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便が細いのは危険信号?原因や考えられる病気、改善策・受診の目安について

「最近、便が細くなった気がする」「以前より形が変わったかも」そんな小さな変化に、不安を感じたことはありませんか?便の太さや形は、普段あまり意識しないかもしれませんが、腸や肛門の健康状態を反映する大切なサインでもあります。特に細い便が続く場合、腸の通り道に何らかの異常が起きている可能性もあります。

この記事では、便が細くなる原因や考えられる病気、注意すべき症状に加え、日常生活でできる対処法まで、初めての方にもわかりやすく解説します。

1.正常な便とは?

私たちの健康状態は、日々の便にも表れます。では「理想的な便」とは、どのようなものでしょうか?医学的には、以下のような特徴をもつ便が「正常な便」とされています。

  • バナナ状
  • 直径3〜4cm程度
  • 黄褐色〜薄い茶色
  • 強い悪臭ではない

便が細くなる原因

便が細くなる背景には、腸や肛門の構造的な変化だけでなく、生活習慣や精神的な要因など、さまざまな原因が関係しています。ここでは、病気以外に便が細くなる主な原因について解説します。

2.1.癌による狭窄

腸の通り道が狭くなると、便が細くなることがあります。代表的な原因として、大腸がんなどの腫瘍性病変が挙げられます。がんによる腫瘍が増大することで便の通り道である腸管が徐々に圧迫され、通過スペースが狭くなります。そのため、細い便が続くケースも見られます。

2.2.肛門の手術による狭窄

痔などの肛門疾患で手術を受けた場合、その後の傷跡や組織の変化によって、肛門の出口が狭くなることがあります。また、手術後に肛門の動きがスムーズに連動しなくなることも、便の形に影響を与える一因となっています。排便時に「すっきりしない」「出し切れない」といった違和感や残便感がある場合は、肛門の狭窄が関係している可能性があります。

2.3.食生活の変化

脂っこい食事や加工食品の過剰摂取、偏った食事内容、不規則な食事時間などの生活習慣は、腸の働きを乱す原因になります。こうした乱れが続くと、便がまとまりにくくなり、細くなったり、形が崩れたりしやすくなります。とくに注意したいのが、水分や食物繊維の不足です。水分が足りないと、便が硬くなり、腸内をスムーズに通れなくなるため、形が押しつぶされて細くなることがあります。また、食物繊維には腸内の善玉菌を増やして腸の動きを整える働きがあるため、不足すると腸内環境が乱れ、排便のリズムや便の形にも影響が出やすくなります。

2.4.ストレス・自律神経の乱れ

ストレスや不安といった心理的な影響は、自律神経のバランスを乱しやすく、腸の働きにも大きく関わっています。腸が過敏に反応すると、動きが不規則になり、便がうまく形づくられなくなることがあります。こうした変化により、便秘や下痢が起こりやすくなり、便が細く崩れやすくなります。

2.5.便秘

  1. 便秘とは、便が腸内に長くとどまることで水分が過剰に吸収され、便が硬くなる状態を指します。硬くなった便は腸内をスムーズに通過しにくくなり、排便時に強くいきむことで、細く変形しやすくなります。
    とくに、乾燥した細い便が少しずつしか出ない場合や、排便に時間がかかる場合には、腸の動きや水分バランスの乱れが関係している可能性があります。

また、便意を感じても我慢する習慣があると、直腸に便がたまりやすくなり、腸の働きが鈍くなる原因になります。このような状態が続くと、便秘が慢性化し、細く硬い便が見られるようになります。

3.便が細い時に考えられる病気

便が細い状態が続くとき、その背景には病気が関係していることがあります。そのなかでも、腸や肛門に異常があると、便の太さや形に影響が出ることがあります。単なる体調の変化と思っていたら、実は病気のサインである可能性もあります。

この章では、便が細くなる症状が見られる代表的な病気と、それぞれの特徴についてわかりやすく解説していきます。

3.1.過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群は、腸に炎症や異常が見られないにもかかわらず、慢性的な腹痛や便通異常(便秘・下痢など)を繰り返す疾患です。腸の運動が不規則になることで、便がしっかり形成されず、細く・柔らかくなることがあります。特に「便秘型IBS」では、排便困難や残便感が続き、無理に出そうとして便がちぎれ、細い便になることがよくあります。腸が過敏に反応し、ガスがたまりやすくなる、便意が頻繁に起こるなど、腸の動きに振り回されるような感覚が特徴です。排便後もすっきりせず、お腹が張って不快感が続くこともあります。

3.2.大腸ポリープ・大腸がん

大腸ポリープや大腸がんは、腸内にできる腫瘍やしこりで、便の通過路を物理的に狭くする原因になります。特に直腸やS状結腸など、便の通過に重要な部位に腫瘍ができると、鉛筆のように細い便が続くことがあります。ポリープは多くの場合、良性ですが、一部は将来的にがん化する可能性のある腺腫性ポリープであり、経過観察や切除が必要とされます。がん化すると、腫瘍が腸の内側にせり出すように発育し、便の通り道が狭くなることで、細く平たい便や不整形な便が出やすくなります。また、出血や便通異常をともなうこともあるため、「いつもと違う便」が続く場合は、早めに内視鏡検査などを受けることが大切です。

3.3.痔(内痔核など)

痔核や肛門周囲の病変が進行すると、肛門の出口部分に腫れや出血、狭窄が生じることがあります。このような場合、排便時に腸内の便が圧迫されて細くなったり、排便時にちぎれやすくなったりします。とくに長年痔を放置していた場合や手術歴がある場合は、便の形状にも変化が見られることがあります。

3.4.炎症性腸疾患(クローン病・潰瘍性大腸炎など)

クローン病や潰瘍性大腸炎は、腸に慢性的な炎症が起こる病気で、まとめて「炎症性腸疾患」と呼ばれます。これらの病気では、腸の粘膜にただれができたり、炎症によって腸の内側が狭くなる「狭窄」が生じたりすることがあります。

こうした変化により、便の通り道が細くなり、便がうまく通過できずに細くなってしまうことがあります。また、腸の粘膜が傷つくと、便の形が整いにくくなり、細く柔らかい便や不規則な形の便が続くこともあります。さらに、症状が強いときには、粘液が混じった便(粘液便)や血便、何度もトイレに行きたくなるような下痢などが見られることもあります。

3.5.癌などによる腸閉塞

腸閉塞とは、腸の一部がふさがれて、便やガスといった腸の内容物が先へ進めなくなる状態です。原因としては、大腸がんのほかに、腸が途中でグルッとねじれてしまう「腸捻転(ちょうねんてん)」や、手術後の腸同士の癒着などが挙げられます。腸閉塞が起こると、腸内の圧力が上がり、便の通過が困難になって細く変形した便になることがあります。あわせて、腹痛やお腹の張り、吐き気、ガスの排出がうまくいかないといった症状が見られる場合は、腸内で内容物がスムーズに流れていないサインと考えられます。

4.便が細い時に注意すべき症状

便が細くなる原因にはさまざまなものがありますが、以下のような症状が見られる場合は、体からの重要なサインである可能性があります。

  • 血便(鮮血、黒色便)
  • 激しい腹痛、吐き気、嘔吐
  • 急激な体重減少
  • 発熱、だるさなどの全身症状
  • 便が突然細くなり、持続する場合

これらの症状に心当たりがある場合は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。放置せず、早めに対応することで、大きな病気の予防や早期発見に繋がります。

5.便が細い時に受ける検査

便が細い状態が続く場合、腸の状態に異常が生じている可能性があります。医療機関では、以下のような検査が行われることがあります。

  • 腹部レントゲン
    腸の形やガスのたまり方を確認し、腸閉塞や腫瘍などの有無を調べます。
  • 便潜血検査
    便に混じった目に見えない微量の血液を検出する検査で、大腸ポリープやがんによる出血の早期発見に役立ちます。検出率を高めるため、2日間連続で便を採取する「2日法」を実施する場合もあります。
  • 大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査
    肛門からカメラを挿入し、大腸全体を直接観察できる検査です。ポリープや腫瘍、狭窄の有無を確認でき、必要に応じてその場で組織を採取したうえで、ポリープを切除することも可能です。腸の状態を詳しく把握することで、便が細くなる原因を明らかにし、早期発見と適切な治療方針の決定に役立てます。

5.便が細い時の対処法・改善方法

便が細くなる原因が病気によるものではない場合は、生活習慣を見直すことで症状の改善が期待できることがあります。ここでは、毎日の生活の中で意識したい3つの対処法をご紹介します。

6.1.食生活の見直し

理想的な便の状態を維持するには、日々の食生活を整えることが基本となります。

なかでも重要なのが、食物繊維の摂取と栄養バランスの調整です。

食物繊維には、不溶性と水溶性の2種類があり、それぞれ異なる作用を持ちます。

  • 不溶性食物繊維(野菜、豆類、玄米など)

水に溶けにくく、便のかさを増やして腸を刺激し、蠕動運動を促します。

  • 水溶性食物繊維(海藻、果物、こんにゃく、大麦、ごぼうなど)

水分を含んで便をやわらかく保ち、排出をスムーズにします。また、腸内の善玉菌を増やす働きもあります。

さらに、食事全体の栄養バランスとして、PFCバランス(たんぱく質13〜20%、脂質20〜30%、炭水化物50〜65%)を意識することも大切です。

以下の3つの実践ポイントを日常的に取り入れることで、腸の働きをより効果的にサポートできます。

1.起床後にコップ1杯の水を飲む

起床時の水分補給は、眠っている腸をやさしく刺激し、排便を促すスイッチになります。

また、日中は起床後・食後・入浴後など、タイミングを意識してこまめに水分を補うことが、腸内の水分バランスを保つ鍵になります。

2.副菜を意識した食事で、腸のバランスを整える

主食・主菜・副菜を組み合わせたバランスのよい食事は、腸の健康を支える基本です。

とくに野菜やきのこ、海藻などの副菜には、食物繊維やビタミン、ミネラルの大切な供給源が含まれています。

厚生労働省などが推奨する食事バランスでは、副菜は主菜や主食と同じくらい、またはそれ以上にしっかりとることがすすめられています。

例えば、「お皿の半分に野菜をのせる」「食事ごとに2品以上の副菜を添える」といった工夫が、腸の調子を整えるサポートになります。

3.朝食には発酵食品を取り入れる

味噌汁や納豆、ヨーグルトなどの発酵食品は、腸内環境を整える善玉菌をサポートします。
朝食に取り入れることで、腸のコンディションを整える習慣がつきやすくなり、便通の改善にもつながります。

6.2.

運動は、腸のぜん動運動を促すうえで非常に効果的です。特別なトレーニングをおこなう必要はありません。ウォーキングや軽いストレッチ、階段の昇り降りなど、日常生活に取り入れやすい軽い運動を継続することが大切です。とくに、朝の散歩は自律神経のバランスを整える効果もあり、排便リズムの安定にもつながります。デスクワークなどで長時間同じ姿勢が続く方は、1〜2時間に一度は体を動かす時間をつくるよう意識しましょう。

6.3.排便習慣の見直し

排便のリズムが乱れていると、便が細くなったり、便秘を引き起こしたりする原因になります。毎日の生活の中で排便しやすい環境や行動を意識することが、腸の働きを高めるうえで大切です。排便をスムーズに行うために、次の3つのポイントを意識してみましょう。

  1. 規則正しい排便習慣をつける

朝は腸の動きが活発になる時間帯です。毎朝決まった時間にトイレに行く習慣をつけることで、腸がリズムを覚え、排便のタイミングが整いやすくなります。たとえ便意がなくても一定時間座ることで、排便反射を促す効果が期待できます。

  • 適切な排便姿勢をとる
    排便しやすい姿勢としては、前かがみの体勢が推奨されます。足台などを使って足を少し高くすると、直腸の角度が緩やかになり、自然な排便が促されます。リラックスできる環境を整えることも重要です。
  • 便意を我慢しない
    便意を感じたときに我慢する習慣が続くと、直腸の感覚が鈍くなり、便秘を引き起こしやすくなります。できるだけタイミングを逃さず、便意があればすぐにトイレに行くよう心がけましょう。

ご自身の生活スタイルに合わせて、自分のペースでできることから少しずつ取り入れていくことが、健康的な排便リズムを整える第一歩になります。まずは「意識すること」から、日々の習慣を見直してみましょう。

7.「便が細い」と感じたら早めの対処が大切!

便の太さや形は、腸や肛門の健康状態を映し出す大切なサインです。細い便が続く場合は、食事や排便習慣の影響だけでなく、大腸の形状や内部の異常が関係していることもあります。血便や腹痛などを伴うときは、重大な病気が隠れている可能性もあるため、注意が必要です。

一方で、生活習慣を見直すことで改善が期待できるケースも多くあります。排便リズムや運動、食物繊維の摂取など、日々の小さな積み重ねが腸内環境に大きく影響します。「なんとなく調子が悪いかも」と感じた段階で向き合うことが、将来の健康を守る第一歩になります。

こうした便通の変化にいち早く気づき、必要に応じて専門的な評価を受けておくことが大切です。
西宮敬愛会病院の低侵襲治療部門COKU内視鏡センターでは、消化器疾患に特化した診療体制を整えており、日常的な便通の悩みから内視鏡検査まで幅広く対応しています。消化器内科の専門医が、丁寧な問診や検査を通して原因を見極め、症状や不安に応じた適切なアドバイス・治療をご提案いたします。

「最近、便が細い気がする」「ちょっと気になるけれど、様子を見ている」そんな段階でも構いません。症状が軽いうちに相談できることが、安心への第一歩です。どうぞお気軽にご相談ください。

この記事を監修した人

嶋吉 章紀

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 COKU 消化器内科部長

  • 資格:
  • 日本消化器内視鏡学会専門医
  • 日本消化器病学会専門医・指導医
  • 日本内科学会総合内科専門医
  • 日本肝臓学会専門医 など

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