予約・お問い合わせ 診断
お問い合わせ電話番号
0798-64-0059
0798-64-0059
医療関係者の皆様へのご案内はこちら

黒い便(タール便)が出る原因や考えられる疾患、対処法について解説

トイレでふと便器をのぞいたとき、いつもより明らかに「黒い便」だったら、不安になるでしょう。黒い便の中には、食事や服用している薬の影響による「あまり心配のいらない黒さ」もあれば、胃や食道、十二指腸など上部消化管からの出血による見逃してはいけないサインの場合もあります。

この記事では、黒い便やタール便の特徴や原因、受診が必要なタイミングなどをわかりやすく解説します。黒い便が気になっている方は、ぜひ参考にして、ご自身の状態を確認してみてください。

黒い便(タール便)の特徴

黒い便とは、ふだんより便の色が明らかに黒くなっている状態を指します。便の色は黄褐色~茶色であればおおむね正常ですが、さまざまな原因で黒っぽい色に変化することがあります。

黒い便の中でも、特に注意が必要なのは「タール便」です。タール便とはコールタールのような光沢のある真っ黒な便で、ドロッとして粘り気が強く、独特の悪臭をともなうのが特徴です。このようなタール便は、胃や十二指腸など上部消化管からの出血が疑われる重要なサインとなります。タール便が何度も続く場合は、出血が継続している可能性もあります。

黒い便が出る主な原因

黒い便が出る原因はさまざまで、食事や服用している薬剤の影響など、あまり心配のいらないケースもあれば、食道や胃、十二指腸などからの出血といった緊急性の高い病気が潜んでいる場合もあります。ここでは、黒い便が出る主な原因について詳しく見ていきます。

  • 食事の影響

食べたものや飲んだものの色が影響して、一時的に便が黒っぽく見えることがあります。この場合、タール便のような強い粘り気や特有の悪臭はなく、健康上に大きな問題はほとんどありません。黒い便が出ても、まずは慌てずに、ここ数日の食事内容を振り返ってみましょう。


次のような食品や飲料は、便を黒く見せる原因になります。

  • イカ墨を使った料理
  • 海苔やひじき、わかめなどの海藻類
  • プルーンや黒豆などの黒い色の食べ物
  • 赤ワインやチョコレート、ココアなど色素の濃い食べ物や飲料
  • 薬・サプリメントの影響

薬やサプリメントが原因で、便が黒くなることもあります。この場合も、多くは健康への影響は少なく、原因となっている薬剤の服用を中止すると、自然に元の色に戻ることがほとんどです。便を黒くする代表的な薬は次の通りです。


  • 鉄剤

鉄剤や鉄分を含むサプリメントを飲むと、吸収されなかった鉄分が消化管の中で酸化し、便に混じって排出されるため、便が黒くなります。


  • ビスマス製剤

下痢止めなどに含まれるビスマスという成分が、腸内で硫化水素と反応して黒い物質をつくることで、便が黒く見えることがあります。


  • 薬用炭

下痢やお腹のガスが気になるときまた解毒に用いられる薬用炭を服用すると、色が便に混ざるため、便が黒く見えるようになります。

消化器系の疾患の影響

黒い便の中には、食事や薬による一時的な変化ではなく、胃・十二指腸・食道などの上部消化管からの出血が原因となっている場合もあります。このような黒い便は「タール便」と呼ばれ、注意が必要です。黒い便が出る具体的な疾患については、次の章で詳しく解説します。

黒い便が出た時に考えられる疾患

黒い便、特にタール便が出たときは、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がん・食道がんをはじめとする、消化器疾患が隠れていることがあります。ここでは、黒い便と関連の深い代表的な病気と、その際に起こりやすい症状についてご紹介します。

 

  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃や十二指腸の粘膜がただれたり、潰瘍(かいよう)ができて出血したりすると、その血液が消化され、黒い便(タール便)として排泄されることがあります。

黒い便以外の症状として、胃潰瘍では、みぞおちの痛みをはじめとする腹痛が挙げられます。食後に痛みが起こることが多く、胃もたれや吐き気、食欲不振、潰瘍からの出血による貧血症状が見られることもあります。

一方、十二指腸潰瘍では、みぞおちに痛みをともなうことが多く、空腹時に腹痛が起こり、食事をとると和らぐのが特徴です。

 

  • 胃がん・食道がん

胃や食道の粘膜にできる悪性腫瘍は、早期のうちは自覚症状に乏しいものの、進行すると腫瘍からの出血により黒い便(タール便)が出ることがあります。

黒い便以外の症状として、胃がんでは、胃もたれや胃痛、食欲不振、体重減少、貧血などがみられます。食道がんでは、食べ物がつかえる感じや嚥下(えんげ)時の違和感、声のかすれ、咳、体重減少、貧血などを引き起こすことがあります。

 

  • 胃炎

胃粘膜の炎症により、粘膜表面から少量の出血が続くと黒い便がみられることがあります。また、食後の胃の痛みや不快感、胸やけ、吐き気などの症状が出ることもあります。

 

  • 食道静脈瘤破裂(しょくどうじょうみゃくりゅうはれつ)

食道静脈瘤は、肝硬変などの肝疾患が原因で、食道の血管に強い圧がかかり、コブ状に膨らんでしまった状態を指します。出血が始まるまでは、ほとんど症状が出ないことが多いとされています。しかし、ひとたび静脈瘤が破裂したり潰瘍化したりすると、食道から急に出血が起こり、鮮やかな赤い血を吐く、あるいは大量に吐血するといった症状がみられます。この出血は、強い痛みをともなわないまま吐血としてあらわれることが多いのが特徴です。吐いた血液の一部は胃や腸の中を通って消化され、黒く変化して「タール便」として排泄されることがあります。

 

  • 大腸ポリープ

大腸ポリープは、大腸の粘膜にできるイボ状の隆起で、表面がこすれることで、少量の出血が起こる場合があります。通常は鮮血便や暗赤色の血が混じる血便として排泄されることが多いですが、出血部位が大腸の奥にある場合や腸内での滞留時間が長い場合には、血液が変化して便が黒っぽく見えることもあります。

 

  • 大腸がん

大腸がんは、早期にはあまり自覚症状がなく、進行すると便に血液が付着したり、便に混じったりする症状がみられることがあります。通常は赤〜暗赤色の血便であることが多いですが、腫瘍が大腸の奥にある場合や、血液が腸内に長くとどまった場合には、血液が変化して黒っぽく見えることもあります。がんが大きくなると、便が細くなったり、残便感が続いたり、体重減少がみられる場合があるため注意が必要です。

受診のタイミング目安

黒い便が出たからといって、すべてが重大な病気とは限りません。イカ墨料理や海藻類、赤ワインなどの食事や、鉄剤・薬用炭などの薬の影響の可能性もあります。

ただし、次のような場合には、早めに西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUなど消化器専門の医療機関を受診することをおすすめします。

  • 色が濃くドロッとしたタール状になっている。
  • 黒い便に加えて腹痛・吐き気・貧血・めまい・体重減少などがある。
  • 黒い便が出ていて、胃潰瘍・肝硬変・血液凝固異常などの既往歴がある。

自宅でできるセルフケア

黒い便を予防・早期発見するためには、日常生活におけるいくつかの工夫が重要です。食事や薬を見直し、腸の動きを整えるための生活習慣の改善や、便の変化や体の症状を観察することが大切です。

ここでは、黒い便を防ぐための自宅でできるセルフケアについてご紹介します。

 

  • 食事・薬を見直す

黒い便が一時的なものであれば、食事が影響している可能性があります。イカ墨入りの料理やプルーンなど、色の濃い食材を控えてみて、便の色が元に戻るか確認してみましょう。

鉄剤やビスマス製剤など、黒色便の原因となる薬を服用している場合は、医師や薬剤師に相談してみましょう。これらの薬やサプリメントを服用中に便が黒くなっても、多くの場合は健康に大きな問題はなく、服用を中止すると自然に戻ることがほとんどです。ただし、自己判断で服用を中止せず、気になる場合は必ず処方医や薬剤師に相談しましょう。

 

  • 水分・食物繊維・運動で腸の動きを整える

便秘が続くと、便の水分が抜け、いつもより濃く見えることがあります。便秘の改善には、こまめな水分補給や野菜・海藻・きのこ・果物などに含まれる食物繊維を積極的にとることが大切です。軽いウォーキングやストレッチなどの適度な運動も腸の動きを整えるのに役立ちます。便通が整えば、いつもと違う便にも気づきやすくなります。

 

  • 便の変化と症状を観察する

自宅でできる大切なセルフケアのひとつが、便の変化と症状の観察です。便の色や回数、におい、形状などを数日間記録しておくと、受診時に医師へ説明しやすくなります。

黒い便に加えて、痛み・ふらつき・貧血症状などをともなう場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

黒い便が続く場合は早めの受診を

黒い便が出る原因には、食事や薬の影響による一時的なものから、胃や腸からの出血をともなう疾患までさまざまなものがあります。イカ墨料理や海藻、鉄剤などを摂取した後に1回だけ黒い便が出て、その後は普段どおりの色に戻るようであれば、数日様子を見てもよいでしょう。しかし、原因として明確なものが思い当たらない場合や、タール便が続く場合には注意が必要です。特に腹痛、吐き気、ふらつき、動悸、貧血などの症状をともなう場合は、重篤な病気が隠れていることがあります。自己判断で放置せず、なるべく早めに医療機関を受診することをおすすめします。

西宮敬愛会病院低侵襲治療部門COKUでは、高い内視鏡挿入技術、最新の内視鏡システムを用いて、心と体の負担の少ない内視鏡検査を心がけています。ご希望や必要に応じて鎮静剤・鎮痛剤の使用も可能です。また、ポリープや早期がんの切除が必要な場合には、入院での内視鏡治療や、麻酔科専門医による全身麻酔下での内視鏡治療にも対応しています。検査や治療の前には、専門の内視鏡医が丁寧に説明をおこなっています。黒い便が続く、タール便があるなど、消化器の症状が気になるといった場合には、いつでもご相談ください。

この記事を監修した人

嶋吉 章紀

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 COKU 消化器内科部長

  • 資格:
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医・指導医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本肝臓学会専門医 など
当院の新規患者様が2000名を超えました
2025.08.28

開設から2,000名以上の新規患者様にご来院いただきました

質の高い大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
2025.07.08

質の高い大腸内視鏡検査とは?ポリープ切除と腺腫発見率の重要性

内視鏡とアロマ
2025.07.03

「内視鏡検査とアロマ」シリーズ第3弾:気持ちを整える“サイプレス”の香り

内視鏡検査とアロマ第2弾
2025.06.28

【内視鏡検査とアロマ】シリーズ第2弾:ローズの香りでリラックス

内視鏡検査食そうめん
2025.06.26

【大腸カメラ前日④】夏にぴったり!そうめん&盛岡冷麺メニュー

ホスピタルズ・ファイルに当院消化器内科部長・嶋吉のインタビュー記事が掲載されました。
2025.04.25

ホスピタルズ・ファイル

無駄な大腸ポリープ切除を避ける方法
2025.01.24

無駄な大腸ポリープ切除を避ける方法

2024.12.21

【大腸カメラ前日③】ぽかぽか温まる「おでん」メニュー|看護師が教える安心夕食

内視鏡スクリーニング認定医
2024.12.20

内視鏡スクリーニング認定医(上部消化管・下部消化管)に認定されました。

胃カメラと大腸カメラ、同時にして大丈夫?
2024.10.03

胃カメラと大腸カメラ、同時にして大丈夫?

お探しの情報は見つかりましたか