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足の付け根にしこりや痛みがある病気とは?原因や受診の目安を解説

足の付け根にときどき現れる膨らみを手で押したり横になったりすると元に戻り、痛みはあまりないが下腹部に違和感があるといった症状はありませんか。もしかすると「鼠径ヘルニア」という病気かもしれません。鼠径ヘルニア以外にも足の付け根にしこりや痛みが現れる病気は多く、治療せずに放っておくと命にかかわる可能性があります。

足の付け根「鼠径部」に現れるしこりや痛みの原因となるさまざまな病気について、さらに受診すべき診療科と受診のタイミングについて解説します。

1.足の付け根「鼠径部」とは

足(太もも)の付け根のややくぼんだ部分から斜め上へと向かう線、いわゆるVライン(ビキニライン)付近とVラインからやや内側のあたりを「鼠径部(そけいぶ)」と呼びます。この部分に「鼠径管」という細い管があることからこう呼ばれています。

2.足の付け根にしこりや痛みが起こる原因

足の付け根にしこりや痛みが起こる原因には、鼠径部にあるリンパ節の腫れや静脈瘤、女性に特有のヌック管と呼ばれる部分に水がたまるヌック管水腫などがあります。多くは弱くなった鼠径部の組織から腹膜の一部が飛び出してしまう「鼠径ヘルニア」によるものです。

3.足の付け根にしこりや痛みがある場合に考えられる病気

足のつけ根にしこりや痛みがある場合に考えられる代表的な病気は鼠径ヘルニアですが、鼠径ヘルニアと似ている別の病気や、血管やリンパの病気、腫瘍なども考えられます。ここでは、足の付け根にしこりや痛みがある場合に考えられる病気についてご紹介します。

3.1. 鼠径ヘルニア

鼠径ヘルニアは腸など内臓の一部が皮膚の下に飛び出して、足の付け根あたりにぽっこりとした膨らみができる病気です。

  • 症状

膨らみはおなかに力を入れたり、立っているときに現れ、横になったり指で押し戻したりすると引っ込んで目立たなくなります。初期には軽い痛みや不快感がある程度ですが、放っておくと飛び出した内臓が戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」が起こり、強い痛みや内臓の壊死、腸閉塞をともなうこともあります。

  • 原因

大人の鼠経ヘルニアは、加齢により鼠径部の腹壁が弱くなるために起こります。この部分はもともと薄く、重いものを持ったり、いきんだりしておなかの圧力(腹圧)が高まることで、穴があいて内臓が飛び出すことが原因です。子供の鼠経ヘルニアは先天性です。

  • 治療

一度あいた穴が自然にふさがることはないため、手術で穴をふさぎます。手術は穴の部分をメッシュ状のシートで補強する方法が一般的です。

3.2. 鼠径部リンパ節腫大(そけいぶりんぱせつしゅだい)

鼠径部にあるリンパ節が手で触れてわかるくらいの大きさに腫れる症状です。

  • 症状

通常は2~3ミリのリンパ節が1センチ以上に腫れます。痛みをともなうことが多いのですが、痛みがない場合もあります。

  • 原因

多くの場合、腫れは感染による免疫反応で起こりますが、膠原病(こうげんびょう)などの自己免疫疾患や悪性腫瘍が原因の場合もあります。リウマチなど膠原病の治療薬で腫れが起こることもあります。

  • 治療

感染が原因の場合は、病気が治ることで自然によくなります。腫瘍や膠原病が原因の場合は病気の治療が必要です。膠原病治療薬を使用中にリンパ節が腫れてきた場合は主治医に相談してください。

3.3. 鼠径部皮下腫瘍(そけいぶひかしゅよう)、鼠径部皮下膿瘍(そけいぶひかのうよう)

鼠径部の皮膚に下にしこりができたり、膿が溜まったりしている状態です。

  • 症状

鼠径部皮下腫瘍の場合、痛みはなく皮膚が丸く盛り上がるか、皮膚の下にごろごろしたしこりを感じます。鼠径部皮下膿瘍の場合は痛みがあり、熱をもって赤く腫れる場合があります。

  • 原因

粉瘤(ふんりゅう)や石灰化上皮腫という表皮が変形・変質してできる腫瘍や、脂肪のかたまりの脂肪腫が多く見られますが、いずれも良性の腫瘍です。膿瘍は化膿性汗腺炎などの皮膚炎が主な原因となります。

  • 治療

良性腫瘍の場合は手術で切除または摘出します。皮膚炎が原因の場合、軽症であれば抗菌薬による治療、重症化している場合には手術により患部を切除します。

3.4. 大伏在静脈瘤(だいふくざいじょうみゃくりゅう)

太ももからふくらはぎの内側を流れる大きな静脈にコブのような膨らみができる下肢静脈瘤の一種です。

  • 症状

静脈血管がコブのように膨らんで見えるほか、足のだるさやむくみ、こむらがえりなどが起こります。進行すると出血したり潰瘍を起こしたりすることもあります。

  • 原因

立ち仕事や肥満、妊娠などで静脈内の圧力が高まったり、加齢で筋力が弱くなったりすることで静脈の弁がこわれ、血液が逆流することで起こります。

  • 治療

生活習慣の改善や弾性ストッキングの使用で進行を抑える保存療法や、静脈を切除する外科手術、レーザーや高周波で血管内を焼く血管内治療などが適用されます。

3.5. ヌック管水腫

女性に特有のヌック管という鼠径部の管に水が溜まる病気です。

  • 症状

鼠径ヘルニアとよく似た膨らみが特徴で、痛みをともなうことがあります。鼠径ヘルニアや異所性子宮内膜症を合併している場合があります。

  • 原因

生まれる前の赤ちゃんには、おなかの下の方の腹膜が伸びて袋状になった管がありますが、通常は生後まもなく閉鎖します。この管が閉鎖せずに残り、中に水がたまることで起こります。

  • 治療

鼠径ヘルニアと同様、自然に治ることはないため手術によって患部を切除します。水腫の内容物に子宮内膜組織が混じっていることがあるため、切除した水腫を検査、診断します。

3.6.      粉瘤・脂肪腫

粉瘤(ふんりゅう)とは、表皮が陥没してできた空洞に皮脂や垢などが溜まったおでき状の膨らみです。脂肪腫は皮膚の下にできる脂肪のかたまりで、どちらも良性の腫瘍です。

  • 症状

通常、どちらも痛みはなくドーム状の膨らみがみられるだけですが、粉瘤の中心には小さな穴があり悪臭のする内容物が出てくることがあります。睾丸と体内をつなぐ精索(せいさく)に生じる「精索脂肪腫」の場合、鼠径ヘルニアと合併していることがあります。

  • 原因

粉瘤、脂肪腫ともに原因は不明ですが、粉瘤はケガやニキビなどから生じることがあります。

  • 治療

粉瘤も脂肪腫も痛みがなく、小さいものであれば経過観察となります。炎症を起こしたり、大きくなり過ぎた場合には手術で取り除きます。

4. 足の付け根にしこりや痛みがある場合は何科を受診すべき?

足の付け根にしこりや膨らみがあって押すと引っ込む、立っている時間が長いと膨らんでくる、横になると膨らみがわからなくなる、などの症状がある場合は鼠径ヘルニアの可能性があります。痛みには個人差があり、痛みを感じない方もいます。これらの症状がある場合は外科(ヘルニア外来)または消化器外科を受診しましょう。

一方、リンパ節の腫れでも触るとしこりを感じ、ときに赤く腫れたり押すと痛んだりします。全身の発熱を伴い数日のうちに現れた症状であればウイルス性の感染症が疑われます。このような症状の場合は早めに内科を受診しましょう。また、粉瘤に細菌感染が起こると熱をもって赤く腫れ、急に大きさを増す場合があります。このような場合は皮膚科を受診してください。

痛みはあるがしこりはない、逆にしこりはあるが痛みはない、全身に倦怠感がある、どくんどくんと脈打つしこりがある、などの症状がある場合はほかの病気の可能性があります。まずはかかりつけ医に相談してみましょう。

5. 足の付け根にしこりや痛みがある場合の受診の目安

足の付け根にしこりや痛みが起こる原因には鼠径ヘルニアやヘルニアに類似した病気、リンパ節の腫れ、血管にできたコブ、腫瘍など多くの種類があります。このうち、リンパ節の腫れによるしこりは小さいことが多く、しこりが1cm以下であれば正常な生体反応と考えられるので、発熱や痛みをともなわない場合は少し様子をみてもいいでしょう。

ただし、鼠径部にしこりが起こる病気のなかには放っておくと悪化してしまう病気も多くあり、原因を特定するためにも早めの受診をおすすめします。患部がデリケートな場所だけに受診をためらったり、膨らみがあっても押すと元に戻るから、と受診を先延ばしにしてしまう方も少なくありません。原因がわかるだけでも気持ちが楽になりますから、鼠径部に異状を感じたら、どの診療科でも構いませんので、まずはかかりつけ医の先生に相談してみましょう。

6. まとめ

鼠径部とその周辺には動脈・静脈やリンパ節、生殖器、大腸などさまざまな臓器があり、鼠径ヘルニアをはじめ、しこりや痛みの原因となる病気が起こる可能性があります。鼠径ヘルニアのような良性の病気でも放っておくと命にかかわることがあり、リンパ節の腫れや痛みのないできものでもその背後には悪性の病気が隠れているかもしれません。

症状によって適切な診療科を受診するのが望ましいのはいうまでもありませんが、それよりも気になる症状を放置せず、どの診療科でもよいので早めに医師に相談することが大切です。

この記事を監修した人

三賀森 学

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 COKU 消化器外科部長/医学博士

  • 資格:
  • 日本外科学会外科専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会専門医・指導医
  • 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医
  • 日本ヘルニア学会評議員

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