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内鼠径ヘルニアとは?症状・原因・外鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアとの違いを解説

「足の付け根が少しふくらんでいる」「立ったときや力を入れたときに違和感がある」。そんな症状がある場合、もしかしたら内鼠径ヘルニアかもしれません。内鼠径ヘルニアは、主に中高年の男性に多くみられる鼠径ヘルニアの一種です。初期には痛みがほとんどなく、ふくらみを押すと元に戻ることもあるため、そのままにしてしまう方も少なくありません。しかし、進行すると違和感や痛みが強くなり、腸閉塞や腸の壊死につながる「嵌頓(かんとん)」という状態になることがあります。

この記事では、内鼠径ヘルニアの症状や発症の原因、外鼠径ヘルニアや大腿ヘルニアとの違いといった基本的なことから、診断方法や治療法まで、気になることをわかりやすく解説します。

内鼠径ヘルニアとは?

内鼠径ヘルニアは、鼠径部のやや内側にある「ヘッセルバッハ三角」と呼ばれる部分から腸などが押し出されて起こるタイプのヘルニアです。「ヘッセルバッハ三角」は、腹壁の一部で、周囲と比べて弱い部分です。加齢による腹壁を支える筋力の低下に加え、腹圧がかかりやすい生活習慣などが関係しており、後天的に発症することが多い傾向にあります。

内鼠径ヘルニアの症状

内鼠径ヘルニアの主な症状は、下腹部から足の付け根にかけて、内側寄りに現れるふくらみです。張るような感覚や重だるさなどの違和感をともなうこともあります。ふくらみは、立っているときや咳・くしゃみなどでお腹に力が入ったときに目立ち、横になると小さくなったり、見えなくなったりすることがあります。

内鼠径ヘルニアが中高年男性に多い理由

内鼠径ヘルニアは、特に中高年の男性に多くみられ、女性の発症はまれとされています。主な原因は加齢による腹壁の筋力低下です。そこに、重いものを持つ、便秘でいきむ、咳が長く続く、肥満などによって腹圧が繰り返しかかると、弱くなった腹壁が内側から押され、腸などが飛び出しやすくなります。

内鼠径ヘルニア・外鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアの違い

足の付け根が膨らむ「鼠径ヘルニア」。実はその膨らみ方や現れる場所によって、原因や治療の緊急度なども変わってきます。3つのタイプの違いを知っておくことが、早期対応の第一歩です。ご自身やご家族に当てはまる特徴はどれか、それぞれの違いを見ていきましょう。



≪内鼠径ヘルニア≫

内鼠径ヘルニアは、鼠径部の内側にある腹壁の弱い部分(ヘッセルバッハ三角)から、腸などが押し出されるように脱出するタイプで、中高年以降の男性に多くみられます。加齢による筋力低下や腹圧が繰り返しかかる生活習慣が主な原因です。小さなうちは奥行きが少ないため嵌頓のリスクは低めですが、大きくなって奥行きが深くなると他のタイプのヘルニアと同様に嵌頓のリスクが高まります。

≪外鼠径ヘルニア≫

外鼠径ヘルニアは、足の付け根にある「鼠径管」という通り道に腸などが入り込み、その通り道に沿って外へ押し出されるタイプです。胎児期にあった腹膜の通り道が十分に閉じていないことが関係し、乳幼児期から中高年まで幅広い層にみられます。陥頓リスクはやや高めです。

≪大腿ヘルニア≫

大腿ヘルニアは、鼠径靱帯より下にある大腿輪から腸などが脱出するタイプです。中高年の痩せ型の女性に多く、加齢や出産などが関係すると考えられています。陥頓のリスクが高いため注意が必要です。

 内鼠径ヘルニア外鼠径ヘルニア大腿ヘルニア
発症部位鼠径部の内側
(腹壁の弱くなった部分)
鼠径管
(足の付け根のやや外側)
大腿輪(足の付け根のさらに下の部分)
主な原因加齢による筋力の低下・
腹圧の繰り返し
生まれつき腹膜の通り道が残っていることや腹圧大腿輪の弱まり加齢・出産
好発年齢中高年乳幼児〜中高年中高年
性別傾向男性に多い男性に多い女性に多い
陥頓
リスク
やや低いやや高い高い

内鼠径ヘルニアを発症しやすい人の特徴

内鼠径ヘルニアは加齢によって鼠径部の腹壁を支える筋肉や筋膜が弱くなることが原因で発症しやすいヘルニアであり、特に中高年に多くみられます。

たとえば、重いものを持つ機会が多い引っ越し業や配送業などの仕事、長引く咳や便秘によるいきみなど、腹圧がかかる生活習慣も内鼠径ヘルニアの発症リスクを高める要因です。

内鼠径ヘルニアの診断方法

内鼠径ヘルニアの診断では、まず問診で症状を確認し、視診・触診だけで診断できることがほとんどです。しかし、典型的な症状が確認できない場合や、他の病気が疑われる場合には、超音波検査やCT検査などの画像診断を追加し、ヘルニアの位置や大きさ、状態をより正確に把握します。精索脂肪腫など、鼠径ヘルニアに似た病気との鑑別にも役立ちます。

●視診・触診

立った状態や横になった状態で鼠径部にふくらみがないかを目で確認したうえで、実際に手で触れて大きさや硬さ、痛みの有無などを調べます。安静時にはふくらみが分かりにくい場合があるため、お腹に力を入れてもらい、腹圧がかかったときにふくらみが現れるかを確認します。また、立っていると現れて横になると小さくなるか、左右差があるか、隆起の大きさ・位置の変化、固さなども併せて確認します。

●超音波検査

視診や触診だけでは判断しにくい場合には、超音波検査をおこないます。鼠径部に検査機器を当て、ヘルニアの様子をリアルタイムで観察します。被ばくの心配がなく短時間で検査できますが、画像の鮮明さの面ではCT検査に劣るとされ、空気を含む腸管や肥満の場合は精度が下がりやすく、検査者の技量にも左右されます。

●CT検査

CT検査では、体を輪切りにした断面画像で確認します。超音波検査よりも情報量が多く、ガスや骨に隠れた部分まで映し出せるため、ヘルニアの位置や大きさ、左右両側の状態まで詳しく把握できます。また、うつ伏せの体位で撮影するため、超音波検査では判断が難しい小さなヘルニアや、触診では見つけにくいヘルニアの発見にも役立ちます。ただし被ばくをともなうため、子どもや妊婦には超音波検査が優先されます。

内鼠径ヘルニアの治療法

内鼠径ヘルニアは腹壁に穴があいているため、自然治癒することはありません。根本的な治療には手術が必要です。現在の内鼠径ヘルニアの標準的な手術方法は、飛び出た腸などをお腹の中に戻したうえで、腸などが飛び出す原因となっている腹壁の弱い部分に医療用メッシュを当てて補強する方法が広くおこなわれています。

主な術式は、「腹腔鏡手術」と「鼠径部切開法」の2種類です。

近年は腹腔鏡手術の方が多く行われています。腹腔鏡下手術は、おへその下などに数ヵ所、5〜10mmの小さな穴を開けて、腹腔鏡を挿入し、カメラでお腹の中を見ながら、内側からメッシュを当てて穴をふさぐ方法です。1か所の傷で行う単孔式TEP法という方法もあります。傷口が小さい分術後の痛みも軽減されやすく、社会復帰までの期間を短縮しやすい点が特徴です。

鼠径部切開法では、足の付け根を4~6cmほど切開し、体の外側からメッシュを留置します。前立腺手術後など腹腔内側からの手術が困難な場合に行います。

患者さまの状態に合わせて最適な方法を選択します。

内鼠径ヘルニアを放置するリスク

内鼠径ヘルニアを放置して、特に奥行きが大きくなると、「ヘルニア門」と呼ばれる腹壁にあいた穴に、腸の一部が挟まり込み、お腹の中に戻らなくなる嵌頓を起こすことがあります。陥頓の状態を放置すると、挟まった腸が強く締め付けられて血流が妨げられ、腸閉塞や腸の壊死などの合併症につながるおそれがあります。陥頓が起きると命に関わる場合もあるため、緊急手術をおこなう必要があります。陥頓が起こっていなくても、鼠径部のふくらみや違和感、痛みがある場合は、早めに医師の診察を受け、適切な治療について相談することが大切です。

内鼠径ヘルニアに関するよくある質問

内鼠径ヘルニアに関して、患者さまからよく寄せられる質問をご紹介します。

  • 内鼠径ヘルニアは自然に治りますか?

内鼠径ヘルニアは自然に治ることはありません。放置すると嵌頓が生じるリスクがあるため、痛みがない段階で早期に受診することが大切です。

  • 内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアはどう見分けるのですか?

内鼠径ヘルニアと外鼠径ヘルニアは、どちらも足の付け根がふくらみますが、ふくらみの位置や発症年齢、性別などから、おおよそ推測できます。ただし、確定診断には医師による診察や画像検査が必要です。

  • 内鼠径ヘルニアは手術をしないで治療をする方法がありますか?

内鼠径ヘルニアを根本的に治療するためには、手術が必要です。手術をするタイミングや術式は、患者さまの身体の状態によって異なるため、まずは医療機関を受診し、医師へ相談することが大切です。

  • 内鼠径ヘルニアが再発することはありますか?

手術を受けても、内鼠径ヘルニアが再発する可能性はゼロではありません。ただし、現在広くおこなわれているメッシュを使用した手術は、従来の組織を縫い合わせる方法に比べて再発を抑えやすいとされています。再発率は術式や患者さまの状態などによって異なりますが、参考までに、内鼠経ヘルニアを含めた鼠経ヘルニアの再発率は全国で1-2%と推定されています。

再発には、手術方法や組織の状態に加え、腹圧が繰り返しかかる生活習慣などが関係するため、長引く咳や便秘を放置しない、適正体重を保つなど、腹圧がかかりにくい生活を心がけることが大切です。

内鼠径ヘルニアは放置せず早めの受診が大切

内鼠径ヘルニアは、加齢などによって鼠径部の腹壁が弱くなり、そこに重いものを持つ、排便時にいきむ、咳が続くなど、お腹に圧力がかかる動作が重なることで発症しやすくなります。後天的に生じることが多く、特に中高年の男性に多くみられるヘルニアです。

横になったり、ふくらみを手で押したりすると一時的に戻ることはありますが、ヘルニアそのものが自然に治ることはありません。根本的な治療は手術です。

痛みがないからと放置していると、腹壁から脱出した腸がヘルニアの出口である「ヘルニア門」に挟まり、おなかの中に戻らなくなる「嵌頓」を起こす可能性があります。陥頓によって血流が妨げられると、腸閉塞や腸管壊死につながり、緊急手術が必要になることもあります。

鼠径ヘルニアの手術では、ヘルニアの位置や大きさ、患者さまの年齢、既往歴、全身状態などから、一人ひとりに適した手術方法を選択することが大切です。

西宮敬愛会病院COKUヘルニアセンターでは、診察や触診に加え、必要に応じて高精度CTによる画像診断をおこなっています。ヘルニアの位置や状態を詳しく確認したうえで、患者さまに適した治療方法をご提案しています。鼠径部のふくらみや違和感など、気になる症状がある場合は、痛みがなくても放置せず、早めに当院へご相談ください。

この記事を監修した人

三賀森 学

西宮敬愛会病院 低侵襲治療部門 COKU 消化器外科部長/医学博士

  • 資格:
  • 日本外科学会外科専門医・指導医
  • 日本消化器外科学会専門医・指導医
  • 日本肝胆膵外科学会高度技能専門医
  • 日本ヘルニア学会評議員

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