正式には上部消化管造影検査と呼びます。
胃透視検査や胃部X線検査と呼ばれる場合もあります。
費用が安いことやのどへの刺激が少ないこと、移動式の検査室が利用できることなどから今でも胃癌検診ではよく用いられています。
X線を通さない白い液体(バリウム)を飲み、レントゲンをとることで、食道・胃・十二指腸を浮かび上がらせて検査をしています。
今回は、胃癌検診で異常所見がついていた場合にどういう病気が想定されるかについて記載します。
不整であるとは、通常より形がギザギザしていたりでこぼこしていることを言います。慢性胃炎や胃癌で起こり得ます。
胃は食べ物を入れるために伸び縮みしますが、癌や潰瘍などで胃の壁が硬くなると伸び縮みが悪くなります。
胃の壁がくぼんでバリウムが溜まっている像です。深い胃潰瘍や胃癌で見られます。
胃の一部が盛り上がっているように見える像で、胃ポリープや粘膜下腫瘍、胃癌の可能性があります。
胃の一部が凹んで見えていることを陥凹性病変と呼びます。胃炎や胃癌、潰瘍で認められます。
粘膜が隆起しているためにバリウムがたまりにくくなった場所を示し、バリウムの白色に対して黒く抜けたように映ります。ポリープや胃癌などの可能性があります。
バリウムを胃内に満たしたときに、本来映っているはずの胃の壁が映っていない場所をいいます。比較的大きなポリープや、胃癌、胃粘膜下腫瘍などの疑いがあります。
胃は普段、食事が入ってきたときに膨らむためのシワ(襞)があり、それがX線で映ったものをいいます。襞の形がでこぼこすることをレリーフ不整、1か所にシワが集まっている像をレリーフ集中(ひだ集中)、シワの間隔が広がり腫れぼったくなっている像をレリーフ肥大(皺襞腫大)と呼びます。いずれも胃潰瘍や胃炎、胃癌の可能性があります。
胃粘膜には通常、胃小区と呼ばれる網目状の模様がありますが、胃炎や胃癌でこれらの所見の規則性が失われることがあります。これをアレア不整と呼びます。
粘膜の一部がくぼみ、バリウムが少したまった場所のことを呼びます。胃炎、胃潰瘍、胃癌などの可能性があります。
食べ物の通り道が狭くなっていることを言います。潰瘍が治ったあとや、癌によって起こる場合があります。
胃の中に飛び出た病変をポリープと呼びます。経過観察でよいか精密検査を要するかは、アルファベットの判定区分やコメントで記載されていることが多く、基本的にはそちらに従っていて問題はありませんが、今までに一度も胃カメラを受けたことがない方は、一度どういうポリープであるか胃カメラで確認しておくほうが安心です。バリウムでは病変の色や細かい表面性状の観察が難しいからです。
ピロリ菌が胃内に寄生しており、それによる胃炎が起きている状態を指します。バリウムで慢性胃炎が指摘され、今までに胃カメラを受けたことがない場合は、必ず検査を受けて、ピロリ菌の有無を確認したほうがよいです。なぜなら、ピロリ菌が陽性のままだと、85歳までに男性の17.0%、女性の7.7%が胃癌にかかると推定されているからです。
バリウムの所見については専門的な言い回しが多く戸惑われることも多いと思います。
異常所見が付いていて、一度も胃カメラでの精密検査を受けたことがない方は、一度受けておくことをお勧めします。 上記にある通り、多くの場合に癌の可能性が否定できないためです。
文責/医療監修 西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 消化器内科部長 嶋吉 章紀