬剤(防御因子増強剤薬)により症状の改善を図ります。また、胃酸の分泌を促すコーヒーや紅茶、強い香辛料や消化に負担がかかる脂肪や繊維の多い食品を避け、食べ過ぎや不規則な食事時間にならないように注意します。その他、喫煙やアルコールを控える、適度な運動をする、過労やストレスを避けるなど、生活習慣全般の見直しが大切です。

5.3.内視鏡手術による止血

胃潰瘍が進行し下血が起きている場合、内視鏡手術によって出血を止める治療をおこないます。止血方法としては、熱凝固による方法、クリップで出血している血管や粘膜を圧迫する方法、薬剤を直接注射する方法があり、出血部位や出血量などの状態を考慮し適切な方法を選択します。

6. 胃潰瘍の予防方法

消化性潰瘍の多くはピロリ菌が原因です。そのため、ピロリ菌を保有しているか検査をし、保有していることがわかれば、早めに除菌治療をおこなうことが、胃潰瘍の予防方法として有効です。また、潰瘍発症の原因となる非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用している場合は、できるだけ副作用を避けるため、空腹時に服用しない、用法・用量を守り、1回あたり、あるいは1日あたりの用量を超えないように注意することが重要です。

暴飲暴食を避け、胃の粘膜に負担をかけるような刺激物を避けるなど、食生活を見直すことも大切です。

7. まとめ

胃潰瘍の原因の多くはピロリ菌や薬剤による副作用です。ピロリ菌に感染していても自覚症状はほとんどないため検査が必要です。

胃潰瘍は放っておくと傷が深くなり胃の壁に穴があくリスクがあります。腹膜炎を発症すれば、緊急手術が必要になる場合があるため、みぞおちの痛みや胸やけなど、何らかの症状が見られたら、早めに医療機関を受診することが大切です。
西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUは、身体への負担をできる限り抑えた低侵襲外科治療を専門的におこなう病院です。胃潰瘍の検査に欠かせない内視鏡検査は、消化器内視鏡専門医・指導医資格を持つ経験豊富な内視鏡医が担当します。検査時には鎮静剤を使用するため、うとうとしている間に終えることができます。胃の症状に不安がある方やピロリ菌の検査をしたい方はいつでもご相談ください。

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