大腸カメラ検査は、大腸がんをはじめとした病気の早期発見に非常に効果的なうえ、小さながんや、がんになる前のポリープなどをそのまま切除することもできます。
最近では、鎮静剤を用いて苦痛なく検査できる施設も増えてきました。しかし、「費用が高いのでは」「保険適用にならないのでは」と費用面の不安から検査に踏み出せない人も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、大腸カメラ検査の費用の相場や、変動するポイント、費用を抑える方法について解説します。
大腸カメラ検査の費用相場は、主に保険が適用されるかどうかによって大きく変わる他、検査中にどのような処置がおこなわれるかによって最終的な費用が変動します。これは、検査で何が見つかり、どのような対応が必要になるか検査をしてみないと分からないためです。
それでは令和6年度の診療報酬点数に基づき費用の目安や内訳について見ていきましょう。
大腸カメラ検査の目安費用は、保険診療として認められる場合と、自由診療となる場合で大きく異なります。
保険診療は、症状があり医師が必要と判断した場合に適用され、自己負担の割合は1~3割と費用を抑えられるメリットがあります。
一方で、自由診療は、症状がなくても検査を受けたい場合や、より詳細な検査を希望する場合に選ばれることが多く、医療機関によっては最新の機器や質の高いサービスを受けられる可能性があります。
また、症状を踏まえて大腸カメラ検査をどこまでやるかによっても費用は大きく異なります。以上を踏まえて大腸カメラ検査の費用目安を保険診療と自由診療の場合に分けてご紹介します。
保険診療の場合は、大腸カメラ検査の費用が診療報酬制度によって定められているため、全国どの医療機関でも検査費用自体は4,650円(3割負担)と一定です。これに追加検査の費用や、検査に用いる薬剤費用が上乗せになり、さらに病理組織検査が必要な場合にはさらに加算されます。保険診療であっても、医療機関によって加算される費用は多少の違いがあります。
・大腸カメラのみ(観察のみ)
大腸カメラを用いて大腸の始まりである盲腸の部分から肛門部分までを観察し、異常がないか確認する検査です。以下には検査必要な薬剤などの費用が含まれています。
・大腸カメラ + 生検
大腸カメラで疑わしい箇所を発見した場合、組織を採取(内視鏡下生検)して顕微鏡で観察し病理診断する検査です。以下には検査必要な薬剤などの費用が含まれています。
・大腸カメラ+ポリープ
大腸カメラでポリープを発見した場合、ポリープを切除する処置です。切除したポリープは、生検時と同様に顕微鏡で観察し病理診断します。
ポリープの数や大きさに左右されますが、長径2cm未満のポリープ1個切除の場合
自由診療の場合、医療機関ごとに費用を自由に設定できるため、料金には差があります。当院では、自費で大腸カメラ検査(観察のみ)を受ける場合、費用は32,000円となります。なお、生検やポリープ切除など追加の処置が行われた場合には、別途費用がかかります。詳細については事前にお問い合わせください。
ひとくちに大腸カメラ検査の費用といった場合でも、検査自体の費用の他にさまざまな費用が含まれています。これは、大腸カメラ検査を実施するために必要な診察や処置にかかる費用を含むためです。大腸カメラ検査費用の内訳を解説します。
医療機関を受診した時に必ずかかる費用で、初診料または再診料が発生します。初めて受診する医療機関では初診料890円(3割負担)です。すでに受診歴のある医療機関では再診料390円(3割負担)です。
基本的な大腸カメラ検査の費用は、4,650円(3割負担)です。粘膜面を特殊な光で強調して詳しく観察する場合(狭帯域光強調加算)には約600円(3割負担)、染色を施し病変部を浮かび上がらせて観察する場合(色素内視鏡法加算)には180円(3割負担)が加算されます。また、ポリープを切除する場合、病変検出支援プログラム加算で180円(3割負担)が加算されます。
検査前に腸を観察しやすくするための下剤や、検査中の鎮静剤などの費用が含まれます。下剤は当院では3割負担で570円~680円の場合がほとんどです。鎮静剤および鎮痙剤は使用する種類や量によって異なりますが、3割負担でおおむね100円~1000円程度かかります。
検査中に異常が見つかり、採取した組織を顕微鏡で詳しく調べる際にかかる費用です。
病理検査料は2,580円~7,740円(3割負担)、病理診断料390円(3割負担)です。
具体的には、組織を顕微鏡で検査できるようにするためのプレパラートの作成や病理組織顕微鏡検査で診断する費用が含まれます。
ポリープなどが見つかった場合に、その場で切除することで発生する費用です。ポリープの大きさや数によって金額が変わりますが、長径2cm未満のポリープを1個切除する場合で約20,000円(3割負担)です。
大腸カメラ検査の最終的な費用は、検査中にどのような状況だったかによって変動します。特に費用に影響を与えやすい3つのポイントを解説します。
大腸カメラ検査は、人によっては苦痛を感じる場合があります※。そのため、必須ではありませんが、検査中の苦痛を和らげるために鎮静剤を使用することがあります。
約100〜300円(3割負担)の追加費用です。
検査中に炎症がある部分や、粘膜の色調や形に異常のある部分が見つかった場合、組織の一部を採取して詳しく調べる検査をおこなうことがあります。これを生検といいます。
採取された組織は、病理検査に回されて、顕微鏡でがん組織かどうかなどを詳しく調べます。
組織を採取する費用と顕微鏡検査費用、病理診断の費用、結果説明の費用を合わせて約4,300円の追加費用です。
大腸ポリープの中には、将来大腸がんになる可能性のあるものもあります。
ポリープ切除をおこなった場合、切除する手技料と、切除したポリープの病理検査費用が加算されます。(ポリープの数や大きさ切除方法によって費用が変動します。)
手術扱いのため加算される費用は高くなります。
2cm未満のポリープ1個を切除した場合、約20,000円(3割負担)の追加費用です。
このように検査中に発見された病変に対して追加の処置がおこなわれるかどうかで最終的な費用は変わってきます。
大腸カメラ検査が保険適用されるかどうかは、検査を受ける目的によって異なります。
大腸カメラ検査は、医師が医学的な必要性を認めて、病気の診断や治療方針の決定、治療効果の確認などを目的としておこなう場合に、健康保険が適用されます。
具体的には以下のようなケースです。
つまり、医師が医学的な必要性を認めておこなう大腸カメラ検査は、基本的に健康保険が適用され、自己負担額に応じた費用となります。
以下の場合には健康保険が適用されず、全額自己負担となる自由診療となります。
ご自身の検査が保険適用になるか不明な場合には、予約時に医療機関に確認することをおすすめします。多くの場合は、症状があったり、検診での異常をきっかけにして検査を受けたりするため、保険適用となるケースがほとんどです。
大腸カメラ検査が重要だとわかっても、やはり費用は気になるものです。費用負担を少しでも軽減する可能性があるものをご紹介します。
お勤めの会社によっては、社員の健康管理の一環として、健康診断や特定の検査に対して助成や補助をおこなっている場合があります。大腸カメラ検査を対象としていることもあるため、会社の健康保険組合や人事部、福利厚生部門などに確認してみましょう。
多くの市区町村では、住民に向けてがん検診の費用補助をおこなっています。
大腸がん検診としては、便潜血検査が一般的です。しかし、自治体によっては一定の年齢の方や便潜血検査で陽性だった方などの条件を満たす方を対象に、大腸カメラの費用の一部を助成する制度を設けている場合があります。
一年間にかかった医療費(保険適用分)が一定金額(通常10万円)を超える場合、確定申告をすることで医療費控除を受けることができます。具体的には、所得税や住民税の軽減として減額を受けられます。大腸カメラ検査にかかった費用の他、検査のための交通費なども医療費控除の対象となるため、利用を検討する場合には併せて領収書も保管しておきましょう。
大腸カメラの費用は、検査内容や処置、保険適用によって変動します。しかし、費用の内訳やご自身の状況を知ることでおよその費用を予測することができます。
費用の不透明さから検査を控えたくなるかもしれませんが、大腸カメラ検査は大腸がんの早期発見と早期治療に非常に有効です。検査費用は、将来の大きな心身の負担と経済的負担を回避する費用と考えることもできます。
ご自身の健康と将来のために、費用の不安を解消し、前向きに大腸カメラ検査を検討してみてください。